みかん小説
本棚

"洞窟に残った少年の声" 第2話

プロデューサーはたい表のまま続けた。

「むやみに騒げば、子どもに悪い響を与えるかもしれません」

「悪い響?」

佐藤恵は呆然とした。

実が消えた。鳴が聞こえた。それなのに、彼らはまるで撮トラブルを処理するような顔をしていた。

その、佐藤恵は直した。

このたちは何かを隠している。

3聞にさな記事が載った。

「子役・田実、撮

それだけだった。

記事は驚くほど淡々としていた。ひとりの子どもが消えたことへの切迫も、捜索を呼びかけるもなかった。まるでしたことではないかのように、面の隅に押し込まれていた。

佐藤恵はその聞を握りしめ、に崩れ落ちた。

だが彼女はまだらなかった。

そのの撮には、公式の撮チーム以の誰かがいたことを。

、スーツ姿の男が現れ、鈴監督と激しく言い争っていたことを。

「この件はこれで終わりです。すべてのテープを破棄してください」

その男はたく言い、鈴監督に封筒を渡した。

監督は封筒を受け取ったが、は震えていた。

「子どもにすなんて、私は聞いていない」

監督の声は掠れていた。

男はしも表を変えなかった。

「監督を終わらせたくなければ、言われた通りにしてください」

その夜から、現にいた者たちは沈黙した。

広告

助監督はへ移り、何かのスタッフは業界をった。鈴監督は3か、群馬県ので交通事故に遭い、くなった。単独事故として処理され、く調べられることはなかった。

実の名は、しずつ々の記憶かられていった。

そして22が流れた。

2009、奥秩父ので、ひとりの質学者が学術ドキュメンタリーのために洞窟を調査していた。

狭い岩の隙をライトで照らした、彼は古いバッグを見つけた。にまみれてはいたが、洞窟内の温度と湿度が定だったため、驚くほど状態は保たれていた。

バッグをけた質学者は息をのんだ。

には、さな名札が縫いつけられていた。

「田実」

さらに奥には、型のテープレコーダーとカセットテープが入っていた。

すると、かすれたの声が流れた。

「僕は、彼らが何をしたか見た。絶対に忘れない」

それは、震えるような声だった。

その直、何かにを塞がれたようなうめき声が入り、鳴の、音は突然途切れた。

質学者は全に鳥肌がった。

彼はすぐにバッグを警察へ届けた。しかし、22の失踪事件を覚えている警察官はほとんどいなかった。類は古く、事件は過の未解決案件として眠っていた。

やがてそのバッグとテープの報は、ひとりの女性記者のに入る。

広告

彼女の名は子。

この発見がを揺るがすことになるとは、そのの彼女自もまだらなかった。

2009915京・宿の古びたワンルームで、子はまた1通の採用メールを受け取っていた。

38歳の彼女は、かつてテレビ局の調査報チームで働いていた。粘りい取材と鋭い点でられた記者だったが、5企業の正を追うで圧力に屈せず、結局職を失った。

それからは、週刊誌やさなネットメディアを転々としながら、かろうじて活をつないでいた。

机のには、未払いの請求が積みがっていた。賃、気代、携帯料。どれも支払期限を過ぎていた。

め切ったコーヒーを持ちげた、携帯話が鳴った。

子姉さん、僕だよ。裕だ」

斎藤裕代の同級だった。質を学び、今は教育関係の仕事をしながら、折ドキュメンタリー制作にも関わっていた。

「どうしたの。声がおかしいよ」

「田実っていう子役、覚えてる?1987に失踪した」

その名を聞いた瞬子の指が止まった。

実。

22の記憶が、胸の奥から気によみがえった。

15歳だった子は、ドラマ『』にエキストラとして参加していた。実と同じ現にいた数の記憶は、今もぼんやりと残っていた。

「どうして急にその話を?」

「今、奥秩父の洞窟で、その子のバッグを見つけたんだ。

にテープレコーダーが入っていて……」

は震える声で、発見したバッグとテープの内容を説した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: