"消された登山日誌" 第5話
ガイドという仕事は、との会いと別れの繰り返しです。お客さんを全に案内してしたら、それで終わり。また次のお客さん。そんな々の繰り返しです」
恵子はし驚いた。
「そうなんですか。でも、たくさんのと会えるのは素敵なことではないですか」
本は恵子を見つめた。
「そうですね。でも本当にを通わせることは、なかなか難しいんです。ほとんどのお客さんはに登って終わり。もう2度と会うことはありません」
恵子は何と答えていいか分からず、黙って歩き続けた。
本の言葉に、何か寂しげなものをじた。
午10頃、は徐々に険しくなってきた。岩が続く区に入ったのだ。元にはきな岩が転がり、歩歩慎にまなければならなかった。
本は振り返って言った。
「ここからがし変です。私のについて、同じ所にを置いてください。決して無理はしないでくださいね」
恵子は緊張しながらも、本の指示に従った。
本は々ち止まり、恵子が追いつくのを待った。そしてを差し伸べ、恵子を引きげることもあった。
恵子はそのを取りながら、何度も礼を言った。
「ありがとうございます」
本は優しく答えた。
「いえいえ、これが私の仕事ですから。でも田さんは本当にです。7の経験は伊達じゃないですね」
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岩を越えると、し平らなになった。
そこで2は休憩を取った。リュックから筒を取りし、をみながら景を眺める。
にはが広がっていた。まるでいのに浮かんでいるような、議な景だった。
恵子はして言った。
「すごい。こんな景、初めて見ました」
本は恵子の横に座った。
しい距だった。
「田さん、登が本当に好きなんですね。表を見れば分かります。本当に楽しんでいる」
恵子は頷いた。
「はい。に登ると、常の悩みを忘れられるんです。すがすがしい気持ちになれるんです」
本は静かに尋ねた。
「ご族は反対しませんでしたか。女性が1でに登るのは、配されるでしょう」
恵子は微笑んだ。
「最初はし配されました。でも今は応援してくれています。夫も娘も、私が楽しんでいる姿を見るのが好きだと言ってくれます」
その、本の表がし曇った。
「いいご族ですね。羨ましいです」
恵子は議にった。
本は結婚していないのかしら。
そうったが、ち入ったことを聞くのは失礼だとい、黙っていた。
休憩が終わり、2は再び歩き始めた。
頂まであと2ほど。はさらに険しくなり、々鎖を使って登る所もあった。恵子は息を切らしながらも必についていった。
本は何度も振り返り、恵子を励ました。
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「もうしです。頂はすぐそこですよ。頑張ってください」
正午過ぎ、が急に狭くなった。片側は崖になっている。本はち止まり、真剣な顔で言った。
「ここは慎にんでください。崖側にはづかないように。私がしっかり見ていますから、してください」
恵子は緊張しながら歩歩んだ。
本は恵子のすぐろを歩いていた。そして々、恵子の肩にを置いてバランスを取らせた。
恵子は本の優しさに謝しながら、慎にんでいった。
しかし恵子は気づいていなかった。
本のので、あるがきくなっていることを。
それは単なるガイドとしての親切ではなかった。もっとく、もっと危うい何かだった。
そしてそのが、やがて取り返しのつかない劇をむことになるとは、誰も予していなかった。
午1過ぎ。
2はついに青峰の頂に到着した。
恵子は息を切らしながら、頂の標識を見げた。
願の青峰の頂だった。
本は恵子に声をかけた。
「お疲れ様でした。よく頑張りましたね。さあ、景を見てください」
恵子が振り返ると、そこには言葉を失うほどの絶景が広がっていた。
360度、見渡す限りの々。葉に染まった肌が、まるで燃えるように輝いている。くにはが広がり、そのに々の稜線が浮かんでいた。
恵子はで胸がいっぱいになった。
「すごい……本当に素らしい。こんな景、見たことがありません」