"母の墓に立つ母" 第7話
それが常だった。
仕事帰りには、いつも両に果物やお菓子を抱えて帰ってきた。い体で階段をりりする妹の代わりに買い物袋を持つのも、病院の診察に半休を取って付き添うのも、美紀にとってはごく当たりのことだった。
姉のその1つ1つの気遣いが、美優にとってはを保つ支えになっていた。
そうしてが過ぎ、アカシアのりが漂う5の夜けが訪れた。
陣痛は、夜がける直に始まった。
美紀は着を羽織っただけで妹を支え、タクシーに乗せた。朝のが差し込む窓のの景が流れていく、美紀は妹のをしっかり握りしめていた。
「丈夫よ、美優。お姉ちゃんがここにいるから」
分娩のの廊で、美紀はを組みながら落ち着きなく歩き回った。蛍灯のの、消毒液の匂いがをつき、から聞こえるうめき声がくなるにつれ、臓が締めつけられるようだった。
そしてついに、力い赤ん坊の泣き声が廊まで響き渡った。
男の子だった。
産着に包まれたさな体が美優の腕に抱かれた瞬、美紀の目からもこらえていた涙がどっと溢れた。
甥のさな指をそっと撫でながら、美紀は何度もをすすった。
しかし、そのびはくは続かなかった。
その2、輝が密かに病院を訪れていたことを、美紀はまだらなかった。
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輝はあらかじめを回しておいた産婦科の院を静かに呼びし、くたい声で指示を残していった。
「あの子を密かに養子にす方法を探してください。そして、そのことは誰にも漏らさないように」
その、美紀は病で使うお湯をもらうため、湯へ向かっていた。湯のを通りかかった瞬、からひそひそ話す声が聞こえた。
歩みを緩めた美紀のに、護師2の会話がはっきり届いた。
「さっき昼に来た役みたいな、202号の赤ちゃんのことで、密かに養子にす方法を探してくれって言ってたんだって」
「院先には内緒でって言ってたわよね。なんだか普通じゃないみたい」
美紀のが、そのできたりと止まった。
202号。
美優の病だった。
に持っていた筒がかすかに震え、息が詰まった。鳴りがし、から力が抜けて柱にをつかなければっていられなかった。
美優のお腹がきくなり始めてから、美紀はずっと審なをじていた。のので、病院へ続くで、どこかから見られているような線が絶えなかった。
美優もまた、かすかなをじていた。
健側のが、この子に危害を加えようとしている。
そんな予が、い姉妹のの片隅にくのしかかっていた。
病に駆け込んできた美紀は、妹のを慌てて握った。
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「美優、あのたち、赤ちゃんをどこかへ連れてこうとしてる」
美優の顔から、瞬で血の気が引いた。腕に抱いたが子をさらにく抱きしめながら、息を殺した。
その夜、美優は担当の医師を静かに呼んだ。
涙を浮かべ、声を振り絞って言った。
「先、お願いがあります。あの子は、まれてすぐにくなったことにしてください」
医師の顔にい葛藤のが浮かんだ。医師として許されないことだとりながら、目のの若い母親が何から子どもを守ろうとしているのか、おぼろげながら察することができた。
を握る指が何度かためらったが、ついに医師は偽りの文字を診断にき記した。額に滲む汗が、彼の罪悪を物語っていた。
問題は美優の体だった。
産の血がひどく、あと数はベッドで静にしていなければならなかった。今すぐ子どもを抱いてここをることができない。その事実が美優をさらに追い詰めた。
ベッドに横たわったまま、美優は姉のを力なく握った。
「お姉ちゃん。今の私には、この子を守ることができない」
美紀は答える代わりに、妹のをさらにく握りしめた。
美優は腕のの赤ん坊の顔をい見つめ、震える声で続けた。
「名はハルトにしたの。れた。が授けてくれた子っていうよ」
美紀はその名を静かに呟き、頷いた。
美優の指先が、赤ん坊のさな首へ移った。そこには豆ほどのきさの赤いあざがあった。