"追放嫁と姑の鍵" 第8話
ただ、く言いました。
「まず、ご飯べてから考えよう」
紀は刺を皿くれました。
私は箸をに取り、切れに入れました。
噛んでいると、涙がてきました。
箸を置いて泣きました。泣いてはまた箸を取りました。べてはまた泣きました。
紀は隣に座り、黙ってお茶を注いでくれるだけでした。
私が8の話をすべて吐きさなくても、紀は分かっていました。
その涙が、どこから来るものなのかを。
夜になり、紀はの根裏部に布団を敷いてくれました。
さな窓の向こうに、商のかりが見えます。
私は横になりましたが、眠れませんでした。
スーツケースから鍵を取りします。
のひらのに乗せ、じっと見つめました。
キーホルダーには所がかれていました。私は指でその文字をなぞります。
芳さんのろ姿が目に浮かびました。
を引きずらず、まっすぐに歩いていたあの取り。
私の腕をく握った、あの握力。
鍵を渡しながら、何も説しなかった沈黙。
私は鍵を胸のに置いたまま、井を見つめていました。
結局、その夜は眠ることができませんでした。
翌朝。
私は紀に挨拶をしてをました。キーホルダーにかれた所を頼りに、神戸の元町の裏通りへ入っていきます。
通りから1本入った所でした。
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ほどなくして、板のないが1つ見えてきました。シャッターがりています。2階建てのさな建物でした。
私はのにちました。
鍵を取りします。
が震えました。
鍵を鍵穴に差し込み、回します。
属が噛みい、く触が指先に伝わりました。
シャッターをげ、内側のガラスのドアをけます。
ドアがいた瞬、へが差し込んできました。埃のを、朝が斜めに射しています。
私は歩へ入りました。
の壁には用の蔵庫がありました。けてみるとは空でしたが、棚はきれいに拭かれています。
側には作業台が置かれていました。の板にはきな傷ひとつありません。奥の棚には、リボンや包装が別に理されています。
隅には、揚げ用のバケツまで用されていました。
でした。
私は膝から力が抜け、に座り込みました。
誰もいないので、声もなく泣きました。
をけても声がません。
肩だけが震えていました。
どれくらいそうしていたでしょうか。
私はちがり、作業台の引きしをけてみました。に通帳との封筒が入っていました。
まず通帳をきます。
私の名がかれていました。
残を見ると、1000万円ありました。
腕が止まりました。
の準備だけではなかったのです。軌に乗るまで活できるおまで、芳さんは用してくれていたのです。
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私は通帳を膝のに置き、しばらく何もできませんでした。
封筒のから、折り畳まれたがてきました。
芳さんの字でした。
がたがたでした。
震える字でしたが、1文字1文字に力が込められていることが分かりました。
私は読み始めました。
「脳卒になって、本当にぬかとった。でも治ってみたら、考えが変わったんだ」
私の目は、その文で止まりました。
治ってみたら。
その言葉が胸に突き刺さりました。
「治ったことを隠していると、全部が見えてくるようだった。元気な姑のでは、誰だってうまくやる。体の悪い姑のでどうするかが、そのの本性だ」
8の朝が、度に押し寄せてきました。
毎朝準備したお粥。
を揉んであげた。
トイレへくたびに支えた腕。
そのすべての、芳さんは私を見ていたのです。
は続きました。
「最初の嫁は、私が倒れたら逃げていった。あんたは私が病気でも、け方に薬を用してくれた。それが答えだった」
涙がに落ちそうになり、私は顔をげました。井を見てこらえます。
「あんたがベランダでを触っている、顔つきが変わるのを私は何も見てきた。いつかご飯をべているに、『将来、さなでもやってみたい』と言ったことがあったね。あんたは忘れているだろうけど、私は覚えている」
記憶がよみがえりました。
いつだったか、夕にぽつりとこぼした言葉です。
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