"20年目のマネキン" 第9話
ほとんどは普通のプロ写真だった。
ポートレート。ファッション写真。広告写真。
しかし、ディレクトリ構造の奥くに、隠されたフォルダーがあった。パスワードで保護されていたが、専によって解除された。
そのフォルダーには、217枚の写真と43個のビデオファイルが含まれていた。
内容は、言葉を失うほど恐ろしいものだった。
若い女性たちが識を失った状態で撮されていた。いくつかの写真は、加藤リナの遺体が見つかった、まさにあの具で撮されていた。背景には同じ棚、同じ箱が写っていた。
写真のメタデータを解析すると、撮期は2001から2004のに集していた。
2004以、しい写真はなかった。
は写真のに、23の異なる女性を確認した。1回だけ写っている者もいれば、複数回の撮に写っている者もいた。
加藤リナもそのにいた。
2002927付けの15枚の写真のシリーズに、彼女は写っていた。
それは、本田の証言ではリナが事務所をたとされる刻の直だった。
写真ののリナは、具のに横たわっていた。識はなく、首には圧迫されたような痕跡があった。シリーズの最には、20に発見されたものと同じ姿勢にされた彼女の姿が写っていた。
った状態。
腕はへ。
は傾いている。
警察は、写真に写っていたの女性たちの元確認を始めた。
広告
それは骨の折れる作業だった。2001から2004の方者データベースと照し、顔、体型、傷跡、歯の記録、族の証言をねていく。
1ヶ以内に、14の名が特定された。
全員が19歳から25歳の若い女性だった。
全員が、神聖モデルズが営業していた期に方として届けられていた。
そして全員が、キャスティングや撮のために神聖モデルズ、または本田剛に関係する所へ向いたに失踪していた。
刑事は、ひとつずつ過の事件を調べた。
パターンは同じだった。
若い女性がキャスティングへく。
事務所のビルへ入る姿が確認される。
その、煙のように消える。
いくつかのケースでは、本田はリナの事件とよく似た証言をしていた。
「彼女は来た。撮を受けた。その、帰った。もう会っていない」
それらの事件はいずれも解決されず、未解決のまま残されていた。
ハードドライブのビデオファイルには、本田のが記録されていた。
彼は被害者にお茶を勧めていた。そのみ物には、何らかの薬物が混ぜられていた能性がい。んでから20分から30分ほどで、女性たちは識を失っていた。
くの被害者は数に識を取り戻し、何が起こったのかはっきり覚えていなかった。本田は「疲れて眠ってしまっただけだ」と説し、キャスティングはうまくいった、事務所から連絡すると言って帰していた。
広告
しかし、何かがおかしいと気づき、警察にく、誰かに話すと訴えた女性たちは、きて事務所をられなかった。
加藤リナは、その1だった。
最のビデオには、20029271843分という刻が記録されていた。
リナは識を取り戻し、何が起こったのか理解し始めていた。声は震えていたが、必に説を求めていた。
本田は、彼女を落ち着かせようとしていた。
「君は同したんだ」
そう言っていた。
リナは信じなかった。
「警察にきます。全部話します」
その言葉の、映像は最悪の方向へんだ。
ビデオは突然途切れていた。
次の写真群は、リナの遺体を処理する過程を示していた。本田は全てを静に、専にっていた。まるで通常の撮準備をしているかのように。
はその報告を聞いた、しばらく黙っていた。
20、リナはそこにいた。
事務所の具の隅で。
毎、何ものがくを通っていた。
誰も気づかなかった。
本田は、犯罪の痕跡を隠すだけではなかった。
被害者を“物”に変えた。
性を奪い、自分の空と支配欲のための具にした。
理学者たちは、本田にとってそれは戦利品だったのだと分析した。彼は被害者に対する権力の記憶を、目に見える形で保していた。具に入るたび、普通のマネキンに偽装された犯罪の結果を見て、支配と優越を得ていたのだろうと。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
湖底の五本柱
