"弁当箱の中の復讐" 第9話
名は、ゆりえ。
妹と同じ名だった。
「ペットショップで偶然、ゆりえと同じ誕の子を見つけたんだ。運命をじた」
久は照れくさそうに言った。
私はし驚いたが、すぐに胸が温かくなった。
ベンガルは猫のでもかなり活発で、たくましい種類らしい。久はその猫に向かって、「今度はたくましくきろよ、ゆりえ」と言いながら溺しているという。
々噛まれているようだが、それすらいらしい。
「傷跡すらしい。女なんかより猫だ」
そう言っていたは、さすがにいろいろなで息子を配した。
「久、それはちょっと極端じゃない?」
「丈夫だよ、母さん。今は猫で分幸せだから」
話の向こうで、にゃあと鳴く声が聞こえた。
久は嬉しそうに笑っていた。
婚したことが、彼にとって幸だけで終わらなかったのなら、それでいい。本が幸せそうにしているなら、母親としてしした。
私の方も、活がきく変わった。
ゆりえがいない。
夫もいない。
久も転勤でていった。
私は1暮らしになった。
最初は、のが広すぎた。
ゆりえの部のを通るたびに、胸が締めつけられた。夜に目が覚めると、娘の呼吸を確認しなければと体が勝に起きがりそうになった。染みついた介護の習慣は、そう簡単には消えなかった。
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けれど、私はしずつ自分のを取り戻していった。
ある、所の掲示板でテニスサークルの募集を見つけた。
「60代歓迎。初者。楽しく体をかしましょう」
若い頃のようにはけないだろう。
膝もし痛む。
それでも、なぜかその貼りから目がせなかった。
い切って参加してみると、そこには同世代のたちがたくさんいた。みんなというわけではない。空振りもするし、ボールはわぬ方向へんでいく。けれど、そのたびに笑い声が起こった。
「百子さん、ナイス!」
「今の惜しかったわね」
そんな声をかけられることが、っていた以に嬉しかった。
私はたな関係を築き始めた。
サークルには、お菓子作りがなもいた。テニスのないは、その方のに何かで集まり、ケーキやクッキーの作り方を習うことも増えた。
そののお茶会も楽しみの1つになった。
「って、何歳からでもしいことに挑戦して楽しめるものなのね」
ある、焼きたてのパウンドケーキをに、私はそう呟いた。
隣の友が笑った。
「そうよ。若い頃みたいにはできないこともあるけど、それはそれよ」
その言葉に、私はきく頷いた。
できないことを数えるより、できることを目いっぱい楽しむ。
それも悪くない。
むしろ、今の私にはそれが必だった。
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最の私は、朝からしっかりべるようになった。
若い頃は避けていた赤の肉も、今では議と美しくじる。油っこいものは相変わらず得ではないが、シンプルに焼いたステーキなら、体がぶような気がした。
朝のが差し込む台所で、フライパンに肉を置く。
じゅう、と音がして、ばしい匂いがちる。
夫がいた頃なら、「朝から肉か」と笑ったかもしれない。ゆりえがいた頃なら、私はまず娘の体調を確認し、薬や事の準備をしていたはずだ。
今、台所にいるのは私1だ。
寂しさがないと言えば嘘になる。
けれど、その寂しさだけでを埋め尽くすつもりはなかった。
私は、娘と夫のもとへくそのまで、い切りきようとっている。
美に復讐したことについて、悔はない。
やりすぎだったのではないかと、ふと考えることもある。けれど、そのたびに葬儀で聞いた美の声がよみがえる。
「義理の妹とはいえ、ぶっちゃけ迷惑だった」
「汚くて気持ち悪くて、目の毒」
「姑もそのうちくたばるだろうし」
あの言葉を、私は忘れない。
私は聖ではない。
娘を侮辱されて、笑って許せるほどできた母ではない。
ただ、復讐を終えた今は、りだけを抱えてきているわけでもない。美が職を失い、庭を失い、しでもの痛みをったのなら、それで分だとっている。
彼女のがこれからどうなるかは、彼女自が決めることだ。
そして、私のもまた、私自が決めることだ。