みかん小説
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"柿の葉の封印" 第10話

結局は周囲の圧力に抗えず、別れを選んだ。千子はその正隆と見い結婚し、幸せな庭を築いたはずだった。

「そのがね」、祖母の声が沈んだ。

ちょうどあのがおらなくなるい肝臓の病気で倒れ、移植しか助かるはないと言われとったんです。

けどごの通り、そんな普通のせるわけがない。

その言葉はのように裕を打ち抜き、全の血が急速にえていく。

正隆が族を守るために融トラブルという獄でもがいていた。まさにその同じ期に、母・千子もまた夫にすら打ちけられないまま、かつてしたの命を救うためにたった策に奔していたのだ。

の老婆が目撃した涙は、の危を嘆く涙であると同に、の届かない所でに向かっているう、引き裂かれるようなしみの涙でもあった。

「柿の葉に真実を包む」。この言葉の恐ろしくもしいに、裕は打ちのめされた。

あれは葉の逃計画の無事を祈ると同に、幼馴染みとの、救えなかった命へのい、その全てを永に封じ込めるための母の儀式だったのだ。

あの柿の葉寿司の部は、きっと最の別れの品として彼の元へ届けられたに違いない。

母が「守る」といった対象は族だけではなかった。

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そのには、決して消すことのできないもう切ながいた。

は母の孤独を像し、胸が張り裂けるような痛みに襲われた。

夫の危りながら、過の個いとの板挟みで、どれほど自分を責め、夜も眠れぬほど苦しんだことだろう。

しかし、父のトラブルがより刻化し、での逃が決まった、彼女は自の悩みを諦めざるを得なかった。

する族との絆を守るための選択であると同に、い続けたとの永の決別をしていた。

もう度写真に目をやる。自然に張りつめた母の笑顔。その隣では屈託のない子供たち。そしてに半分だけ隠れた見らぬ男の黒い

それは別れのに、彼のだけは消してしまわねばならないと千子が自ら、その姿が完全に写らぬよう配慮した結果だったのかもしれない。

この写真は千子が幼馴染みに最の別れを告げ、彼の未来を祈ったしい記憶の断片だったのだ。

のある犯などどこにもいなかった。ただ複数のの善、そしてつの幸が、平成初期という代の混乱ので偶然にも点で交差してしまっただけなのだ。

そのしい偶然の連鎖こそが、この物語の最の、そして最も切ないトリックだった。

の頬を伝う涙はもはやらぎやを失い、ただひたすらに、母というの女性が背負ったあまりにも巨な孤独としみに対して流されていた。

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全ての謎が解けた、裕に残ったのは堵でも達成でもなく、ただどうしようもないほどのというへのおしさと運命のしさだった。

父の器用な、母の引き裂かれた、そして全てを背負った葉の覚悟。それぞれの正義とが複雑に絡みい、25 というをかけてようやくつの物語として収束した。

もう、こので探すべきものは何もなかった。

その夜、裕は蜂の空き眠れぬ夜を過ごした。

窓のからは夜に揺れる々の葉音と、くで鳴く虫の声が聞こえるだけ。

25 が止まっていたこので、失踪したの息遣い、彼らの無、そして彼らの祈りを肌でじていた。

畳にゴロリと横になると、古いイの匂いが議と裕を落ち着かせた。

それは血のつながりがもたらす根源らぎなのかもしれない。

の空がみ始める頃、裕は静かに起きがるとた。

向かったのは神神社の鳥居の向こうにそびえるだった。

太古の神が眠るは、夜の静寂と神聖な空気に包まれている。

の麓にある展望の良い所につと、とまだ眠りのにある桜井の並が見渡せた。

やがての稜線から柔らかな黄が放たれ、夜のを払いのけ、世界に命のを取り戻していく。

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