"青いハンカチの花嫁" 第5話
宴、俺のところにこっそりづいてきた、ある物の告も録音されていた。
「浩司君、今はよく来てくれたね。これはほんの気持ちだ」
会に響いたのは、郎の父・夫の声だった。
親族席に座っていた夫の顔から、さっきまでの笑いが消えた。彼は信じられないものを見るように目を見き、ちがった。
録音は、宴の約1のものだった。
暗い通の奥にいた俺のところへ、夫がこっそりづいてきたのだ。
彼は周囲に誰もいないことを確認すると、俺の膝のに分いい封筒を置いた。
「浩司君もっての通り、うちの会社は今かなり苦しい状況でね。額の借があるんだ」
夫の声には、焦りと卑屈さが滲んでいた。
「健が君の柄を奪ったことは、私も妻もっている。本当にすまないとっているよ」
録音されたその言葉に、由美の親族たちが斉にどよめいた。
夫は顔面蒼になり、をぱくぱくとかすだけで、何も言えなかった。
レコーダーの音声は、さらに残酷な真実を語り続けた。
「だがね、浩司君。君のような体の男には、どうせまともな結婚なんて無理だろう。健が代わりに由美さんをもらってやるんだ。そしてあちらのお父様の会社と資産で、うちの借を肩代わりしてもらう。これはお互いにとって番いい方法じゃないか」
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「それが由美さんを騙す理由ですか?」
録音のの俺の声は、く震えていた。
「騙すなんて聞きが悪い。健だってしは彼女をしているはずだ。それに、この封筒のには100万円入っている。これだけあれば、君も当分は活に困らないだろう」
夫の乾いた笑い声が流れた。
「だから今の披宴が終わったら、2度と健のには現れないでくれ。君のは、これからの私たちには邪魔になるんだよ」
そこで録音は終わった。
ぷつん、というさな子音の、会は気なほどの静けさに包まれた。
誰もをけない。
りと軽蔑の線が、健、夫、慶子の3に突き刺さっていた。
「夫さん」
正社がく押し殺した声で呼びかけた。
その拳は、テーブルのでくなるほどく握りしめられていた。
「今の話は本当ですか? 私たちの財産目当てで娘を騙したと」
夫は慌ててを振った。
「違います、正さん。誤解です。これはAIか何かで作られた偽の音声で……」
「見苦しいですよ」
由美の静かでたい声が会に響いた。
夫はびくっと肩を揺らし、言葉を失った。
由美は俺をかばうようににったまま、健の族をまっすぐ見据えていた。瞳にはもう涙はなかった。あるのはく静かな決とりだった。
健は焦りから顔を真っ赤にして叫んだ。
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「由美、騙されるな。そいつはただの疫病神だ。子のれな男が、俺たちの幸せを壊そうとしているだけなんだ」
健は再び由美の腕を掴もうとした。
しかし由美は、そのをく弾き返した。
「触らないでと言ったはずです」
その声は氷のようにたかった。
健は弾かれた自分のを見つめ、信じられないという顔で由美を見返した。今まで彼に従順だった由美が初めて見せた、確な拒絶だった。
「健さん」
由美は彼から目をそらさず、はっきりと言った。
「あなたは私に、命の恩だと嘘をつきましたね」
「嘘じゃない。俺は本当に……」
「私があなたを疑い始めたのは、今ではありません」
その言葉に、健の顔がわずかに引きつった。
「疑い? 何を言っているんだ、由美。俺たちはあんなにしって……」
「いいえ。あなたは1度も私のを見ていませんでした」
由美は俺の膝のにある青いハンカチを見つめた。
「浩司さん、このハンカチを見せてくれて、本当にありがとうございます」
俺は静かに頷いた。
「でも、健さん。私があなたを偽物だと確信したのは、ハンカチのせいだけではありません」
会の全員が息を呑んだ。
健は何がなんだか分からないという顔でずさる。慶子も夫も、そうに顔を見わせていた。
「あなたは10の事故の、私が何をしていたか、まったく覚えていませんでした」
由美のから語られようとしているのは、健が決してるはずのない、あののの記憶だった。