"土俵下の12年" 第8話
毛布に包まれた体を抱え、古い俵へ向かった。が伸び、俵の縁は崩れかけていた。
親方はスコップを取りし、を掘り始めた。
で黙々と掘った。
汗が流れた。
が痛くなった。
それでも掘り続けた。
やがてい穴ができると、親方は岳司の体をそっとへ入れた。
毛布に包まれた岳司の姿を見て、親方は瞬きを止めた。
本当に、これでいいのか。
だが、もう遅かった。
親方はをかぶせ始めた。
しずつ岳司の姿が見えなくなっていく。
最にを平らにし、周囲と変わらないようにえた。
誰もここに何かが埋まっているとはわないだろう。
親方は俵のでをわせた。
「すまない。おを故郷に返すことしかできなかった。許してくれ」
その声は波音に消えた。
親方はへ戻り、京へ向かった。
翌朝、名部で親方は力士たちを集めた。
「いいか。林は昨の朝、部をていった。それっきり戻っていない。捜索願をす。おたちは、林が朝の散歩にて戻らなかったと答えろ。稽古でのことは何もらない。分かったな」
力士たちは無言で頷いた。
吉田は部の隅でうつむいていた。
親方は警察署へき、捜索願を提した。
林岳司、21歳。
昭47(1972)316の朝、部をたまま方。
警察は捜索を始めた。
けれど、がかりは何もなかった。
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岳司の荷物は部に残っていた。着替えも、も、すべてそのままだった。まるで、すぐに戻るつもりでにたようだった。
警察は自ら命を絶った能性も考え、川やを捜索した。
しかし、何も見つからなかった。
川県の岳司の実にも連絡が入った。
「息子さんが方です」
話を受けた子は、そのに崩れ落ちた。
「嘘でしょう……岳司が、いなくなった……?」
正雄はすぐに京へ向かった。
名部を訪ね、親方に詰め寄った。
「息子に何があったんですか」
親方はくをげた。
「申し訳ございません。朝、散歩にたまま戻らないんです。々も必で探しています」
正雄は親方の顔をじっと見た。
「何か隠していませんか。息子に何かあったんじゃないですか」
親方は首を振った。
「何もありません。ただ、林が突然いなくなっただけです」
正雄は信じられなかった。
けれど、それ以は何も聞けなかった。
子も京へ来た。
2は警察署へき、何度もをげた。
「息子を探してください。お願いします」
警察は捜索を続けると約束した。
しかしが経つにつれ、捜索は縮されていった。
がかりが何もない。
岳司は見つからない。
1週、両親は故郷へ帰るしかなかった。
子は毎泣いた。
正雄は黙ってを見つめた。
「岳司はどこにったんだ」
「きているのか」
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答えのない問いだけが、2の暮らしに残された。
そして、そのすぐく。
のれの古い俵ので、岳司は眠っていた。
両親が息子の帰りを待ち続ける12が、ここから始まった。
昭47(1972)のから、林のは止まったままになった。
岳司が方になったというらせを受けてから、父の正雄と母の子は、何度も京へを運んだ。名部にもき、警察署にもき、駅の周辺も、川沿いも、力士たちがよく歩くというも探した。
けれど、どこにも岳司はいなかった。
京の混みので、子は何度もち止まった。きな背の若者を見るたびに、胸がねた。紺の着を着た青、うつむいて歩く力士の男、駅の階段をる柄な。
そのたびに子は息を呑んだ。
「岳司……?」
しかし、振り返る顔はいつも違った。
正雄は妻の肩を支えながら、黙って歩き続けた。声をかければ子が崩れてしまう気がして、何も言えなかった。
数が過ぎ、1週が過ぎ、警察の捜索はしずつさくなっていった。
「引き続き調べます」
担当の警察官はそう言った。
だが、その声の奥には、もうしいがかりはないだろうという諦めがにじんでいた。
岳司の荷物は、名部に残されたままだった。着替えも、も、故郷から送られたさな包みも、すべて部に置かれていた。
子はそれを見た、胸を押さえた。
「この子、帰ってくるつもりだったんです」
震える声でそう言った。
「こんなふうに荷物を残して、どこかへく子じゃありません」