"見下した作業服の裏にある真実の誇り" 第16話
「いいえ、もう遅いわ」
母が静かに告げた。その、料亭のな玄関の扉がき、の男性が入ってきた。鋭い。その物を見た瞬、さんの顔が今番の驚きで引きつった。そこにっていたのは貿易のトップ、本社そのだった。話でさんに解雇を言い渡した本が、なぜこの所に現れたのか。
「本社、助けてください!シノメ会に誤解を解いてください!」
さんがすがりつこうとしたが、本社はそれをたく突き放した。
「誤解などあるものか。シノメ会、この件は私の管理と得ている。が社の役員が会に対してこれほどの無礼を働いたこと、到底許せるものではない」
本社はさんたちので、母に向かってくをげた。
「本さん、わざわざ来なくてよかったのに」
母が今初めてしだけ表をらげた。
「貿易の件、私は決断を変えるつもりはないわ」
「承しております。ですが、最に直接ご報告をといまして」
本社は顔をげると、面に額をつけているさんをたく睨んだ。
「、おが隠していた裏帳簿が見つかったぞ。請けへの支払いを横領していた証拠だ。今おの自宅には警察が向かっている。静夫、あなたのブランド品コレクションも全て、その汚い横領で買われたものだ。
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もなく全て差し押さえられるだろう」
「え……?私のエルメスが、シャネルが…… いや、いやよ!」
静さんが野獣のような叫び声をげ、そのに崩れ落ちた。その隣で拓也もガタガタと震え、ついには腰を抜かして座り込んでしまった。
「嘘だ、悪だ…… みさ、みさ!」
拓也が私のスカートの裾を掴もうとを伸ばす。しかしそのは届かなかった。私の母、シノメ正子が静かに歩にたからだ。母は腰を抜かした拓也、そして崩れ落ちた親子を、まるで化物を見るような無な目でただ見つめていた。この沈黙が彼らにとって何よりも恐ろしい処刑宣告だった。言い訳も謝罪も、もはや何のもなさない。彼らが積みげてきた傲な世界は、母の沈黙によって完全に否定され、消しられようとしていた。
「本さん、あとは法と正義に従って処理してください。みさ、きましょう」
「はい、お母さん」
私たちは荒れ果てた廊をにし、玄関へと向かった。背からはさんの絶叫、静さんの泣き叫び、拓也が私の名を呼び続ける声が聞こえていたが、私は度も振り返らなかった。
だが玄関をたところで母がを止めた。そこには台の黒塗り級が待っていたが、その横にもう、な物がっていたのだ。その物を見た瞬、母の目からそれまで度も見せなかった筋の涙が溢れした。
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「お母さん?」
驚く私に母は震える声で言った。
「みさ、あのが今私がこの作業を着ていた、本当の理由をっているよ」
物語は驚愕の逆転劇から、胸を打つの真実へときく転換していく。
料亭の玄関をると、夜のたい空気が頬を撫でた。ここには台の黒塗り最級セダンが静かにまっており、その傍らにの髪の老がっていた。皺は刻まれているがだしなみのき届いた掛けをに着けたその老は、母の姿を見るなりくをげた。
「会、無事ににいました」
その老のには、さく丁寧に梱包された箱が握られていた。母はそれを受け取ると胸にく抱きしめ、その目から粒の涙をこぼした。
「ありがとう、佐藤さん。本当にありがとう」
「お母さん、その方は?それにその箱は体何なの?」
私が困惑して尋ねると、母は涙を拭い、穏やかだがどこか物しげな微笑みを私に向けた。
「みさ、この方は佐藤さん。お父さんと私がたったで、この会社、いえあのさな町を始めたからの番の仲よ」
佐藤と呼ばれた老は私に向かって優しく目を細めた。
「みさお嬢さん、今はお父さんの回忌の命だったんですよ」
「え……?」
私は息を呑んだ。仕事と結婚の準備に追われ、私はあろうことか父の切な命を忘れていたのだ。
「そしてね、みさ、今私がこの油まみれの作業で来たのには理由があったのよ」母は自分の作業の袖をそっと撫でた。