"名刺一枚の逆転縁談" 第3話
の桜庭優馬さん。
彼は私の恋だった。
「いらっしゃいませ。ああ、まなみか」
仕事帰り、ドアベルの音とともにへ入ると、優馬さんはカウンターの向こうから笑ってくれる。
「うん。ご飯べに来ました。席、空いてる?」
「じゃあ、こちらのカウンターへどうぞ」
私はいつもの席に座り、メニューをきながらわざと員に話しかけるような調で聞いた。
「さん、今のおすすめは何ですか? お昼べられなかったから、もうお腹がぺこぺこで」
優馬さんはし考えるように顎にを当てた。
「がっつりべたいなら、牛肉のワイン煮がおすすめかな」
「じゃあそれください。あと、替わりのグラスワインも」
「かしこまりました」
彼との会いは3だった。
彼が私の働く美容にお客様として来てくれた。最初はただの常連客だったが、施術に料理の話や仕事の話をするようになり、そので彼がをしているのことを教えてくれた。
それから私は彼のに何度も通うようになった。
カウンター越しに話をするうちに、互いの距がしずつ縮まっていった。
彼とはの好みがった。級なだけが好きなわけでも、流りだけを追いかけるわけでもない。気取らない居酒も、ちみも、焼き鳥も、ラーメンも、ちゃんと「美しい」と笑えるだった。
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何より、話がった。
緒にいて、無理をしなくてよかった。
だから私は、このまま緒にいられたらいいなと、自然にうようになっていた。
その、私たちは久しぶりにデートをしていた。
といっても、おしゃれなレストランへくわけではない。今夜の目は、美しいと評判のホルモンだった。
「まなみ、本当にホルモンでいいの?」
並んで歩きながら、優馬さんがし配そうに聞いた。
「うん。だって優馬さんがべたいんでしょ?」
「うちのじゃ、ああいうのはせないからな。たまに無性にべたくなるんだよ。ただ、女の子ってああいうはデートできたくないのかなって。おじさんっぽいし、匂いだってつくし」
私は自分のを指差した。
そのはパーカーにデニム。髪も軽くまとめ、匂いがついても気にならない格好だった。
「そんなことないよ。私だってホルモン好きだし。匂いがつく配ならしなくて丈夫。匂いがついてもいいように、楽な格好で来たんだから」
そう言ってガッツポーズをすると、優馬さんはしたように笑った。
「よかった。まなみがそういうタイプで」
「そういうタイプって?」
「いや、女の子ってさ、デートにはおしゃれなしかきたくないっていうもいるだろ。イタリアンとかフレンチとか。でも俺は居酒とかちみにきたいだってあるし。
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そうなると、なかなか趣がわないことがいんだよね」
「ああ、分かる。私だって、たまにはおしゃれなところにきたいけど、正直、居酒とかちみの方がほっとするもあるんだよね。何も気にせず、を素直に楽しめるっていうか」
「やっぱりその点、まなみはいいよな。美しいものには貪欲っていうか」
「ちょっと、その言い方。それだと私がいしん坊みたいじゃない?」
「いやいや、褒めてるんだよ。だからこうしてホルモンをべにけるわけで」
「絶対、私のこといしん坊だとってるでしょ」
「まあ、ちょっとな」
2で笑いながら歩いていた、そのだった。
「あら、優馬。優馬じゃない」
背から声がした。
振り返ると、品なワンピースを着た女性がこちらを見ていた。
優馬さんの顔が瞬でこわばった。
「え、あ……母さん」
「優馬さんのお母さん?」
あまりにも予で、私の声はし裏返ってしまった。
女性は私をからまで見ると、元だけで微笑んだ。
「あら、優馬。そちらのお嬢さんは?」
唐突に聞かれた優馬さんは、し気まずそうに話題を変えた。
「それより母さんはなんでこんなところにいるんだよ」
「今はお父さんと久々にすることになってね。ミシュランを取ったお寿司さんにくところよ」
「父さんもいるの?」
「ええ。お父さんは今、駐にを入れているわ。
あ、ほら、ちょうど来たわ。お父さん、こっちよ。今、偶然優馬に会ったの」
すぐに、ブランドスーツを着た男性がづいてきた。