みかん小説
本棚

"夫の顔と20年目の罪" 第8話

私は膝のを握りしめた。

「そんな……」

あまりにも残酷だった。

私が盲目であることを利用して、別を夫に仕げるなんて。

しかも、それを周りの全員がっていた。

私は震える声で尋ねた。

「でも、幸恵さんは?」

浩司は目を伏せた。

「君の政婦は、両親に買収されているよ」

その言葉を聞いた瞬、私は息ができなくなった。

幸恵さん。

まれたから私を世話してくれた

してから私の目になってくれた

誰より信頼していた

そのまで、私を騙していた。

「つまり、みんなグルになって私を騙したってこと……」

声が震えた。

私は浩司を睨んだ。

「あなたも同じね。ひどいわ」

ありったけのしみをぶつけた。

浩司は何も言わなかった。

ただ黙ってうつむいていた。

その沈黙が、余計に苦しかった。

そのだった。

の扉がく音がした。

「その男は偽物だったってわけだよ」

振り返ると、そこに真っていた。

で夫を名乗った男。

本物の桜田真

彼はい笑みを浮かべて、ゆっくりづいてきた。

「やっと気づいてくれたね」

その言い方は、まるで浩司だけを悪者に仕てようとしているようだった。

私は彼の顔を見た。

そして、息を呑んだ。

さっき病では揺のあまり分からなかった。

けれど今、はっきり見える。

私はこの顔をっている。

い歳は、貌を変える。

広告

20も経てば、の面の顔に埋もれる。

それでも、完全には消えないものがある。

目元。

元。

恐怖に歪んだ表

する寸、私の目に焼きついた顔。

「あなた……」

声がかすれた。

「ひき逃げの犯だわ」

の空気が凍った。

浩司が驚いて私を見た。

の笑みが、わずかに引きつった。

「何のことか分からないな」

「20、危険運転で私と母に接触した犯。私、見ていたの。失する直に、顔を見た」

母が私をかばったあの瞬

で顔面蒼になりながらハンドルを握っていた

その面が、今の真の顔に残っていた。

私は震えながら言った。

「警察に駆け込んで調べてもらうから」

の顔から笑みが消えた。

「うるさい女だな」

彼は勢いよくづき、私の腕を掴んだ。

「さっさと連れ帰って、部に閉じ込めておいてやる」

して!」

「兄さん、やめろ!」

浩司が止めに入った。

けれど真は乱暴に腕を振り払い、浩司を突きばした。浩司はに倒れ、痛みに顔を歪めた。

私の腕を掴む真に、さらに力が入る。

「おは何もらないまま、黙っていればよかったんだよ」

恐怖でがすくんだ。

そのの扉が勢いよくいた。

丈夫ですか!」

灯を持った当直の護師や医師、警備員が駆けつけてきた。さらにし遅れて、警察官も現れた。

瞬のうちに、真は取り押さえられた。

広告

「はあ? なんで……」

はパニックになって暴れた。

その、浩司がに倒れたまま、にしていた携帯話を突きつけた。

通話だった。

彼は、ボタン1つでナースステーションにつながるようにしていたのだ。

浩司からの連絡を受けた護師が異変に気づき、警察に通報したへ駆けつけてくれたのだった。

「あの野郎……!」

暴れしながら引きずられていった。

張り詰めていた緊張が切れた私は、そのに座り込んでしまった。

護師が駆け寄り、私の肩に毛布をかけてくれた。

私は夜空を見げた。

20ぶりに見た空は、涙で滲んでいた。

、桜田真の取り調べがわれた。

での暴、私を脅したこと、そして20の危険運転事故についても、再捜査が始まった。

私は警察に当の記憶を話した。

8歳だった私の記憶は、すべてが鮮だったわけではない。けれど、失する寸に見た運転席のの顔だけは、ずっとの奥に焼きついていた。

母の腕に抱きしめられながら見た、あの青ざめた顔。

逃げるようにこちらを見ていた瞳。

その記憶が、20を取り戻した私ので、真の顔となった。

警察は当の記録を洗い直した。

周辺の証言。

事故当報。

桜田の関係者のき。

が当運転していた能性。

そして、たな証拠が見つかった。

は最初、気だったらしい。

「ひき逃げって効20だろう。もう過ぎてるんだから関係ねえだろう」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: