"20年目の神隠し夫婦" 第2話
次の瞬、主は慌てて部をびした。階段を転げ落ちるようにり、ロビーの話へ駆け寄った。受話器を持つが震え、番号を何度も押し違えそうになる。
「が……お客さんが、突然消えちまったんです」
話で叫ぶ声が、誰もいないロビーにむなしく響いた。
それから30分、甲いサイレンの音が、のどかな辺のの静寂を切り裂いた。
い差しを受けた民宿のい壁に、パトカーの赤灯が激しく反射している。元の警察官たちが慌ただしくからり、階段を駆けがった。い音が、平だった朝の終わりを告げているようだった。
最初に部に入った若い警察官は、内の状況をぐるりと見渡し、眉をひそめた。
「争った形跡はありません」
別の警察官がや具を確認する。
「品を荒らされた様子もないですね」
から入ってきたベテラン刑事は、テーブルのの財布と携帯話をじっと見つめた。
「これは、ただの散歩の迷子じゃないぞ」
刑事の声はかった。
「財布も携帯も置いて、2そろってどこへくっていうんだ」
部には、活の痕跡が残されていた。けれど、そのにいたはずの2だけが、鋭い刃物で切り取られたように、そこから消えていた。
これが、いにわたって本を震撼させることになる、あまりにも解な失踪事件の幕けだった。
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で最も幸せなを迎えていたはずの婚夫婦は、体どこへ消えたのか。
け放たれた窓のでは、奄美の青いが気なほど穏やかに波を打ち寄せていた。
その静けさだけが、部に残された自然な空を、黙って見つめていた。
計の針をしだけ巻き戻す。
事件が起きる数、20044の京は、桜のびらがのにう穏やかな季節だった。
その週末、都内のさなチャペルで、1組の男女が結婚式を挙げた。
郎は俊介、33歳。商社で営業主任として働く彼は、数こそくないものの、真面目で責任のい青だった。で派に笑ったり、軽い冗談を言ったりするタイプではなかったが、約束を守り、周囲からの信頼もかった。
婦は伊藤しおり、32歳。旅と文章をくことをこよなくし、いつかフリーライターになることを見て、個ブログを運営していた。常のさな来事や旅先で見た景を、丁寧な言葉で綴ることが好きだった。
2の会いは1だった。
友の紹介でりった彼らは、派な交際をしたわけではない。週末に静かな喫茶で本の話をし、休にはさな美術館へき、夕方には並んで駅まで歩く。そんな何気ないをねながら、しずつ互いのが欠かせないものになっていった。
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何気ない常ので交わされるい会話が、2にとっては何よりよかった。相の価値観を尊し、必以に踏み込みすぎず、それでも確かに支えっている。そういう穏やかな距ので、2は自然と涯の伴侶になることを決めた。
式は、族と親しい友だけを招いたささやかなものだった。
純のウェディングドレスにを包んだしおりは、緊張しながらも幸福に満ちた笑顔を浮かべていた。その隣で、しサイズのわないタキシードを着た俊介は、照れくさそうにをかいている。
両の両親は、をきく表にすタイプではなかった。だが、くをげる姿や、目尻にる涙には、言葉にできないびが滲んでいた。
友たちも、2の器用で誠実な歩みをっているからこそ、から祝福した。
婚旅のき先は、しおりが自分で選んだ。
鹿児島県、奄美島。
の華やかなリゾートではなく、国内の静かな島を選んだのには理由があった。
「つかずの自然が残る島で、どこまでも広がるを見ながら、しいの始まりを文章に残したいの」
しおりは、婚旅の記録をブログで連載するつもりだった。、空、島の々、初めて夫婦として迎える旅の。その全てを、写真と文章で残したいと考えていた。
俊介は妻の選択に、しも異論を挟まなかった。
「しおりがそこにきたいなら、僕も賛成だよ」
彼はいつものように穏やかに笑った。