みかん小説
本棚

"母の墓に立つ母" 第16話

「副会の指示でした。写真も、奥の女性を見つけしたのも、すべてです」

刑事のペンがを素く。

吉田は乾いた唾をみ込みながら、言葉を続けた。

「最初は田恵美子様のご指示でした。副会がそれを利用し、、写真まで偽造されたのです」

そして、監が続けられたこと。

で起きたあの事件も、輝の指示を受けたが美紀を追い詰めた結果だったこと。

吉田は声を震わせながら語った。

「命を奪えとは言われていませんでした。ただ、脅してやれと。あの夜、私たちは荒っぽくを追ってしまいました」

取調の廊で、美優は壁に寄りかかりながら、その供述を聞いていた。

刑事が1つずつ約して伝えるたび、美優のから力が抜けていった。

姉のの背に、これほど、これほど密かな悪が潜んでいた。その事実が、今さらながら胸を打った。

美優は両を覆い、声もなく崩れ落ちた。

ハルトはそこにはいなかった。

ソーシャルワーカーと緒に別の部で絵を描きながら待っていた。子どもにはまだ、この全ての真実のさを背負わせることはできなかった。

い供述が終わった、美優は涙を拭い、ハルトのいる部へ向かった。そして子どものを取り、静かなカウンセリング所を移した。

には、いスタンド照が1つ灯っているだけだった。

広告

美優はハルトの向かいに膝をつくように座り、子どもの両を自分の両で固く包み込んだ。指先がかすかに震えていた。

「ハルト」

美優の声はかれていた。

「もう、隠していたくないの」

ハルトが顔をげ、美優を見つめた。

「私は、あなたのおばさんじゃない」

瞬、空気が止まったようにじられた。

美優は涙をこらえながら、最まで言った。

「あなたを産んだよ。私が、あなたの本当のお母さんなの」

に静寂がりた。

ハルトの目がきく揺れた。数秒、子どもはその言葉を理解できないかのように、美優をぼんやり見つめていた。

やがて唇がかすかに震え始めた。

「じゃあ……おばさんじゃなくて、僕のお母さんだったの?」

声はかれ、最までうまく結ぶことができなかった。

ハルトの目から涙がどっと溢れた。子どもはの甲で涙を拭おうとしたが、やがてそれも諦め、わんわんと声をげて泣き始めた。

美優はそんなハルトを抱きしめた。

「ごめんね。こんなに遅く話して、本当にごめんね」

2は抱きって泣いた。

しばらくして、美優は再びおそるおそるいた。

「あなたが母さんと呼んでいた……美紀おばさんは、実は私の代わりにあなたを守ってくれていたの。命をかけて、あなた1のことだけを考えてきてきたのよ」

ハルトの泣き声が瞬止まった。

広告

その言葉を噛みしめるように、彼はまた泣きした。

美優は涙でぐしょ濡れになったハルトの顔を両で包み込み、言葉を続けた。

「だから、美紀おばさんのことを絶対に忘れちゃだめよ」

ハルトは返事の代わりにきく頷き、再び美優の胸に顔をうずめた。

、ハルトは初めて見らぬ男性のつことになった。

だった。

は息子をにしても、すぐにはづけず、そのにぽつんとち尽くしていた。

を信じない男としてきてきただった。

10、桜が散ったあの以来、健は実が用したも、従兄弟の輝に譲った自分の居所も、振り返らずにきてきた。

その代わり、静かな講義で学たちに歴史を教えながら、自分自を消してきた。企業の息子という肩きを剥がせば、なくとも傷つくことはないだろうと信じていた。

しかし今、目のさな子ども1が、の信を根底から揺さぶっていた。

い沈黙の、健がゆっくり膝をついた。

子どもと目線をわせ、彼の目からこらえていた涙が流れ始めた。

「すまなかった。父さんが悪かった」

声は崩れるようにかれていた。

は震える両腕を伸ばし、ハルトを抱きしめた。

初めてじる父親の腕だったが、ハルトはその腕のに、見慣れないぬくもりをじた。

その、健先延ばしにしてきた決断をした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: