"甘い部屋の72時間" 第2話
ががたがたと震え、目のがくぼやけていきました。
「咲ちゃん……」
その11分、午83分。
秩父のアパート2階で、渡辺啓介は119番通報をしました。
「はい、119番です。事ですか、救急ですか」
「救急です。妻が倒れています。識がありません」
「今、患者さんのそばにいますか」
「はい。隣にいます」
「呼吸はしていますか」
「よく分かりません」
「患者さんのくにって確認してください。胸がしているか見てください」
瞬の沈黙がありました。
「かすかにいているようです」
「分かりました。すぐに救急を向かわせます。所を教えてください」
啓介は、落ち着いた声で所を告げました。
その声には、妻が識を失って倒れている夫の混乱はありませんでした。
なくとも、話の記録には、そう残っていました。
午915分。
川えみ子は夫と共に、病院の救急救命に到着しました。
廊をる音が、い壁に響きます。胸が張り裂けそうでした。
「娘は、渡辺咲はどこですか」
護師がえみ子を見て、すぐに案内しました。
「ただいま処置です。あちらの待でお待ちください」
「状態はどうなんですか。何があったんですか」
「担当の医師から、ほど説があります」
えみ子は待の子に崩れるように座りました。膝に力が入りませんでした。
夫が隣に座り、背をさすりました。
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「落ち着け。きっと丈夫だ」
けれど、えみ子ののは真っでした。
咲は健康だったはずです。
202012に交通事故に遭いましたが、きな怪はありませんでした。の運転が怖くなっただけで、常活には問題ないと聞いていました。
8までは話で話もしていました。声はし疲れているようでしたが、病気のようには聞こえませんでした。
なのに、なぜ。
1ほどが過ぎた頃、医師が待へやって来ました。
「ご族の方ですか」
えみ子は弾かれたようにちがりました。
「はい。娘の母です」
医師は言葉を選びながら告げました。
「今、集治療に移しました。状態は極めて刻です」
えみ子は膝から力が抜けていくのをじました。
「どういうことでしょうか」
医師は慎に続けました。
「患者さんは、かなりの期、栄養がきちんと摂取できていなかったようです。脱症状もひどい状態でした。正確な原因はさらに検査が必です。今は最善を尽くしています」
医師はそれ以を語りませんでした。
えみ子はうなだれました。涙がに落ちました。
「咲ちゃん……ごめんね。お母さんが……」
廊の突き当たりに、渡辺啓介がっていました。
えみ子と目がうと、彼はふいと目を伏せました。
その姿を見た瞬、えみ子の胸の奥に、さな、しかし確かな疑いが芽えました。
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同じにんでいて、本当に気づかなかったのだろうか。
その夜、えみ子は娘のの鍵を借り、夫と共に現のアパートへ向かいました。
玄関に歩入った途端、あの烈な甘いりがを突きました。
リビングは片付いていました。
片付きすぎていました。
ソファーのにあった布団はなくなり、テーブルのの物もえられていました。
えみ子は娘の部に入りました。ベッドの横の引きしをけます。
に、さなメモが1枚ありました。
震える文字で、こうかれていました。
「ごめんなさい。らないで」
えみ子はそのメモを握りしめ、そのに座り込みました。
「咲ちゃん、あなたは何に謝っていたの」
窓のには、秩父の夜空が広がっていました。
がたくっていました。
話が鳴ったのは朝の752分。
しかし本当の物語は、それよりずっとから始まっていたのです。
2022910、未。
渡辺咲は識を取り戻すことなく、午423分、集治療で息を引き取りました。
37歳。
誰かの娘であり、妻であった1の女性のが、静かに幕を閉じました。
えみ子は娘のを握りしめ、泣き崩れました。
「咲ちゃん、ごめんね。お母さんがごめんね」
たくなっていくは、もう2度と握り返してはくれませんでした。
葬儀を終えても、族のから1つの疑問が消えることはありませんでした。
体、あので何があったのか。
えみ子は啓介に尋ねました。
「啓介さん、咲は本当に急に倒れたの」
啓介はうつむいたまま答えました。
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