"21年目の誤公式" 第4話
「このをいたのは、本当に8歳なのか?」
同僚が便箋を持ちげた。
教授にいた研究者たちが、次々と机の周囲へ集まった。誰もすぐには結論をにせず、画面に並ぶ数値を見つめていた。
方、ひなは母と緒に、学構内のカフェテリアで遅めの昼を取っていた。皿ののサラダをフォークでしずつかしていたが、ほとんどには運んでいなかった。
「を渡せてよかったね」
母が笑いかけると、ひなはさく頷いた。
しかし、その表はれなかった。
「もし、違っていたらどうしよう」
ひなの言葉に、母は首を傾けた。
「違っていたら、もう度勉すればいいんじゃない?」
「でも、しゃばった国の子だってわれるかもしれない」
ひなはフォークを置き、膝ので指を組んだ。
ホテルでも学でも、母娘が周囲の輪へ自然に入れることはなかった。別の国から来た保護者たちが楽しそうに話しているそばで、2だけが言葉を選びながら静かに過ごすこともかった。
英語の壁だけではなかった。
子どもがの専分野へをすことへの戸惑いと、国から来たさな女を見る無識の線。その両方を、ひなは幼いなりにじ取っていた。
「才だって言われたいわけじゃないの」
ひなはリュックサックからノートを取りし、胸ので抱きしめた。
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「変な子だって見られるのも嫌。でも、あの式はやっぱり変だった」
母は娘の横顔を見つめた。何か励ます言葉を探したものの、簡単な慰めをにする代わりに、そっとひなのへ自分のをねた。
そのの夕方、研究棟では急きょ会議がかれた。
学部と数の教授が集まり、シュミット教授がひなの便箋と計算結果を机の央へ置いた。内では、驚きよりも先に疑いの声ががった。
「たまたま致しただけではないのか」
「計算条件に問題がある能性もある」
「21、誰も気づかなかったものを、見学に来た子どもが見抜いたというのか」
しかし、否定しようとする教授たちも、再計算の結果をにすると次第に言葉を失った。女の指摘を無したままにすることは、もはやできなかった。
会議は夜遅くまで続いた。
翌朝、ひなと母が学へ戻ると、物理学棟の空気はまでとはらかに違っていた。るく声をかけていた学スタッフたちは、2を見ると瞬話を止め、すぐに線をそらした。
廊を歩いていると、くにいた学たちの囁きがに入った。
「例の子だよ」
「本の子が、あの公式の違いを指摘したんだって」
「教授たちが昨夜ずっと確認していたらしい」
ひなはを止め、母の袖をつかんだ。
線はたくはなかった。けれど、珍しいものを見るような目がいくつも向けられ、ひなは自分だけが建物ので浮いているようにじた。
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ロビーへづくと、例の黒板のに学職員がっていた。
公式のは、すでにき換えられていた。
しかし、誰が何を指摘し、なぜ修正されたのかを説する表示はなかった。ただ式だけが、初めからその形であったかのように静かに直されていた。
ひなはくから黒板を見つめた。
ので、濁っていた音が消えた。
数式は、ようやく静かな音を取り戻していた。
そのの午、母娘が物理学棟の廊を歩いていると、1の教授が控えめに声をかけてきた。昨までとは違い、その表には軽い笑いも、子どもをなだめるような様子もなかった。
「ひなさんに、しだけをいただけますか」
母は娘を見ろした。
ひなは緊張したまま、さく頷いた。
案内されたのは、研究棟の奥にある会議だった。い机の周囲には数の教授と研究者が座り、ひなが入ってくると斉に線を向けた。
たちに囲まれたひなは、母のを握ったまま入でち止まった。
「あなたが、ロビーの公式の修正をいてくれたのですね」
正面に座っていた教授が、できるだけ柔らかい声で尋ねた。
ひなは瞬だけ母を見てから、静かに頷いた。
「どうして、あの部分が違うとったのですか?」
その質問に、ひなはすぐには答えられなかった。
自分のでははっきりしているのに、それを言葉へ置き換えるのが難しかった。