みかん小説
本棚

"10年目のハザード" 第5話

そして、の暗で点滅を続けていたハザードランプ。

が来て、桜が咲き、が過ぎ、再びが訪れた。季節が巡るたびに、宮本は真奈美が学できなかった数を数えるようになっていた。

もしきていれば学を卒業している齢になった。やがて就職し、庭を持っていてもおかしくないが過ぎていった。

しかし、藤だけは199910の夜で止まったままだった。

2009、事件から10が過ぎた。

携帯話が広く普及し、には防犯カメラが増え、捜査技術もきく変化していた。だが、藤が暮らしていた古い団は、10とほとんど変わらない姿で残されていた。

正確には、その役目を終えようとしていた。

建物は老朽化がみ、壁にはひびが入り、管も傷んでいた。民の数も々減り、団を取り壊してしい建物へ建て替える方針が決まった。

の終わり、団の周囲にはい囲いが設置され、が運び込まれた。

事件、藤の部く空のままだった。あのが消えた部みたいと申しる者は現れず、内の部は当の状態を残したまま閉ざされていた。

取り壊し作業は、各部に残された具や設備を運びすところから始まった。

の部にも作業員が入り、10分の埃が積もった内から古い具を搬した。

広告

あせた座卓、錆の浮いた流し台、壁に貼られた学案内の跡が、のいないを物語っていた。

作業員の1がベランダにて、古くなったを取りそうとした。

配管と壁のを差し込んだ、指先がビニールのようなものに触れた。をかがめてのぞくと、普段は見えないの裏側に、さな包みが押し込まれていた。

「何や、これ」

作業員は慎に包みを引きした。

にも巻かれたビニールは変し、によってぼろぼろになっていた。破れないようにしずつくと、から古いカセットテープが1本現れた。

ケースもなく、ラベルも剥がれていた。

なぜ、カセットテープがの裏に隠されていたのか。わざわざビニールで何にも包み、から見えない所へ押し込んだ理由は何なのか。

作業員は嫌な予を覚え、現責任者へテープを渡した。

責任者も、10に団で起きた藤の失踪事件を覚えていた。

「これは警察へ届けた方がええ」

古びたカセットテープは、そののうちに警察署へ持ち込まれた。

その頃、宮本は定に控えていた。

髪はすっかりくなり、かつての鋭さは穏やかな落ち着きへ変わっていた。い刑事活を終える準備として、自分が担当した古い事件のファイルを1冊ずつ理していた。

広告

机のが止まったのは、「藤失踪事件」とかれた表に触れただった。

10、どうしても解決できなかった事件。刑事としてのが終わろうとしても、胸の奥にさな棘のように残り続けている事件だった。

ちょうどその、執務が騒がしくなった。

若い刑事が宮本の席へづき、古いカセットテープが見つかったことを伝えた。

「宮本さん、団の解体現から妙な物がてきたそうです。の裏に、テープが隠してあったって」

宮本はゆっくり顔をげた。

「どこの団や」

「ほら、10が失踪した、あの団です」

その言葉を聞いた瞬、宮本の胸の奥で、く止まっていた何かがきくいた。

宮本はすぐに保管所へ向かい、テープを両で受け取った。傷だらけのカセットをのひらに載せたまま、しばらくくことができなかった。

「藤さん……あんた、ここに何を残したんや」

問題は、10ベランダのにあったテープを再できるかどうかだった。

磁気テープは湿気で波打ち、部分に劣化していた。通常の再へ入れれば、切れたり絡まったりして、度と音を取りせなくなる恐れがあった。

宮本は司にげ、音声復元を専とする関へ依頼する許を求めた。

「最にもう度だけ、この事件と向きわせてください」

を目にした刑事の真剣な表を見て、司は断ることができなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: