"50年目の沈黙の部屋" 第2話
どの部も荒らされ、とのによって壊されていた。
しかし、3階にがると様子が違った。
そこは、気なほど空だった。
病のほとんどは扉がき、には埃と剥がれた壁以、何も残っていなかった。が荒らした痕跡すらなく、逆にそれが異様だった。
「ここだけ、ずいぶん何もないな」
メンバーの1がい声で言った。
廊はく、両側に病が並んでいた。のは割れた窓からわずかに差し込んでいたが、奥へむほど暗くなっていく。
その、若い男性メンバーの健がち止まった。
彼は廊の片側の壁をじっと見ていた。
「ここ、変じゃないですか」
の4が振り返った。
健が指さした壁は、確かに周囲とは違っていた。
の壁は古い塗料が剥がれ、ひび割れ、黄ばんだコンクリートがしている。ところが、その部分だけはの漆喰で滑らかに塗られており、周囲から自然に浮いていた。
そこに扉はなかった。
入の跡も見えない。
だが、い廊の病の並びを考えると、本来そこにも部があって当然だった。
健はゆっくりづき、指先で壁に触れた。表面はざらついていたが、周囲よりもらかにしいようにじられた。
彼は軽く拳で叩いた。
こん、という乾いた音が返ってきた。
もう度叩く。
奥が空洞のように響いた。
広告
「に何かあります」
その言葉に、空気が変わった。
5は壁のに集まり、懐灯を向けながら詳しく調べた。にい部分で、漆喰が摩耗し、細い亀裂ができているのを見つけた。
1がスマートフォンのライトをその隙へ当てた。
しかし、は真っ暗だった。
何も見えなかった。
それでも、そこに空があることだけは分かった。
誰かが、この所を塞いだ。
しかも、建物が病院として使われていた頃か、あるいは閉鎖に。
好奇とが、5のに広がった。
彼らは清掃用の具と緒に、さなハンマーを持っていた。最初はほんのし確認するつもりだった。壁の表面だけを剥がし、構造を見て、危険ならすぐにやめるつもりだった。
だが、漆喰はったよりも簡単に剥がれた。
きな破片となって崩れ落ち、そのから雑に積まれたレンガが現れた。
レンガの並びは粗く、元の建築の部とはえなかった。
らかに、誰かがからこの通を塞いでいた。
5は顔を見わせた。
誰も冗談を言わなかった。
それでも作業は続いた。
1つずつレンガをし、が覗けるほどの穴をけ、さらに部を広げていく。はかかった。汗が背を伝い、埃が喉を刺した。
およそ1、最のレンガが取り除かれた。
その瞬、暗い穴の奥からく淀んだ空気が流れした。
広告
埃と腐敗、そして言葉にしにくい甘い臭気が混じっていた。
5は反射にずさった。
誰かが元を押さえた。
それは、い閉ざされていた所から漏れた、そのものの匂いのようだった。
しばらくして臭気がわずかにれると、壁の異変を見つけた健が最初にを覗くことになった。
彼はく息を吸い、力な懐灯をにした。
「無理するなよ」
ろから仲が声をかけた。
健はさく頷いた。額には汗が浮かび、握っている懐灯のがわずかに震えていた。
彼は部へ顔をづけ、を奥へ向けた。
穴の向こうには、さな部があった。
おそらく2m×3mほどしかない。
窓はなかった。
換気らしいものも見当たらなかった。
へるための入は、いま5がけたこの塞がれた所だけだった。
そこは病というより、閉じ込めるための部だった。
コンクリートの壁は黒ずみ、にはい埃が積もっていた。奥の壁際には、錆びた属製のベッドフレームが斜めにてかけられていた。そのには、腐って形を失ったマットレスと毛布の残骸がに貼りついていた。
健はゆっくりをかした。
そのが、ベッドの隣で止まった。
「……嘘だろ」
健の声はかすれていた。
ろにいたメンバーたちも、部からを覗き込んだ。
懐灯のいが、コンクリートののに横たわるものを照らしていた。
それはの骨だった。
によって黒く変した骸骨が、横向きに丸まるようにして倒れていた。