"消された登山日誌" 第1話
昭5310、野県の青峰で1の女性が姿を消した。
田恵子、37歳。登が趣だった彼女は、ベテラン登ガイドの本浩司と共にへ入った。葉が最も美しい季節で、発の恵子は族に笑顔でを振っていた。
しかし登3目、恵子は突然方になった。
本は涙ながらに語った。
「がて、に迷ってしまったのだといます。必に探しましたが、見つかりませんでした」
警察と元の岳救助隊は、1週にわたり青峰を捜索した。崖、、沢、岩。考えられる所を何度も探したが、恵子の姿はどこにもなかった。
険しい形での滑落事故。
そう結論づけられ、事件は迷宮入りした。
当15歳だった娘の美穂は、母親のいないを歩み始めることになった。
それから13の平成元、本浩司が登ガイドを引退すると発表した、誰も予していなかった真実がらかになる。
信頼していたガイドが、実は13、恐ろしい秘密を隠し続けていたのだった。
昭53、1978の。
野県のさな町に、田恵子という1の女性が暮らしていた。37歳の恵子は、夫の誠、15歳の娘・美穂と共に、穏やかな々を送っていた。
誠は元の農協に勤める真面目な会社員だった。朝は決まったに聞を読み、湯呑みのお茶をんでから勤する。くを語るではなかったが、族を切にする誠実な男だった。
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美穂は元のに通うるい女だった。朝、制の襟を直しながら慌ただしく玄関をびしていく姿を、恵子はいつも笑って見送っていた。
恵子自は専業主婦として庭を守りながら、週に2度、所のスーパーマーケットでパートの仕事をしていた。
朝は族のために朝を作る。噌汁の湯気が台所のさな窓を曇らせ、焼き魚の匂いがのに広がる。誠を送りし、美穂を学へ見送ると、恵子は器を洗い、洗濯物を縁側に干した。
事を済ませた、パートのあるは午からスーパーへかける。夕方にはに戻り、買い物かごを台所に置いて、夕の支度を始める。族が帰ってくるにわせてご飯を炊き、鍋にを入れる。
そんな何気ない常が、恵子にとっての幸せだった。
さな台所で噌汁を作る音。縁側で洗濯物を干す穏やかな午。族3で囲む夕の卓。
昭の代、くの庭がそうであったように、田も静かで温かい々に包まれていた。
しかし恵子には、もう1つの顔があった。
登好としての顔である。
恵子が登を始めたのは30歳のだった。友に誘われて参加した登サークルで、初めての魅力に触れた。
澄んだ空気。々の匂い。元のの触。苦しい登りを越えた先に広がる壮な景。
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そして頂にったの、胸の奥が気にけるような達成。
恵子はすぐに登の虜になった。
それから7、恵子は毎のようにへ登った。もちろん族の理解があってこそだった。
誠は最初、妻のしい趣にし戸惑った。
「は危ないんじゃないのか」
夕、登用の図を広げている恵子にそう言ったこともある。
恵子は顔をげ、し照れたように笑った。
「無理はしないわ。ちゃんとサークルのたちと緒にくし、準備もするから」
誠はしばらく妻の顔を見ていた。台所や事だけでは見せない、ききとした表だった。
それを見て、誠はやがて応援することにした。
美穂も、母親が楽しそうにしている姿を見るのが好きだった。々、恵子はで撮った写真を族に見せながら、そのの来事を語った。
「この、見て。さくていでしょう。のに咲いていたの」
「こっちは頂から撮った写真よ。がに見えたの」
美穂は写真を覗き込み、目を輝かせた。
「お母さん、すごい。私もいつかってみたい」
「もうしきくなったら緒にきましょう」
そんな話を聞くは、族にとっても楽しいひとときだった。
恵子の部のさな本棚には、登の専や図が並んでいた。週末になると、恵子は次の登計画をてるのが習慣になっていた。
ノートにの名をき、必な装備をリストアップする。