"藤蔵は二度生きた" 第3話
兄や姉でさえらず、勝郎がから聞くことはできないはずだった。
「母ちゃんが、戸へ働きにくかもしれないって言っていた。父ちゃんは、もうしここで頑張ろうって言った」
勝郎がその夜の会話を語ると、父親も母親も言葉を失った。息子が聞いたはずのない話を、細かなところまで覚えていたのである。
それまで、子供のい違いだと考えようとしていた両親のに、初めて迷いがじた。勝郎の話を信じてよいのか分からなかったが、すべてを嘘だと決めつけることもできなくなっていた。
勝郎の話を聞いた族は、程久保についてっているを捜した。野と程久保はを1つ隔てただけのい所にあったが、当の子供が気軽にき来するようなではなかった。
やがて、程久保の半郎をる物が見つかった。その物に久兵やおしづ、藤蔵という子供について尋ねると、勝郎が語った内容とよく似た話が返ってきた。
確かに、久兵という男がくにくなり、その妻おしづは半郎と再婚していた。そして、そのには藤蔵という男の子がおり、6歳のに疱瘡でくなっていた。
話を聞いた父親は、しばらく何も言えなかった。名だけでなく、族関係やくなった齢まで致していたからである。
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勝郎は、程久保へ連れていってほしいと繰り返すようになった。夜になると、いつも添い寝をしてくれていた祖母のつやにしがみつき、の向こうへきたいと頼んだ。
「藤蔵の母ちゃんに会いたいんだ」
つやは困った顔で孫をなだめた。勝郎が議な話をしていることはっていたが、幼い子供を連れてを越え、見らぬを突然訪ねることにはためらいがあった。
「程久保へって、がなかったらどうするんだい」
祖母がそう尋ねると、勝郎は布団のから顔をげた。
「はあるよ。俺がをっているから、ばあちゃんはついてくればいい」
翌晩も、その次の晩も、勝郎は同じ願いをにした。目を閉じても眠ろうとせず、程久保へけば本当だと分かるからと、涙を浮かべて祖母に頼み続けた。
あまりにも真剣な孫の姿を見たつやは、ついにを決した。勝郎が語ることが本当かどうか、自分の目で確かめる必があると考えたのである。
かけるの朝、つやは勝郎の着物をえ、元を確かめた。を歩くため、普段よりもしっかりと履の紐を結んでやった。
「途で疲れたと言っても、すぐには帰れないよ」
祖母がを押すと、勝郎は力く頷いた。
2は野をて、畑のを通り、へ続くへ入った。落ち葉が積もった坂を登るにつれ、ろに見えていた々はしずつさくなっていった。
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つやは何度かち止まり、を違えていないか勝郎に確かめた。しかし勝郎は迷う様子を見せず、分かれへ来るたび、こちらだと指をさした。
「本当にっているのかい」
息をえながら祖母が尋ねると、勝郎は方を見たまま答えた。
「にも何度も通っただから」
勝郎にとっては初めて歩くはずのだった。それでも、どこで坂が急になるか、どの辺りからの根が見えるかまでっているように歩いた。
を越えた先に程久保が見えると、勝郎の取りは急に速くなった。つやが呼び止めなければ、そのまま1で駆けていきそうなほどだった。
へ入っても、勝郎は誰かにを尋ねなかった。何軒かののを通り過ぎると、3軒並んだ建物の方へ迷わず向かった。
「ここだよ。あの引っ込んだ」
勝郎が指さしたのは、並んだ々のでし奥まった所に建つだった。その裏には、勝郎が以から話していた通り、へ続くが見えていた。
つやはを止め、と孫の顔を何度も見比べた。程久保へ来る、勝郎はの特徴をはっきりと語っていた。
3軒並んだの引っ込んだであること。裏からへが続いていること。そのどちらも、目のの景と致していた。
勝郎はのにつと、先ほどまでの勢いを失った。
懐かしい所へ戻ってきたびと、扉の向こうに誰がいるのかというが入り交じり、すぐには声をかけられなかった。