"追放嫁と姑の鍵" 第3話
「何のことだい。寝てたよ」
私は確かに聞きました。
けれど芳さんの顔には、何の痕跡もありません。
「そうですか」
私はそれ以聞かず、部をました。
ドアを閉めた瞬、背の沈黙が妙にくじられました。けれど私は振り返りませんでした。夕の準備があったからです。
夕のになりました。
私が子どもたちと卓でご飯をべていると、話が鳴りました。健からでした。
「今週末も現になきゃいけない。遅くなる」
い連絡でした。
「はい、分かりました」
私はそう答えて話を切りました。
が箸を止め、私を見げました。私はに微笑みかけ、おかずを取ってやりました。
子どもたちを寝かしつけ、皿洗いを終え、芳さんの夜の薬まで準備して、ようやく私の1が終わります。
私はベランダへました。
夜が植鉢の葉を揺らしています。私はびらを1枚、指先で触りました。
こので、私の名がついているものは何もありません。
部も、具も、壁にかかっているものも、すべてののものでした。
私が唯、自分ので育てているのは、このベランダの植鉢だけだったのです。
がもう度吹きました。
私はびらからをし、ベランダのドアを閉めました。
その曜、私は朝から優太のを引いて神戸の辺へかけました。
広告
砂浜の端、防波堤のくに並んで座ります。優太はスケッチブックを膝のに広げ、鉛を握りました。私も隣でさな帳を取りします。
塩がスケッチブックの隅をめくりました。
これは2だけの曜でした。
優太が絵を描くのが好きだと気づいてから始まった約束です。毎週同じ所、同じ。がれば根のある岸で描き、がければスケッチブックをで押さえながら描きました。
優太が鉛を止め、スケッチブックを差ししました。
そこには1の女性が描かれていました。髪がく、エプロンをつけた姿でした。
「ママ、きれいに描けたでしょう」
私はその絵を覗き込みました。
鉛の線はがたがたでしたが、角ががった優しい顔でした。私は優太の髪を撫でながら笑いました。
「うん。ママを本当にきれいに描いてくれたね」
その、隣のベンチから声が聞こえました。
「継母なのに、あそこまでするんですね」
振り返らなくても誰だか分かりました。同じ町内の保護者でした。
私の腕が瞬止まりました。
その言がので響きます。
しかし私は振り返りませんでした。
優太が私を見げていたからです。
私はもう度、優太に微笑みかけました。
その微笑みがし遅れたことを、おそらく私だけがっていました。
数、の学で保護者面談がありました。
広告
私は教のろの席に座ります。担任の先が席簿をめくりながら言いました。
「さん、最『うちのママが』が癖なんです。ご庭でとてもされているようですね」
私は俯きました。
目がくなり、先の顔を見ることができません。
「ありがとうございます」
やっとのことで、それだけにしました。
教をた、廊の窓際にち、しばらくを眺めました。の奥がつんとしました。
その頃、リビングの壁には優太の絵が1つ、また1つと増えていきました。私が文具でさな額縁を買ってきて、絵を入れ、壁にかけてあげたのです。
を描いた絵。
を描いた絵。
恐竜を描いた絵。
優太はしい額が飾られるたび、そのでびねてびました。
が隣で頬を膨らませます。
「お兄ちゃんの絵ばっかりずるい。私の絵も飾ってよ」
私は笑いながら言いました。
「じゃあも1枚描いておいで」
そのの夕方、は本当に1枚の絵を持ってきました。
壁の角が、子どもたちの絵で埋まっていきます。
私はその壁が好きでした。
こので私の名がついたものは何もありませんでしたが、この壁だけは私が作ったものでした。
あるの夕、私は皿洗いを終え、リビングのソファに座って実の母に話をかけました。
呼びし音が4回鳴り、ようやく母がました。
声が細い。
「お母さん、咳がひどいじゃない。病院にはったの?」
「丈夫、丈夫。邪がちょっと引いているだけだから」