"追放嫁と姑の鍵" 第4話
母はいつもそうでした。
先に「丈夫」と言うのです。
私もその癖に似ていました。けれど受話器の向こうから聞こえる息は荒く、咳のに言葉が途切れました。
話を切ったも、私はしばらく受話器を置けませんでした。
帰ってあげたい。
気持ちはそうでも、体はこのに縛られていました。
け方に芳さんの薬を準備し、子どもたちのお弁当を作り、の塾の迎えを守らなければなりません。1でも休めば、このの朝は回りませんでした。
そのことを、私は誰にも言ったことがありませんでした。
翌、私は友の紀に話をかけました。
紀は私のたった1の友でした。神戸の商のくで、さな鮮居酒を営んでいます。
呼びし音が2回鳴り、紀がました。厨の音がろで騒がしく聞こえます。
「紀ちゃん、私、美咲」
「あら美咲、ごめん。今、の拡張事でてんてこいなの。でこっちからかけるね」
話はすぐに切れました。
私は受話器を卓に置き、しばらくぼんやり座っていました。
実の母は病気で、紀は忙しい。
私の周りは、しずつ静かになっていきました。
本はまだ、その孤独に気づいていませんでした。
数のけ方、台所でお弁当を作っていると、廊での気配がしました。
顔をげると、廊の突き当たりにある芳さんの部のドアがしいていました。
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誰かが台所のかりをうかがって、すぐ戻っていく気配です。
私が廊にたには、もうドアは閉まっていました。
「お義母さんが、どうしてこのに……」
私は首をかしげましたが、それ以考えませんでした。
お弁当を作らなければならなかったからです。
米を握り、苔を切る。
私の朝は、いつもこうして始まり、こうして過ぎていきました。
週末の夜でした。
健がまた残業だと言ってかけた、私は子どもたちと3で事をしていました。
が箸を止めて尋ねます。
「パパ、どうしていつも帰ってこないの?」
私はし言葉を選びました。
「パパは今、お仕事がすごくいの。く終わらせて帰ってくるわよ」
は素直に頷きました。
優太は黙ってご飯をべています。
夜遅く、健が帰ってきました。私は卓に布巾をかけておいたご飯を温めようとちがります。
その、健のワイシャツかららないりがしました。
です。
私が普段つけない、女ののりでした。
子レンジので、私のが瞬止まりました。
けれど何も言いませんでした。
寝のベッドに入ると、健は背を向けてすぐに眠ってしまいました。暗の、健のスマートフォンの画面がりました。
通のが井にさく広がります。
私は目をけ、そちらを見ました。
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らない名からメッセージが届いていました。
名は読めませんでした。
がもう度点滅し、画面は消えました。
私は井を見げました。
再び暗が訪れます。
けれど、スマートフォンのが消えたも、私は目を閉じることができませんでした。の匂いが、まだ枕に残っているようでした。
の学芸会が1週に迫っていました。
私は夜遅く、ミシンのに座りました。
が台で着る装を作ることになったのは、1かのことです。
「ママ、のワンピースが着たいな」
がそう言った、私はすぐにを買いにりました。
夜の11を過ぎています。
ミシンの針が布のをりました。私は袖を折り返して縫います。
針が指先を刺しました。
血がさな玉のようににじみます。
私は指をにくわえ、絆創膏を巻くと、再びミシンのに座りました。絆創膏を巻いた指でボタンをつけ、糸を通します。
夜2を過ぎて、ようやく装が完成しました。
のワンピースをハンガーにかけ、リビングのかりので広げてみました。布が柔らかくを受け、ふわりと揺れます。袖の内側には、絆創膏を巻いた指で押さえた跡がし残っていましたが、表からは見えません。
翌朝、に装を着せてみました。
鏡のに並んでちます。はスカートの裾を持って、くるりと1回転しました。
「私、きれい?」
「が1番きれい」
私はの髪をえながら笑いました。