"洞窟に残った少年の声" 第8話
本の最で、子はこう記した。
「完全な正義は、まだ実現していない。けれど、田実は証した。真実はどれほどく埋められても、誰かが守り、誰かが聞き、誰かが伝える限り、必ずを見る」
版、その本はきな反響を呼んだ。
学の授業でも、実の事件が取りげられるようになった。
ある、記館には京から来た学6の子どもたちが訪れた。彼らは実と同じ11歳だった。
普段なら騒がしい頃の子どもたちが、その所では静かに展示を見ていた。
ひとりのが、先に尋ねた。
「先、このお兄さんはどうしてんだの?」
先は膝を折り、子どもたちの目線にわせて答えた。
「悪いたちの秘密を見てしまったの。そして、その真実を記録として残したの。実君は戻ってこられなかったけれど、彼が残した記録のおかげで、真実はらかになったのよ」
別の子が、さな声で言った。
「怖かっただろうね」
「うん。でも、すごく勇敢だったんだね」
子どもたちは実のバッグのでをわせた。
夕方、閉館がづく頃、はいつものように実のにった。
「実、お母さん、もう帰るね。また来るから」
彼女は鞄からを取りし、さな声で読んだ。
「今もたくさんのがあなたに会いに来たわ。あなたと同じ11歳の子どもたちも来て、みんなあなたがどれだけ勇敢だったか話していたわ。
広告
お母さんは、本当に誇らしいです」
読み終えると、はガラスケースにそっとを当てた。
「しているわ、実。遅くなったけれど、お母さんはあなたを見つけた。もう永にれないからね」
夜になり、記館の灯りが落とされた。
洞窟の入には静かなが吹き、々の葉がかすかに揺れていた。
ガラスケースののさなバッグは、暗ので静かに眠っていた。
22、洞窟の奥で真実を守り抜いたバッグ。
そこに残されたの声は、もう度と消されることはなかった。
田実の物語は、ひとつの終わりを迎えた。
しかし、彼が残した問いは、今もき続けている。
真実をった、はそれを語る勇気を持てるのか。
誰も信じてくれない状況で、それでも声を残すことができるのか。
そして、誰かのさな声を聞いた、私たちは背を向けずに向きえるのか。
実は11歳のまま、答えを待っている。
真実は葬ることはできる。
けれど、永に消すことはできない。
田実が残した最の声は、そのことを静かに、しかし確かに証していた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
消えた母の 10 年地下室
1993 年、お盆の帰省途中で姿を消した若い母親―10 年後、地下室で衝撃の真実が明らかに! 隣に住む親切な青年が、彼女を長年地下室に監禁していた悪夢の物語。 幼い息子だけが地下室に隠れた母と遭遇し、守らなければならない秘密を抱える。 夫の不審な観察、祖母の疑念、犯人の焦り… 積もった疑惑がついに決定的な瞬間を迎える。 10 年間の監禁、脅迫、欺瞞が一気に暴かれる衝撃結末。 失われた家族の絆が、長い悪夢を乗り越えて再びつながるまでの全記録。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.0萬字5 222 -
完結第18話
槍ヶ岳の残響 消えた登山家の真実
1998年、北アルプス槍ヶ岳で忽然と姿を消した女性登山家・伊藤さゆり。 警察は長年、遭難事故として処理した。 だが9年後、絶壁の岩隙間に眠っていた一台のカメラが、誰も知らなかった戦慄の真実を暴き出す―― 岩壁に刻まれた山岳会のロゴ、隠された証拠、裏切りと殺意。 埋もれた十年の沈黙が、今、崩れ落ちる。 山岳失踪事件の裏に隠された悪意、決定的な証拠がついに判明!真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.7萬字5 1264 -
完結第9話
SA で消えた妻 17 年目の真実
1993年、高速サービスエリアで跡形もなく消えた妻。 忽然の失踪、残された空の鞄、誰も知らない妻の秘密。 17年間、夫はずっと疑い、恨み、苦しみ続けた—— 「彼女は自分からこの家を捨てた」と。 時が流れ、ついに封印されたバッグが開かれた瞬間、全ての真実がひっくり返った。 消えたのは逃げたからじゃない。 たった一人、夫を守るため、千万の借金と絶望を独りで背負ったからだ。 17年の誤解、17年の孤独、最後に残されたのは泣けるほど深い愛。 本当の愛とは、共に荷物を分かち合うこと—— 心に刺さる感動の実話ベース物語、必見。真相|行方不明1.3萬字5 128 -
完結第6話
十年目の地下街
1985年、東京・品川区。 「ゲーセン行ってくる」 そう言って家を出た12歳の息子・実は、その日を境に忽然と姿を消した。 ゲームセンターを出たのは午後6時頃。家までは歩いて10分もかからない距離だった。だが、実は帰ってこなかった。母・良子は警察に届け出を出し、ビラを配り、全国から寄せられる目撃情報を追い続けた。 しかし、どれも空振りに終わる。 1年、3年、5年――。夫婦関係は壊れ、周囲も諦める中、良子だけは息子の生存を信じ続けた。 そして失踪から10年後の1995年。 銀座の地下街で、良子は床に座る若い物乞いの男に目を奪われる。痩せ細った顔、怯えた瞳、そして失われた足。 その男は、10年前に消えた息子・実だった。 「お母さん……今、監視されてる」 再会の喜びも束の間、実の口から告げられた言葉が、10年間隠されていた恐ろしい真相への扉を開いていく――。ミステリー|行方不明9.2千字5 5 -
完結第5話
三十年の春の残響
1992 年、港北ニュータウンの同窓会へ胸を躍らせて出かけた 42 歳の主婦・鈴木じ子。その日を最後に彼女は忽然と姿を消し、警察は安易に家出と片付けて捜査を打ち切った。三十一年間、妻の帰りを待ち続けた夫・高幸は、誰もが信じていた親切な同級生の裏に隠れた醜悪な殺人と長きに渡る偽りを、一人で掘り起こしていく。祠の下に埋められた真実、時間が経っても消えない愛と裏切りの衝撃事件。遺體発見|行方不明7.9千字5 386 -
完結第7話
三つの 5 歳、路地に埋もれた二十年
名古屋の路地に埋もれた、20年の沈黙。 1992年真冬の夜、5歳の三つ子兄弟が忽然と姿を消した。 寒さが刺す暗い路地、閉まるはずのない玄関の隙間、 証人は次々と供述を翻し、手がかりは現れては消える。 最も孫を愛していたはずの祖母、 沈黙を貫く父、直感で全てを悟った母。 町の誰もが何かを知っていた。 ただ、誰も口にしなかった。 20年後、重機が土を掘り起こした瞬間、 地中に眠っていた小さな真実が、ついに目を覚ます。 愛が狂った時、悲劇は最も静かに訪れる。 未解決に見えた昭和最後の怪事件、 隠された家族の闇と、20年間の偽りの沈黙を紐解く。裡切られた|裡の顔|遺體発見|行方不明1.1萬字5 307