"10年目のハザード" 第6話
テープは専関へ送られた。
傷んだ部分を補修し、雑音を取り除き、残された音声をしずつ浮かびがらせる作業が始まった。
復元には数週をした。
その、宮本は落ち着かない々を過ごした。最のがかりになるかもしれないという期待と、何も録音されていないかもしれないというが、交互に胸を締めつけた。
やがて、技術者から連絡が入った。
「音声を復元できました」
宮本は若い刑事を1連れ、復元された音声を聞くため専関へ向かった。
静かな部ので再ボタンが押された。
最初に聞こえたのは、いざらついた雑音だった。
宮本がを固くしたまま待っていると、その雑音の奥から、かすかな男の声が浮かびがってきた。
テープから聞こえてきたのは、違いなく藤達夫の声だった。
タクシー組の無線録音で何度も聞いた、く落ち着いた声。しかし、隠されたテープのの達夫は、同じ物とはえないほど震えていた。
息を吸う音が入り、しばらく沈黙した、達夫は押し殺すように話し始めた。
『これを聞いとるがおったら……わしは、もうおらんかもしれん』
宮本は再を見つめたまま、息をんだ。
達夫の声は、何度も言葉に詰まりながら続いた。
『あの晩、神戸まで客を乗せた帰りや。の方の暗いをっとったら、のライトに男らが何か照らされてな……』
そこで激しい雑音が入り、声が途切れた。
広告
技術者が音量を調すると、再び達夫の声が浮かびがった。
『あいつら、面に何か埋めとったんや。穴を掘って、きな袋みたいなもんを……。わしはとっさにライトを消して、をがらせた。けど、向こうに見られてしもうた』
達夫は、神戸から戻る途ので、複数の男がきな袋を面へ埋めているところを目撃していた。
袋のが何だったのか、テープので言はしていなかった。それでも、暗いで目を避けて埋めるような物が、通常の荷物であるはずはなかった。
『ナンバーも、顔も見られたとう』
震える声を聞いた瞬、宮本の背筋をたいものがった。
達夫は、決して見てはならない現を見たのだ。そして現にいた男たちにも、自分の顔とタクシーのナンバーを見られてしまった。
テープので達夫は、事件に起きた変化も語っていた。
『それからや。妙ながの周りをうろつくようになった。仕事しとっても、誰かにつけられとるような気がしてな』
『警察には言えんかった。警察に駆け込んだら、族に何をされるか分からん。そううと、きが取れんかった』
宮本は目を閉じ、10の証言をい返した。
達夫が急に数を減らしたこと。夜遅くまで仕事をするようになったこと。周囲を警戒し、無線を取るのをためらうようになったこと。
広告
達夫は恐れていた。
自分が狙われていることだけではない。子と真奈美にまで危険が及ぶことを、何よりも恐れていたのだ。
夜の仕事を増やしたのも、学費用のためだけではなかったのかもしれない。自分がかられていれば、追ってくる者たちの注を族からそらせると考えた能性があった。
しかし、達夫は誰にも相談できなかった。
警察へけば、男たちにられるかもしれない。族に話せば、子と真奈美まで恐怖ので暮らすことになる。
その結果、たった1で秘密を抱え、万に備えて自分の声をテープへ残した。
『もし、わしに何かあったら……どうか、あのを調べてくれ。神戸から越えの……』
達夫の声はそこで途切れた。
雑音のには、い無音だけが続いていた。最まで伝えようとした所の名は、テープの劣化によって永に失われていた。
再が終わっても、部のでは誰も言葉を発しなかった。
宮本は両で顔を覆い、くうつむいた。
10、答えは団のベランダにあった。
達夫自が、何が起きたのかを伝えるために残した声が、の裏でに耐えながら待ち続けていた。
「藤さん……すまん。10も待たせてしもうた」
宮本のから、絞りすような声がこぼれた。
同席した若い刑事も、何も言うことができなかった。
10の失踪事件が、達夫の震える声によって突然、々しい事件へ姿を変えたのだ。