みかん小説
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"双子の消えた春" 第9話

「古い記録で息子さんたちのことをりました。察しが悪いとはうのですが、お話を聞かせていただけませんか?いえ、捜査というわけではないのです。ただお線げさせていただけたらといまして」

「お線」という言葉に子さんの目が緩みました。これまでもの、誰も双子のことに触れてはくれませんでした。それは町の優しさであると夫婦も分かってはいましたけれども、その方で誰もが双子をいないものとして扱う、その静かな寂しさが夫婦にはにたまらなく切なくもあったのです。それなのにこの若いお巡りさんは、何もらないはずのよそのから来た青が、わざわざ双子のために線げに来てくれるという。子さんは坂巡査をへ招き入れました。

さな仏壇には双子の写真が飾られていましたけれども、その仏壇には位牌はまだ置かれていない。その位牌のない仏壇こそが、夫婦のにわたる祈りの何よりの証でした。んだとは認めない。いつかきて帰ってくる。信じ続けてきたの痛いほどの願いがそこにはこもっていたのです。坂巡査はその仏壇のに座り、静かにわせました。

それからというもの、坂巡査は度々夫婦の元を尋ねるようになりました。

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押し付けがましいことは切しませんでした。ただ訪ねていっては子さんが入れてくれるお茶をみ、世話をし、には子さんの愚痴や話に静かにを傾ける。それだけでした。通いをねるうちに夫婦はしずついていきました。子さんは双子の幼い頃の話を坂巡査に楽しそうに語って聞かせるようになりました。

也が川で溺れかけたこと、達也が初めて自転に乗れたのこと、が揃って夜遅くまで勉したこと。語りながら子さんは何度も泣きました。そうやって双子のことを誰かに語る。それはぶりに子さんに訪れた、さやかなけれがえのないでした。

そして何度目かの訪問のあるのことでした。そのは珍しくる午でした。窓のにはがしとしととっていました。町のの桜はに打たれてびらをぽつりぽつりと散らしていました。いつものようにお茶をみながら双子の話をしていた、それまで子さんの傍らでほとんどかなかった父の信夫さんが、い声でこう呟いたのです。「坂さん」

子さんが驚いて夫の顔を見ました。信夫さんは湯呑みを両で包んだまま、じっとその茶を見つめていました。くなった眉のの目が、何かいものを見るように揺れていました。

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「私はずっと、あなた方に隠していたことがあるんです」

巡査はわず背筋を伸ばしました。部がとても静まり返りました。聞こえるのは窓を打つの音ばかりです。信夫さんは黙っていました。何かを言おうか言うまいか、もの胸の奥に固く封じ込めてきたものを今こそ曝していいものか、その葛藤が髪の老の震える肩に滲みていました。そしてついに信夫さんは絞りすようにこう言ったのです。

「あの子たちに、也と達也には、きく息をついて、もう兄がいたんです」

巡査は息をみました。双子にもう兄がいた?子さんもまた目を見いて、夫の横顔を見つめていました。その顔には驚きと、それから連れ添った夫のついに語りした秘密への複雑ないが入り混じっていました。子さんもまたその兄のっていたのですけれども、夫婦のでさえそれは固くにしてはならない約束ごとだったのでした。

信夫さんはぽつりぽつりと語り始めました。それはずっと昔、信夫さんがまだ若かった頃の話でした。子さんと緒になるのこと、信夫さんにはった女性がいたのだそうですけれども、様々な事があっては別れることになりました。

そしてその別れたに、女性のお腹には信夫さんの子が宿っていたのです。

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