"消えた人妻と15年の嘘" 第3話
はすぐに聞き返した。
「話ですか。どこで」
「スーパーのにある公衆話ボックスです。泣きながら話していました」
公衆話。
は違を覚えた。
員の証言では、ゆみは携帯話でメールを送っていた。ならば、なぜ公衆話を使ったのか。
「どんな内容でしたか」
田は記憶をたどるように目を細めた。
「かったので全部は聞こえません。でも、『もうこれ以は無理』とか、『今回が最』とか、そんなことを言っていました」
佐藤ゆみは、誰かと刻な対を抱えていた。
はそう判断した。
彼は佐藤のマンションを、もう度調べることにした。
最初の捜索では見落としていた所を、今度は丹に確認した。寝、台所、押し入れ、化粧台。ゆみが常に使っていた空を、1つずつ調べていく。
化粧台の鏡の裏に、く折りたたまれたさなメモがあった。
はピンセットでそれを取りし、広げた。
そこには、い言葉がかれていた。
助けを求めてはいけない。
絶対に警察にってはいけない。
健のためにも。
はを見つめた。
誰かが佐藤ゆみを脅していた。
しかも、その脅しは夫の健の全にも関係しているらしい。
さらに捜索を続けると、クローゼットの奥から古い携帯話が見つかった。
さな布袋に入れられ、類のさらに奥へ隠されていた。
広告
源を入れると、まだ作した。
は送信履歴を確認した。
最のメールは、失踪当の夜910分に送られていた。
件名はなかった。
本文には、こうかれていた。
終わったわ。
もうこれ以耐えられない。
ごめんなさい。
宛先は「姉さん」と登録されていた。
はすぐに話番号を確認した。表示された番号は、京の局番だった。
彼はそので話をかけた。
数回の呼びし音のあと、女性の声がた。
「もしもし」
声はく、らかに警戒していた。
「警察です。佐藤ゆみさんに関連して、お尋ねしたいことがあります」
話の向こうで、い沈黙があった。
「佐藤ゆみ……そんなはりません」
「失踪当の夜、この番号にメールが送られています」
再び沈黙が流れた。
やがて女性は、先ほどよりい声で言った。
「々お待ちください」
しばらくして、彼女は戻ってきた。
「もしかして、本物の警察の方ですか。分を確認できますか」
「もちろんです」
「それなら、の午2に京駅の待に来てください。お1でお願いします」
それだけ言うと、話は切れた。
は受話器を置き、しばらく考え込んだ。
佐藤ゆみには、夫にもらせていない連絡相がいた。
その相は「姉さん」と登録されている。
そして、ゆみは失踪直に助けを求めるようなメールを送っていた。
謎はまるばかりだった。
広告
その夜、はさらにきな衝撃を受けることになる。
佐藤健から、慌てた声で話がかかってきたのだ。
「警部補、に変なが届きました」
「どんなですか」
「妻の跡でかれているんです。でも……『私を探さないで。私はもうんだ』と」
はすぐに佐藤へ向かった。
は玄関ドアの隙に差し込まれていたという。
確かに、跡は佐藤ゆみに似ていた。
だが、文章には自然な点があった。
「従って」
「直ちに」
普段のゆみが使わない、堅苦しい言葉が混ざっていた。
はをにかざし、文字の流れを見た。
誰かが彼女の跡を真似た能性がい。
佐藤ゆみはきているのか。
それとも、誰かがきているように見せかけているのか。
そして夫の健は、本当に何もらないのか。
の疑は、さらに濃くなっていった。
翌の午2。
警部補は京駅の待に到着した。
の波が絶えなく流れている。旅客、会社員、学。誰もが自分の目へ向かって歩いている、は約束の女性を探して周囲を見回した。
その、背からさな声がした。
「警部補ですね」
振り返ると、30代半ばの女性がっていた。
顔は悪く、目元は赤く腫れていた。ここ数、まともに眠っていないことが分かる。
女性は周囲を確認してから、静かに名乗った。
「私が渡辺恵子です」
佐藤ゆみが毎を送っていた相だった。
は通りのない所へ移し、彼女と向きった。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
深淵に沈んだ家族
