"祝儀袋と消えた花嫁" 第1話
「私、郎の姉です」
その言葉をにした瞬、目のにつ嫁の表が、ほんのしだけいた。
いウェディングドレスをまとった彼女は、まるで自分こそがこの世界のだと言いたげに、顎をげて私を見ろしていた。ふわりと広がるドレスの裾も、丁寧にえられた髪も、きらきらるアクセサリーも、確かに今の主役にふさわしいものだった。
けれど、そのからてきた言葉は、あまりにもたかった。
「あたし、嫁です。もうあんたの番はないのよ」
その言に、私は瞬、息をすることさえ忘れた。
目のの女性は、これから私の切な弟の妻になるだった。弟が選んだだから、きっとどこかにいいところがあるはずだとっていた。そう信じようとしていた。
けれど、私の目のにいる彼女は、っていたよりずっと裏表が激しく、わがままで、自分以のを見すことに何のためらいもないように見えた。
こんなと、優也が結婚するなんて。
胸の奥に、たいが落ちていくようだった。
私は京子。もうすぐ40歳になる。
職業は普通の会社員。派な暮らしをしているわけでもなく、毎決まったに起きて、仕事にき、に帰って弟と夕をべる。そんな、ごく普通の活を続けてきた。
ただひとつ普通ではなかったのは、私はい、弟の母親代わりをしてきたということだった。
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弟の優也の母親代わりになると決めたのことを、私は今でも昨のことのように覚えている。
両親を事故でくしたのは、もう20数のことだった。当の私はまだ学で、弟の優也は幼稚園のだった。
突然両親がいなくなった現実を、私は泣きながらもしずつ理解していった。けれど、まださかった優也には何が起きたのか分からなかった。葬儀のも、黒いを着たたちので、ただそうに私の袖を握っていた。
そのさなの触を、私は今でも忘れられない。
まだ幼い弟が、何も分からないまま両親を失ってしまったことが、たまらなくかわいそうだった。
今えば、私だって分かわいそうな子どもだった。部活も勉もあった。友達と遊びたいもあった。泣きたい夜もあった。
それでも、私は決めた。
優也を守る。
両親の代わりにはなれなくても、この子が寂しさだけを抱えてきくならないように、そばにいる。
それからの々は忙しかった。
朝はく起きて朝を作り、優也を幼稚園へ送りし、自分も学へく。帰ってくると洗濯をし、夕を作り、宿題を見て、寝かしつける。親族に助けてもらいながらも、毎は目が回るほど慌ただしかった。
けれど、議と嫌ではなかった。
むしろ振り返ると、とても楽しかったとう。
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2で何度も失敗して、泣いて、笑って、乗り越えてきた。優也が初めて自分で靴ひもを結べた。運会で転んでも最までった。受験に受かった。就職が決まった。
そのたびに私は、姉として、母のような気持ちで胸がいっぱいになった。
「姉ちゃん、聞いてる?」
目ので優也が箸を止め、し呆れたように私を見ていた。
私ははっとして、目のの卓に識を戻した。
「ああ、ごめん、ごめん。なんだっけ」
「だから、俺の結婚式の話」
優也は茶碗を置き、真剣なようでいて、どこか照れくさそうな顔をしていた。
「黒紋付なんか着なくていいからな。いドレス着ろよ」
「そういうわけにはいかないでしょう。郎側の親族なんだから」
私はわず苦笑した。黒紋付を着るほどげさにするつもりはなかったが、齢やを考えれば、落ち着いた装を選ぶべきだとっていた。
けれど優也は首を横に振った。
「いいんだよ。俺が見たいんだよ。たまには綺麗な格好をしろよ」
その言葉に、私は瞬、返す言葉を失った。
優也はし線を落とし、照れ隠しのように噌汁をすすった。
「姉ちゃん、俺のせいでオシャレもしてただろ」
「やめてよ。優也のせい?」
私は笑って返したが、優也の声には本気の響きがあった。
「姉ちゃんは素材がいいからさ。そのままでいいとか言って、ずっと自分のこと回しにしてたじゃん」
「そういうこと言うようになったのね」