"消えた退院前夜" 第10話
黒田職員はちがろうとした。だが田刑事が腕を掴んだ。
「しくしてください」
黒田職員は崩れるように子へ座った。そしてさな声で呟いた。
「バレるとわなかった」
黒田警部補は向かいに座り直した。
「何がバレるとわなかったんですか」
黒田職員は顔をげた。目には諦めのが浮かんでいた。
「薬を売っていたの」
「眠導入剤を?」
「ええ。で」
「いつからですか?」
「2から。料だけじゃりなくて……しずつ抜いていたの。誰も気づかなかった」
黒田職員は自嘲するように笑った。
「でも、あの……527ですね」
「ええ。薬品庫にいたら、患者が来たの。田子」
黒田職員はその名を吐き捨てるように言った。
「何をしているのか聞かれた。慌てて庫確認だとごまかした。でも、あのは疑っていた。このままではまずいとった」
「それで封じを?」
黒田職員は目を伏せた。
「本を脅して薬を投与させた。眠らせるだけのつもりだった」
「そのは?」
黒田職員はく息をついた。
「夜、病にった。田はく眠っていた。誰もいなかった。それから子に乗せて、病院のに連れてった」
「?」
「古い倉庫があるの。使われなくなった備品を置いている所」
「そこに何をしたんですか」
黒田職員の声が震えた。
「置いてきた。薬が効いていて、目を覚まさなくて……朝になれば起きるとった。
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でも……」
「田さんはどうなったんですか」
「分からない。朝になったら、もう息をしていなかった」
部の空気が凍った。
黒田警部補はゆっくりちがった。
「案内してください。その倉庫へ」
黒田職員は力なく頷いた。
116午3。
黒田警部補、田刑事、病院職員数名、そして黒田職員は病院のへ向かった。
古い階段をりると、ひんやりした空気が元からがってきた。蛍灯は暗く、壁には湿気の跡があった。
には広い空があり、使われなくなった医療器が積まれていた。古いベッド、子、レントゲン装置、壊れた棚。全てが埃をかぶって放置されていた。
「倉庫はどこですか」
黒田警部補が尋ねると、黒田職員は奥を指さした。
「あそこです」
い鉄の扉が閉まっていた。事務職員が鍵をける。扉は軋む音をてていた。
は真っ暗だった。
懐灯のだけが、を切り裂いた。棚には古い類や医薬品の空き箱が並び、にはく埃が積もっていた。
「ここに田さんを?」
「はい」
黒田職員はさく答えた。
「あそこの隅に……」
黒田警部補は懐灯を向けた。
倉庫の隅に、古い毛布が積まれていた。
田刑事がづき、慎に毛布をどけた。
そのに、い布のようなものがあった。
病院の寝巻きだった。
さらにそのに、骨があった。
の骨だった。
黒田警部補は息を呑んだ。
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8か、族が探し続けた答えが、病院のにあった。
田刑事が震える声で言った。
「鑑識を呼びます」
黒田職員はそのに崩れ落ちた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
何度も繰り返した。
黒田警部補は黙って遺骨を見つめていた。
1、鑑識が到着した。現検証が始まった。遺骨、寝巻き、毛布、周辺の埃、全てが証拠として採取された。
鑑識の責任者が報告した。
「女性の遺骨です。齢は40代。8か程度経過しています。因は詳しくは解剖が必ですが、傷は見当たりません。薬物による能性がいです」
黒田警部補は頷いた。
ついに、子さんは見つかった。
しかし、それはあまりにも残酷な再会だった。
黒田職員は警察署へ連された。
取調で、詳しい事聴取が始まった。机のには録音が置かれ、黒田警部補が向かいに座った。田刑事は隣でメモを取った。
「527の夜のことを、最初から話してください」
黒田職員はうつむいたまま、淡々と話し始めた。
「午10頃、田子さんが薬品庫のくに来ました。私が薬品を理しているところを見られたんです。審にったんでしょう。何をしているのか聞かれました」
「あなたは何と答えたんですか」
「庫確認だとごまかしました。でも田さんは納得していないようでした。このままでは薬の横流しがバレるといました。
バレれば職を失う。逮捕される」
黒田職員の声が震えた。
「だから封じを考えた」