"十六年目の雪足跡" 第3話
また、学業や庭の期待から逃げたのではないかという推測もあった。
噂はしずつ広がり、事実と憶測の境界は曖昧になっていった。
それでも恵は、ち止まらなかった。
失踪から3週が過ぎた頃、は賃を払い続けることが難しくなり、鹿児島内の実へ戻った。
方、恵はさつまに残ることを決めた。さなアパートを借り、午は隣の聞き込み、午は役所や図館でビラ作り、夜は警察や県の捜査関への連絡に充てた。
眠は削られ、事もまともに取れなくなっていった。それでも、やめることはできなかった。
町には、から見えにくい力学があった。
代々を守ってきた々と、しく移りんできた々のには、言葉にしない距がある。は3んでもから来たと見られていた。彩佳もまた、護師として都部へていく将来を見据えていたことで、町をれると受け止められていた。
そうした見方が、失踪の解釈にも響していた。
古くからの民のには、に疑いの目を向ける者もいた。理由は証拠ではなく、彼の雰囲気、過の活態度、経済な定さだった。
「なんとなく信用できない」
そんな曖昧な言葉が、いつのにか疑いとして広がっていった。
方で、をかばう声もあった。
広告
教会に通う々や、彼の仕事ぶりをるたちは、彼が齢者を助けたり、困っているにを貸す姿を見ていた。
「あのがそんなことをするはずがない」
そうく言うもいた。
町の喫茶や堂では、見の衝突が絶えなかった。あるでは議論が過しすぎたため、「彩佳さんの話は禁止」と張りがされたほどだった。
警察のきにも満が募った。
森本刑事は聞き込みやへの再聴取を続けていたが、証拠らしい証拠はてこなかった。県警本部からの応援もあったが、期で終わり、本格な支援体制にはならなかった。
恵は何度も捜査範囲の拡やメディアへの報提供を求めた。だが森本は、捜査に響がる能性があるとして慎だった。
事件の数週、彩佳が何かにをじていたという証言もてきた。
護学の同級は、授業のに彩佳が周囲を見回すような仕をしていたと話した。誰かと話すにく答えるだけのことが増えていたともいう。
実習先の病院では、患者報の取り扱いや報告義務について、通常の学があまり踏み込まないような質問を繰り返していたことが記録に残っていた。
また、町内の商の駐で、誰かと刻そうに話している姿を見たという証言もあった。だが相の顔をはっきり覚えている者はいなかった。
広告
事件からおよそ1か、県内のテレビ局がこの失踪事件を特集するため、取材班を町へ送った。
しかし町の々はを閉ざした。
商主は取材を断り、所の々も「何もらない」と繰り返すだけだった。番組では、町が部に対して壁を作っていると表現された。
放送、町の空気はさらにくなった。
表向きは平穏だった。だが々は以より互いを警戒するようになり、特にしく移りんできた庭やにく根差していない々は、ない噂の対象になった。
恵の部には、図、メモ、証言の記録が積みなっていった。
それらの断片はまだ1つの線にはならなかった。
それでも恵のには、確信にい覚が芽えていた。
この町には、何かが隠されている。
その何かを突き止めるまで、諦めるつもりはなかった。
警察は事件発直、現の状況を詳細に記録していた。
森彩佳のは、築数の経った平だった。さつまの宅では珍しくない造りで、玄関も裏も、特別変わった構造ではない。
だが、その普通のが、捜査員たちを悩ませ続けた。
玄関は施錠され、ドア枠や錠に破損はなかった。裏も同様にチェーンロックがかかり、窓はすべて内側から閉じられていた。部から侵入した形跡は見つからなかった。
現で最も注目されたのは、の周囲に残された跡だった。
田の跡は、自宅とのを何度も往復していた。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
消えた水色の妹
2001年、姉の結婚式の日に突然姿を消した24歳の看護師・小百合。 財布も携帯電話も残したまま、非常口へ向かった彼女の最後の姿だけが、防犯カメラに記録されていた。 家族は7年間、必死に彼女を捜し続けた。 そして夫となった男も、誰よりも協力的な家族として小百合を探し続けていた。 しかし、引っ越しを前に開けられたベランダの作業部屋で見つかったのは、誰も予想しなかった7年前の痕跡だった。 壁の中に隠されていた一本の携帯電話と、残されたわずかな言葉。 あの日、結婚式の裏側で何が起きていたのか。 そして、最も信頼されていた人物が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 567 -
完結第10話
トウモロコシ畑に消えた母
1999年、長野の静かな村で起きた不可解な事件。 朝のトウモロコシ畑で発見された農家の女性は、周囲から「親孝行な婿」に守られていたはずだった。 しかし、現場に残された小さな痕跡と、15年後に開かれた古い証拠が、誰も疑わなかった男の裏の顔を暴いていく。 家族を支える優しい婿の仮面の裏に隠されていたものとは――。 長い年月を経て、静かな村に埋もれていた真実が、ついに明らかになる。ミステリー|行方不明1.5萬字5 200 -
完結第11話
最後の定期券
30年間、毎朝駅へ向かい続けた父。 定年後、突然姿を消した彼の行き先は、30年前に消えた小さな駅だった。 娘が父の部屋で見つけた一枚の古い切符と、「必ず迎えに行く」という謎の言葉。そこから、父が誰にも話さなかった過去が少しずつ明らかになっていく。 父が30年間守り続けていた約束とは何だったのか。 そして、あの日駅から消えた少女の行方は――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 447 -
完結第11話
飛騨の農家に消えた嫁
1995年、岐阜県飛騨地方の山あいにある和牛農家へ嫁いだ27歳のゆき子。 よく働き、誰にも逆らわず、慣れない村で必死に暮らしていた彼女は、ある冬の日、牛舎へ向かったまま姿を消した。片方だけ残された長靴。消えた青いジャンパー。そして、家族が語った「自分から出て行った」という言葉。 警察は深く調べることなく、失踪は家出として処理された。 それから8年。村では何事もなかったように季節が巡り、義父の幻蔵は“誠実な畜産農家”として周囲から慕われ続けていた。 しかし、牛舎裏の堆肥の山から見つかった人骨が、止まっていた時間を動かす。 長年誰も近づけなかった壺のそば。夜ごと繰り返された寝言。真冬の洗車場で執拗に洗われた軽トラック。 誰も探さなかった若妻は、8年間どこにいたのか。 そして、家の体面を守るために義父が隠し続けたものとは――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 306 -
完結第11話
6秒の着信
2019年10月、紅葉の雪岳山を訪れた若い恋人、ジフンとアリン。 翌年に結婚を控えた2人は、記念写真を残すために山へ向かった。登山口の防犯カメラには、笑い合いながら歩く幸せそうな姿が映っていた。 しかし午後3時過ぎ、2人は分岐点でなぜか正反対の道へ進む。 そして、そのまま山の中から忽然と姿を消した。 大規模な捜索が行われても、足跡も荷物も見つからない。事故なのか、失踪なのか、それとも誰かが2人を誘い込んだのか。真相が分からないまま、3年の月日が流れていく。 やがて2022年、登山道近くの泥の中から、アリンの携帯電話が発見される。 そこに残されていたのは、最後に撮られた1枚の写真と、わずか6秒間の通話記録。 「そのまま来てください。彼も着きました」 その短すぎる声が、3年間“山で消えた”と思われていた恋人たちの、本当の行き先を暴き始める――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 311