1998年、仙台に住む14歳の森本純平は、インフルエンザで家族旅行に行けず、玄関先で父、母、姉、妹を見送った。 黄色いホンダ・アコードは、いつものようにクラクションを2度鳴らして角を曲がった。 それが、家族を見た最後だった。 事故なのか、失踪なのか、事件なのか。答えが出ないまま20年が過ぎたある日、純平のもとに岩手県警から電話が入る。 「ご家族の車を発見した可能性があります」 見つかったのは、岩手の森の奥に開いた巨大な陥没穴。そこには、何十台もの車が墓標のように積み重ねられていた。 その中に、家族が乗っていた黄色い車があった。 さらに後部窓には、鋭いもので刻まれた一言。 「助けて」 純平の家族は、なぜこの森にたどり着いたのか。車を売った中古車店の男は、20年前に何を知っていたのか。 そして、穴の底に眠っていたのは、ひとつの家族の悲劇だけではなかった――。ミステリー|行方不明1.4萬字5 143 -
完結第11話
半月傷の弟
42歳のタクシー運転手・中村蒼太は、会社を失い、家族とも離れ、3ヶ月もの間、車中泊を続けていた。 彼には、18歳以前の記憶がない。滋賀県の国道沿いで倒れているところを発見され、身元不明のまま「中村蒼太」という仮の名前で生きてきた男だった。 そんなある朝、梅田のホテルから乗せた1人の男性が、バックミラー越しに蒼太の顔を見て表情を変える。 「23年前に、弟を失いました」 男が口にした名前は、森田優。18歳で家を出たまま戻らなかった、行方不明の弟だった。 失踪時期、滋賀での目撃情報、そして左肩に残る半月型の傷。 偶然とは思えない一致が、蒼太の失われた過去を静かに揺らし始める。 自分は本当は誰なのか。 23年前、あの日の国道で何が起きたのか。 車内で眠るしかなかった男の人生は、1人の乗客との出会いをきっかけに、思いもよらない真実へと動き出す。ミステリー|行方不明1.6萬字5 35 -
完結第7話
足柄サービスエリア失踪事件
1991 年春、東名高速足柄 SA で起きた未解決だった悲劇。 大阪へ新婚旅行に向かう途中、「トイレへ行く」と言った妻が跡形もなく消えた。 夫は毎月現場を訪ね、テレビの人探し番組にも出演し、私立探偵まで雇い 11 年待ち続けた。 時が流れ老朽化した SA の改修工事で、ロッカーの隙間から古い財布が出土。 進化した科学捜査が財布から犯人の指紋を検出し、長年隠されていた殺人の事実が白日の下に晒される。 一方的な執着は愛ではない、拒絶を受け入れられない歪んだ欲望が一人の女性の人生を奪った実話。真相|遺體発見|行方不明1.1萬字5 7392 -
完結第11話
雪に閉ざされた 6 人の高校山岳部
「5 人が帰って来ないんだ…」 一人テントで待ち続けた少年の叫びが吹雪に飲まれる。 計画書を偽り、顧問の許可なしで冬山へ踏み込んだ 6 人の高校生。 予期せぬホワイトアウト、装備不足、分断された仲間たち。 凍てつく岩木山で繰り広げられた、冷たく残酷な 6 人の冬山物語。 生き残った二人が一生抱え続ける後悔と、4 人の少年たちの最後の足跡。 60 年経った今も遺族が山を見上げて涙する、実録山岳遭難ノンフィクション。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.7萬字5 1382 -
完結第12話
世田谷一家殺害事件:隠された真実
昭和から平成を跨ぎ、25 年も国民の心に重くのしかかった世田谷一家惨殺事件。 長年流れていた外国人犯・国際組織の説は、すべて犯人が仕掛けた壮大な罠だった。 今回、長年閉ざされていた目撃証言、パソコンに残る夫婦の秘密相談記録、最新 DNA 鑑定の結果が一斉に明らかに。 地域で穏やかな人物として知られた隣人が、なぜ一家四人を惨殺するに至ったのか。 先祖から背負わされた重い十字架、古き因縁、一家が踏み込んでしまった禁忌の領域 —— 邸宅の壁に刻まれた 25 年分の悲しみと真実、一語一句逃さずお伝えします。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.8萬字5 454