"双子の消えた春" 第4話
母の子さんはその台所で洗い物をしていました。鳴り止まない話にを拭きながらた子さんは相の名乗りを聞いて最初はただ拍子抜けしていたと言います。息子たちの宿のさん。なぜそのがわざわざ話を?けれどもおばあさんのため息がちな声を聞いているうちに、子さんの顔からすっと血の気が引いていきました。濡れたで握っていた布巾がポツリとに落ちました。
「が帰ってこない」その声は自分でも驚くほど掠れていたそうです。窓のでは町のの桜が野でもようやく咲き始めたところでした。柔らかなのが吹く度、桃のびらがハラハラとっていました。うららかなよくれたの昼がり。その穏やかな景ので子さんはただ雑巾を握りしめたままち尽くすことしかできませんでした。
こうして野のさな町が誇った、よくできた双子の兄弟が入学式の朝に揃って姿を消した。にいにわたって町の々を悩ませ、警察を悩ませ、そして何より両親の胸を苦しめ続けることになるつの来事は、この何でもないはずのよくれたの朝から静かに始まったのでした。
母の子さんかららせを受けた父の信夫さんはそののうちに仕事を放りし、夜の列にび乗って京へと向かいました。
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野から京までのいい夜でした。ガタンゴトンと揺れる内で信夫さんはほとんど眠ることができませんでした。窓のを流れていく暗い々、折通り過ぎるさな駅のかり。そのかりがつ消えるたびに胸ののがじわりじわりと膨らんでいくようでした。
「何かの違いに決まっている」信夫さんは何度も自分にそう言い聞かせました。「あのが親に黙ってどこかへ消えるなどあるはずがない。きっとちょっとしたき違いだ。京に着いたらけろりとした顔で『父さん、配しすぎだよ』と双子が笑って迎えてくれるに違いない」
けれども夜がけて田馬の宿にたどり着いた、そこに双子の姿はありませんでした。のおばあさんが青ざめた顔で信夫さんを迎えました。そしてに案内されるまま、信夫さんは息子たちの部にを踏み入れました。階のさな部です。布団はきちんと畳まれていました。机のには品の教科が買ってきたのままに積みねられています。壁にはまだ何も貼られていません。引っ越してきて数の、これから暮らしを作っていこうというその途の部でした。
信夫さんはその部にち尽くしたままいくことができませんでした。
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息子たちの匂いがまだそこには残っていましたけれども、肝の息子たちはどこにもいないのです。
そののうちに信夫さんは管轄の警察署へ方の届けをしました。「双子の息子が入学式の朝にていったまま帰ってこないんです」窓で信夫さんは声を絞りすようにしてそう訴えましたけれども、若い警察官の反応は信夫さんが期待していたものとはし違っていました。
「失礼ですが、お子さんはおいくつでしょうか?」「になったばかりです」「成ではありますが、もうと言ってもいい頃ですね。学に入ったばかりでしい環境に馴染めずにふらっとどこかへってしまうというのは実はよくあることでして」警察官は決してたいではありませんでした。ただの経験からそう判断したのです。
歳の若者が入学式のに姿を消し、荷物はそのまま残っている。これは事件というより若者の気まぐれな失踪、いわゆるの類いではないかと。信夫さんは必に首を振りました。「あの子たちはそんな子じゃないんです。馴染めないとかそんなことで親に黙って消えるような子じゃないんです」
その言葉に嘘はありませんでしたけれども、警察というところは親の確信だけではなかなかきくはいてくれません。
当初この件は事件性のい方としてごく控えめに扱われることになりました。
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