"松の根の告発" 第1話
2023の、都内の級宅に建っていた10億円の豪邸で、解体事がわれていた。
の音が朝から響き、根は剥がされ、壁は崩され、かつて客を迎えていた広いリビングも瓦礫のに変わっていた。最に残されたのは、庭の隅につきな松のだった。
ショベルカーのアームが松の根元をつかみ、面ごと持ちげると、黒いがきくえぐれた。作業員たちはのを見ろしたが、そこには普通の庭では考えられないほど分いコンクリートの層があった。
バケットの刃が何度もコンクリートを砕く。
その、瓦礫のから鈍い属音をてて、さな塊が転がり落ちた。
くにいた作業員が腰をかがめ、袋をしたでそれを拾いげた。と錆に覆われた塊には、何にもビニールが巻かれていた。側は黄く変していたが、内側まではが染み込んでいないようだった。
作業員がビニール越しに目を凝らす。
それは、古い2つ折りの携帯話だった。
誰かがく、しかもコンクリートのに隠したものだった。
そのすぐそばから、やがて警察が呼ばれることになる。さらに掘りめられたコンクリートのから、15に忽然と姿を消した70代の母親と40代の女が、互いを抱きしめうような姿で発見されたからだった。
広告
2はどこかくへ消えたのではなかった。
この15、自分たちのの庭のたいコンクリートのに埋められていたのだった。
その始まりは、2008714の夜にさかのぼる。
梅のが関方を叩きつけるようにっていた。級宅の奥まったき止まりに、10億円の豪邸が黒いのようにっていた。普段ならの両脇でるはずのセンサー照は消え、鉄だけが半分いたままに打たれていた。
翌朝、商の組で定を営む田総が交番へ駆け込んだ。
彼は震える声で言った。
「久子さんと、2続けて連絡が取れないんです」
久子はのものも、朝5には商へてきて、うどんの鍋にを入れるだった。30以同じで商売を続けてきた商主たちので、彼女が1でも顔をさないことなどなかった。
通報を受け、刑事2と警察官が豪邸へ向かった。
先にったのは、ベテラン刑事の寺誠警部補だった。いた鉄のにを踏み入れた瞬、を刺したのは、豪に濡れたの匂いだけだった。
玄関の扉に鍵はかかっていなかった。
寺が袋をはめたでノブを回すと、な欅の扉がい音をてていた。
リビングに入った刑事たちの線が最初に止まったのは、シャンデリアの真だった。
広告
には、誕プレゼントの箱が横倒しになっていた。分い透の包装フィルムは、誰かが慌てて引き裂いたように破れ、周囲に散らばっている。
寺は膝をつき、包装の切れ端を拾いげた。
切りはハサミではない。両で力任せに裂いた跡だった。
台所へ向かった輩刑事が声をげた。
「警部補、こちらを見てください」
ステンレスの鍋には、すまし汁がい油膜を浮かべたままえ固まっていた。は消えている。卓には半分だけ切られたねぎがまな板のに残り、包丁はその脇にきちんと置かれていた。
まるで、誰かが料理の途で突然を止めたようだった。
寝の布団は乱れていなかった。サイドテーブルには鏡ケースと血圧の薬が置かれていた。久子が毎晩欠かさずんでいた薬がそのまま残っているということは、なくともその夜、彼女はこの部で眠っていない。
庫のには、通帳の束、のネックレス、現の束がそのまま残っていた。部から入った盗であれば、真っ先にを伸ばすはずのものばかりだった。
しかし、何ひとつ持ちられていない。
科学捜査班が到着し、リビングのや壁に薬品を吹きつけた。血痕があれば反応がるはずだったが、どこにもは現れなかった。のタイルの目まで綿棒でこすり、具のまで調べたが、争った痕跡は見つからなかった。
へた寺は、豪邸を見張っていた3台の防犯カメラを確認した。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
消えた水色の妹
2001年、姉の結婚式の日に突然姿を消した24歳の看護師・小百合。 財布も携帯電話も残したまま、非常口へ向かった彼女の最後の姿だけが、防犯カメラに記録されていた。 家族は7年間、必死に彼女を捜し続けた。 そして夫となった男も、誰よりも協力的な家族として小百合を探し続けていた。 しかし、引っ越しを前に開けられたベランダの作業部屋で見つかったのは、誰も予想しなかった7年前の痕跡だった。 壁の中に隠されていた一本の携帯電話と、残されたわずかな言葉。 あの日、結婚式の裏側で何が起きていたのか。 そして、最も信頼されていた人物が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 622 -
完結第10話
トウモロコシ畑に消えた母
1999年、長野の静かな村で起きた不可解な事件。 朝のトウモロコシ畑で発見された農家の女性は、周囲から「親孝行な婿」に守られていたはずだった。 しかし、現場に残された小さな痕跡と、15年後に開かれた古い証拠が、誰も疑わなかった男の裏の顔を暴いていく。 家族を支える優しい婿の仮面の裏に隠されていたものとは――。 長い年月を経て、静かな村に埋もれていた真実が、ついに明らかになる。ミステリー|行方不明1.5萬字5 210 -
完結第11話
最後の定期券
30年間、毎朝駅へ向かい続けた父。 定年後、突然姿を消した彼の行き先は、30年前に消えた小さな駅だった。 娘が父の部屋で見つけた一枚の古い切符と、「必ず迎えに行く」という謎の言葉。そこから、父が誰にも話さなかった過去が少しずつ明らかになっていく。 父が30年間守り続けていた約束とは何だったのか。 そして、あの日駅から消えた少女の行方は――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 460 -
完結第11話
飛騨の農家に消えた嫁
1995年、岐阜県飛騨地方の山あいにある和牛農家へ嫁いだ27歳のゆき子。 よく働き、誰にも逆らわず、慣れない村で必死に暮らしていた彼女は、ある冬の日、牛舎へ向かったまま姿を消した。片方だけ残された長靴。消えた青いジャンパー。そして、家族が語った「自分から出て行った」という言葉。 警察は深く調べることなく、失踪は家出として処理された。 それから8年。村では何事もなかったように季節が巡り、義父の幻蔵は“誠実な畜産農家”として周囲から慕われ続けていた。 しかし、牛舎裏の堆肥の山から見つかった人骨が、止まっていた時間を動かす。 長年誰も近づけなかった壺のそば。夜ごと繰り返された寝言。真冬の洗車場で執拗に洗われた軽トラック。 誰も探さなかった若妻は、8年間どこにいたのか。 そして、家の体面を守るために義父が隠し続けたものとは――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 316 -
完結第11話
6秒の着信
2019年10月、紅葉の雪岳山を訪れた若い恋人、ジフンとアリン。 翌年に結婚を控えた2人は、記念写真を残すために山へ向かった。登山口の防犯カメラには、笑い合いながら歩く幸せそうな姿が映っていた。 しかし午後3時過ぎ、2人は分岐点でなぜか正反対の道へ進む。 そして、そのまま山の中から忽然と姿を消した。 大規模な捜索が行われても、足跡も荷物も見つからない。事故なのか、失踪なのか、それとも誰かが2人を誘い込んだのか。真相が分からないまま、3年の月日が流れていく。 やがて2022年、登山道近くの泥の中から、アリンの携帯電話が発見される。 そこに残されていたのは、最後に撮られた1枚の写真と、わずか6秒間の通話記録。 「そのまま来てください。彼も着きました」 その短すぎる声が、3年間“山で消えた”と思われていた恋人たちの、本当の行き先を暴き始める――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 322