"10年目のハザード" 第3話
しかし、藤の姿を見た者は現れなかった。
そのの午から、堺の町にはたいがり始めた。
藤のに張られた規制線がを含み、たそうに垂れがっていた。傘を差した隣民たちは、声で言葉を交わしながら3階のベランダを見げていた。
物干し竿には、洗いざらしのタオルが1枚残っていた。
に打たれながら力なく揺れるそのタオルは、族が次のも変わらず訪れるとっていた証のように見えた。
当初、警察内部ではや夜逃げの能性も検討された。
しかし、の状態を調べれば調べるほど、その見てには無理がじた。自ら姿を消すつもりの族が、夕の支度を途でやめ、財布や通帳を残したままていくとは考えにくかった。
連れられた能性もあったが、のには抵抗した形跡がない。
族3が自分のでていったようにも見えた。だが、それならなぜ用の鍵がのにあり、ドアが内側から閉ざされていたのか。
考えるほど、辻褄がわなくなっていった。
夜になってもはやまなかった。藤の窓にかりがともることはなく、えた噌汁も、切りかけのネギも、そのまま残されていた。
速で点滅していたハザードランプは警察によって消されていた。
しかし、そのさなが照らしした謎は、これからいにわたり、捜査員たちの胸に消えないを落とすことになる。
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藤が姿を消してから1週が過ぎた。
団の敷に植えられた々は赤や黄に染まり、たいが吹くたびに落ち葉を散らしていた。事件直の規制線は取り払われ、藤の窓だけが夜になっても暗いままだった。
堺の警察署には捜査本部が置かれていた。
しかし、犯がいるのかどうかさえ分からない事件だった。捜査員たちは机に積みげられた資料を見つめ、毎のように同じ疑問を繰り返していた。
「これは、いったい何なんや」
資料をにくつぶやいたのは、宮本という刑事だった。
当40代半ばだった宮本は、髪にいものが混じり始めた働き盛りの刑事だった。藤の事件を担当して以来、へ帰ってからもめた噌汁と無のタクシーのことがかられなくなっていた。
捜査本部が最初に検討したの線は、計の調査によってほぼ消えていた。
達夫の預通帳には、借どころか、真奈美の学に備えてこつこつと積みてたが残っていた。子がつけていた計簿も几帳面で、暮らしぶりは堅実そのものだった。
族仲が悪かったという証言もなかった。
「する族が、夕飯の支度を途で放りすやろか。財布も免許証も置いたままで」
宮本は資料をめくるを止め、何度も同じ言葉をにした。
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夜逃げの能性も、貴品と類が残されていたことで否定された。第者に襲われたのなら抵抗の跡があるはずだが、藤は気なほど然としていた。
詰まりになりかけた頃、宮本は達夫の失踪の様子を改めて調べることにした。
個タクシーの運転たちは、それぞれが独して仕事をしていたが、無線でつながる仲同士には緩やかな交流があった。宮本は達夫と親しかった運転を1ずつ訪ねた。
の付きいがあったという配の運転は、しばらく考えた、額にを当てた。
「そういや、消える3週くらいから、藤さんの様子がしおかしかったですわ」
宮本は帳をき、子をへ寄せた。
「どんなふうにですか」
「もともと無なやけど、それにしても数が減ってました。無線でも必なことしか言わんようになって、それから夜の仕事を急に増やしてたんです」
以の達夫は、夜2か3には仕事を終えていた。それが失踪の数週は、け方くまでるが増えていたという。
配の運転は配になり、本へ理由を尋ねたことがあった。
「最、無理しすぎと違うかって聞いたんです。そしたら藤さん、ちょっと笑うて、『し物入りでな』とだけ言いました」
娘の学を控えているなら、しでもく稼ごうと考えるのは自然ではなかった。