"月あかりの逆転食卓" 第2話
「ねえ、やっぱりの料理って、ちょっと気持ち悪くて」
私は言葉を失った。
。
そう言ったのか。
私は秀夫の母で、の祖母のはずだった。ここにある料理は、族のために作ったものだった。
けれど奈々は、私を族ではなく、から持ち込まれた潔な何かのように扱った。
奈々はため息混じりに続けた。
「うちのお母さんみたいに、ちゃんと清潔なキッチンで、見た目も綺麗に作ってくれるならまだしもね」
わざとらしくスマートフォンの画面をこちらに向ける。
そこには、真理子が投稿しているらしい華やかな料理プレートが映っていた。キラキラした照、ブランドの器、完璧な盛り付け。写真としては確かにっていた。
奈々はそれを誇りにしていた。
そして、私のようなな庭料理を見していた。
私はほんのわずかに眉をかしただけだった。泣くこともることもできなかった。
でも、奈々には私が傷ついているのが見えたのだろう。むしろその反応を楽しんでいるようで、胸がさらに痛んだ。
そこへ真理子が、皿を指先でつつきながら言った。
「ごめんなさいね。私、こういうの受け付けないの」
その声は品にえられていた。
けれど、そこにはらかな嘲りが含まれていた。
リビングの空気が、気にえた。
秀夫は何も言わなかった。
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私をかばうことも、奈々や真理子を止めることもなく、ただ目をそらした。
正治は静かに息を吸い、りで握りしめた拳を膝のに置いた。
だけが、さな声で言った。
「これ、バーバが作ったやつだよ……」
その声を聞いた瞬、私は悟った。
私が事にしてきたものは、このではもう守られない。
母親として、祖母として、尽くしてきたは、このたちには価値のないものだった。
私は目のの料理を見つめた。
湯気はもうくなっていた。
そして私のでも、何かが静かに終わった。
その誕会から3の夕方、の話が鳴った。
画面を見ると、表示されていたのはの名だった。珍しい帯だったので、私はし胸が鳴った。
「もしもし」
「バーバ!」
はしゃいだ声がにび込んできた。
その声だけで、自然と元が緩む。台所にっていた私は、濡れたをエプロンで拭きながら話をに当て直した。
「あら、。どうしたの?」
「あのね、ね、誕にバーバのご飯べたい」
「バーバのご飯?」
「うん。バーバのぷら、1番好き」
その言で、胸の奥がきゅっと温かくなった。
どんな宝よりも、どんな贈り物よりも嬉しい言葉だった。
「そうなの? がそう言ってくれるなら、バーバ頑張っちゃおうかな」
「やった! 約束だよ」
話の向こうで、の笑い声がねた。
私は受話器を置いたもしばらく表が戻らなかった。
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顔が緩みっぱなしになっていることに気づき、わず頬を押さえた。
その瞬、3に待っている獄のような卓を像できるはずもなかった。
「また張り切ってる顔してるな」
台所に入ってきた正治が、私のエプロン姿を見て苦笑した。
「がね、バーバのご飯がべたいって。ぷらと、ちらし寿司と、お煮しめと……」
私はのでメニューを組みてながら答えた。自然とのきがくなる。孫にんでもらいたい。ただそのだった。
正治は腕を組み、し考え込んだ。
そして優しい声で言った。
「梨子、3も寝ずに作ることはないだろう。あっちには奈々さんのお母さんもいるんだし、向こうに任せてもいいんじゃないか」
「だめよ」
私は迷いなく首を振った。
「が、バーバのご飯って言ったの。あの子の言葉を裏切りたくないもの」
正治はため息をついた。
けれど、その表には「止めても無駄だな」という諦めと、私をいやる優しさが滲んでいた。
「分かったよ。伝うよ」
「いつもありがとう、正治さん」
そのやり取りが、私たち夫婦の何もの形だった。
翌朝、まだが暗いに私は買いしにた。
の通りにはたい空気が残っていた。先に並ぶ野菜には朝がり、魚の奥からは氷を砕く音が聞こえる。
顔なじみの主が私を見るなり、先に声をかけてきた。
「梨子さん、孫さんの誕祝いだって聞いたよ。ほら、今はいい老が入ってる」