1999年2月、記録的な豪雪に閉ざされたダム建設地・鏡谷で、3人の男が忽然と姿を消した。 彼らが乗っていた黒いセダンは、エンジンをかけたまま雪原に残されていた。ドアは開き、所持品もそのまま。だが、車の周囲には人が降りた足跡が一つもなかった。 やがて龍鳴寺の床下から見つかった1台のカメラが、事件を思わぬ方向へ動かしていく。そこに写っていたのは、消えた3人と作業員たちが、吹雪の中で何かを巡って激しく対立する姿だった。 さらに、ダムに沈むはずだった村からは、古い拳銃、止まった懐中時計、血に染まった作業車、そして「五つの柱」という不気味な言葉が浮かび上がる。 これは単なる失踪ではなかった。 ダムの底へ沈められようとしていたのは、村の風景だけではない。30年前に隠された罪と、ひとりの老人が命をかけて仕掛けた復讐だった。 雪の中で消えた男たちは、どこへ行ったのか。 そして、水没した地下から響く時計の音は、何を告げていたのか――。ミステリー|行方不明|金銭問題3.0萬字5 10 -
完結第10話
消えた弟と制服の父
1991年3月、群馬県の山間にある静かな村で、2歳の木島拓也が自宅の前庭から忽然と姿を消した。 父は警察官。母は家の中にいた。庭にはおもちゃのトラックだけが残され、足跡も、争った跡も、手がかりらしいものは何も見つからなかった。 大規模な捜索が行われても、拓也の行方は分からない。やがて事件は迷宮入りしかけるが、父・洋介の行動にはいくつもの小さな違和感が残っていた。 予定より長すぎたランニング。説明のつかないパトカーの走行距離。外したはずの銃弾。そして、父の後ろ姿を見ていた4歳の姉・香織の沈黙。 それから3年後。 成長した香織は、悪夢の中で何度も同じ光景を見るようになる。 「パパが、拓也を傷つけた」 幼い記憶の断片が少しずつつながった時、消えた2歳児をめぐる事件は、思いもよらない形で再び動き出す。 前庭から消えた子どもに、本当は何が起きたのか。 そして、家族が3年間口にできなかった“あの日の真実”とは――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 47 -
完結第12話
20年目の神隠し夫婦
2004年、奄美大島へ新婚旅行に訪れた木村俊介と伊藤しおりは、宿泊先の民宿から忽然と姿を消した。 部屋には開いたままの旅行鞄、起動中のノートパソコン、携帯電話、財布、そして現金まで残されていた。最後に確認されたのは、しおりがブログに投稿した「明日はもっと素敵な1日になるはず」という幸せな言葉。 しかし、その夜を境に、2人の足取りは完全に途絶える。 事故なのか、事件なのか、それとも自ら消えたのか。家族は誹謗中傷に苦しみながらも、わずかな手がかりを追い続けた。だが、茶色い革の鞄が見つかっても、真実にはたどり着けないまま、20年の歳月が流れていく。 そして2024年、遠く離れた異国の小さな漁村から、信じられない知らせが届く。 20年前、奄美の夜に消えた新婚夫婦は、そこで何を失い、何を守り続けていたのか。 長すぎる空白の先で明かされるのは、愛する人を想い続けた家族と、帰る道を忘れなかった2人の物語。ミステリー|行方不明1.8萬字5 14 -
完結第13話
嘘葬りの豆腐店
1991年、茨城の古い商店街で、豆腐屋の嫁・美香が突然姿を消した。 姑と夫が語ったのは、「男を作って夜逃げした」という話。幼い息子を置いて消えた母親として、美香の名は商店街で長く汚され続けた。 しかし6年後、借金による強制執行で高橋豆腐店が取り壊されることになる。誰も近づこうとしなかった裏手のボイラー室。そのコンクリートを掘り返した時、そこから現れたのは、色褪せたスカーフと小さな金の指輪だった。 男と逃げたはずの嫁は、なぜ自宅の床下にいたのか。 そして家族は、6年間何を隠し続けていたのか。 雨の夜に消えた母の名誉を取り戻すため、古い商店街の沈黙が少しずつ崩れ始める。ミステリー|行方不明1.9萬字5 23 -
完結第11話
8年目の生マイク
8年前、宇都宮で1人の女性が明け方に姿を消した。 本田さゆり、54歳。夫は地元テレビ局で長年ニュースを担当してきた有名キャスター・本田正弘だった。彼はカメラの前で涙を浮かべ、「妻の帰りを待ち続けている」と語り、世間から“悲劇の夫”として同情を集めていた。 しかし、未解決事件を扱う生放送番組の休憩中、正弘の胸元についたピンマイクが切り忘れられていた。 誰もいない廊下で、彼が小さくつぶやいた一言。 「さゆり、お前があの時、口さえ閉じていれば……」 その音声を聞いてしまった若手ディレクターの通報により、8年間止まっていた事件が再び動き出す。 明け方の電話、隣家が聞いた重い音、失踪直前に消えた1000万円。そして、夫が隠し続けた古い土地。 完璧な悲劇を演じてきた男の仮面は、たった1つの切り忘れたマイクによって、静かに崩れ始める。ミステリー|行方不明1.7萬字5 53