"柿の葉の封印" 第2話
裕はまず額にも入っていない剥きしの写真をに取った。
平成初期特のしっぽい沢のある印画だ。
そこに写っていたのは紛れもなく失踪した蜂の。
このの柿のが背景に映り込んでいる。
父はし窮屈そうに背を丸め、ぎこちない笑みを浮かべている。
当学だった兄弟は屈託のない笑顔で父の元にはしゃぎつくように寄り添っている。
そしてその横で静かに微笑む母。
きれいに結いげた髪、品の良いワンピース。
記憶のの優しい伯母そのものだった。
だが裕は漂うある種の違に気づいた。
それはあまりにも完璧すぎる幸せな族写真の構図だったからかもしれない。
まるで誰かに言われて無理に笑っているかのような、わずかな張りつめが母の元にあるように見える。
そして線を写真の端に移した、裕はさく息をんだ。
柿のの枝のに紛れるように、自然な黒いが映り込んでいる。
の肩か腕の部のように見えなくもないが、撮者のものではない。
らかにフレームのから入り込んだ図せぬ訪問者の気配。
そのが族の完璧な笑顔に穏な亀裂を入れているようだった。
臓のざわめきを抑え、裕は次に写真のにあった封筒へとを伸ばした。
広告
宛名はかれていない。
質なを使った封筒は湿気でし波打ち、表面にさな茶いシミができていた。
封は綺麗に切られている。
から現れたのは折りたたまれたにかれた。
流れるような文字は千子のものだと直で分かった。
彼女は、跡から性をじさせるものの、よく見ると所々で力が入りすぎたかのようにインクが滲み、線が細かく震えていた。
しかしその内容に目を通した裕の表は、見る見るうちに困惑に変わっていった。
ここに綴られていたのは族へのやい、失踪の理由を説するような言葉ではなかった。
柿の葉に真実を包む。
泣く子供は鬼にさらわれる。
を向いてはいけない。
決してそれはというよりは、むしろな指示か、あるいは誰にも解読されることを望まない記号の羅列だった。
柿の葉とはの蛇伝説にちなんだだろうか。
柿の葉はこのの名産である柿の葉寿司を連させるが、それに真実を包むとはどういうなのか。
泣く子供の文に至っては、まるで古いわらべのようで気ですらあった。
これは精神を病んだがき殴った妄なのだろうか。
いや、この跡はの千子のものとしては、乱れたのものとは到底えなかった。
広告
むしろ極度の緊張と恐怖ので必に理性を保ちながら何かを伝えようとしている。
そんな切迫したいが文字のから滲みている。
裕はもう度穏な族写真に目をやった。
張りつめた笑顔の千子と、謎めいた言葉をき残した千子。
つの像がので結びつかない。
そしてあの気な。
「神隠しだよ」と誰もが単純な物語で片付けようとした 25 のあの、その裏側には像もつかないほどく暗い秘密が隠されている。
裕はそう確信せざるを得なかった。
このは母方の伯母である千子が 25 のを超えて自分に託した、解かねばならない謎なのだ。
にしたと写真がただの遺品ではなく、解きかすべき謎であると確信した裕のはかった。
翌、彼は 25 の失踪について何かる者はいないか、を歩いて回ることにした。
の麓に点する集落は、がゆっくりと流れている。
田んぼの畦でをむしる老婆、畑の入れをする老。
裕は当たり障りのない常の挨拶から話を切りした。
「こんにちは。蜂の親族ですが、し昔のお話を伺いたいのですが」
しかし裕が「蜂」という名をにした途端、それまで穏やかだったたちの表が瞬で凍りつくのを彼はっきりとじ取った。
作業のを止め、裕の顔をじっと見るその目には好奇ではなく、鋭い警戒と拒絶のが浮かんでいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第7話
足柄サービスエリア失踪事件
1991 年春、東名高速足柄 SA で起きた未解決だった悲劇。 大阪へ新婚旅行に向かう途中、「トイレへ行く」と言った妻が跡形もなく消えた。 夫は毎月現場を訪ね、テレビの人探し番組にも出演し、私立探偵まで雇い 11 年待ち続けた。 時が流れ老朽化した SA の改修工事で、ロッカーの隙間から古い財布が出土。 進化した科学捜査が財布から犯人の指紋を検出し、長年隠されていた殺人の事実が白日の下に晒される。 一方的な執着は愛ではない、拒絶を受け入れられない歪んだ欲望が一人の女性の人生を奪った実話。真相|遺體発見|行方不明1.1萬字5 17 -
完結第11話
雪に閉ざされた 6 人の高校山岳部
「5 人が帰って来ないんだ…」 一人テントで待ち続けた少年の叫びが吹雪に飲まれる。 計画書を偽り、顧問の許可なしで冬山へ踏み込んだ 6 人の高校生。 予期せぬホワイトアウト、装備不足、分断された仲間たち。 凍てつく岩木山で繰り広げられた、冷たく残酷な 6 人の冬山物語。 生き残った二人が一生抱え続ける後悔と、4 人の少年たちの最後の足跡。 60 年経った今も遺族が山を見上げて涙する、実録山岳遭難ノンフィクション。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.7萬字5 11 -
完結第12話
世田谷一家殺害事件:隠された真実
昭和から平成を跨ぎ、25 年も国民の心に重くのしかかった世田谷一家惨殺事件。 長年流れていた外国人犯・国際組織の説は、すべて犯人が仕掛けた壮大な罠だった。 今回、長年閉ざされていた目撃証言、パソコンに残る夫婦の秘密相談記録、最新 DNA 鑑定の結果が一斉に明らかに。 地域で穏やかな人物として知られた隣人が、なぜ一家四人を惨殺するに至ったのか。 先祖から背負わされた重い十字架、古き因縁、一家が踏み込んでしまった禁忌の領域 —— 邸宅の壁に刻まれた 25 年分の悲しみと真実、一語一句逃さずお伝えします。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.8萬字5 43 -
完結第8話
214号室の沈黙
1999年、名古屋の古いホテルで夜勤をしていた客室係・高橋ゆり子が、勤務終了前に忽然と姿を消した。 私物は更衣室に残されたまま。清掃カートも廊下に置かれたまま。警察は周辺の公園や空き地、廃墟まで捜索したが、彼女の行方は分からなかった。 最後に映っていたのは、2階の廊下で同僚の設備係と短く言葉を交わす姿。 その後、ゆり子は214号室へ向かい、二度とカメラに映ることはなかった。 やがてホテルでは、ある部屋に泊まった客から奇妙な苦情が相次ぐ。シャワーを浴びた後、皮膚に異変が出るというのだ。 水道の異常を調べるうち、配管業者がたどり着いたのは、屋上にある古い貯水槽だった。 水槽の底に残されていた青い布、髪の毛、そして小さな痕跡。 誰も探そうとしなかった場所に、失踪した清掃婦の最後の真実が沈んでいた――。ミステリー|行方不明1.2萬字5 151