"十年目の地下街" 第5話
「100%確実です。私が産んで育てた子です。違えるはずがありません」
良子は実の子どもの頃の写真を何枚も持参していた。で見た若い男の特徴も、黒い子の男の様子も、能な限り詳しく説した。
「がなかったと」
「はい。膝からが両方ともありませんでした。誰かに傷つけられたように見えました」
佐藤の表が険しくなった。
もし本当に10方だったが、体を傷つけられ、制に物乞いをさせられていたのだとすれば、な凶悪事件だった。
佐藤は直ちに座周辺の防犯カメラ映像の収集を指示した。1990代半ばになり、主な入りにはカメラが設置され始めていた。
翌の午、映像の分析結果がた。
良子が話した帯、膝からのない若い男がに現れる様子が記録されていた。そして、そのろを追うように、黒い子の男が映っていた。
捜査員が画面を指差した。
「ここです。良子さんと接触した直、黒い子の男が急いでづいています」
さらに10分、若い男が子に乗せられ、をていく様子も確認された。付のカメラには、黒いワゴンのナンバーも映っていた。
「品川58、た4587」
佐藤はすぐに両照会を命じた。
所者は正雄、45歳。所は田区だった。
しかし、捜査員がその所へ向かうと、すでに引っ越しただった。
広告
はげな顔で証言した。
「怪しい連でしたよ。昼はほとんど見かけず、夜にだけ入りしていてね。3かに夜逃げみたいにていきました」
の過を調べると、さらに審な事実がてきた。彼は10にも児童誘拐の容疑で捜査を受けていたが、証拠分で釈放されていた。
そして、実が失踪した1985315にも、らしき男が井町のゲームセンターくで目撃されていた。
その報は、当はされていなかった。
佐藤は机を叩きたい衝を抑えた。
「10から、子どもたちを狙っていたというのか」
両の追跡から、が千葉県原にある廃へ入りしていたことが分かった。
佐藤はすぐに現へ向かった。
廃はすでに無だった。
だが、完全に放置されていたわけではない。敷にはタバコの吸い殻、べ物のゴミ、子のタイヤ痕が残っていた。
「ここで監禁していた能性がい」
佐藤はそう判断した。
周辺の聞き込みをうと、くにむ70代の女性が証言した。
「数の夜2頃、トラックが2台来て、何かを運びしていましたよ」
「どちらへ向かったか分かりますか」
「はっきりとは分からないけど、伊豆半島の方へ向かったように見えました」
佐藤はすぐに伊豆半島帯の捜索を指示した。
だが、伊豆半島は広い。
広告
ももあり、隠れ所はいくらでもあった。
その、別の通報が入った。
伊豆のある漁師が、毎晩辺の方から子どもの泣き声のようなものを聞いたというのだ。
「最初はの音かとったんですが、何もの子が泣いているように聞こえるんです」
捜査チームは直ちに現へ向かった。
そこは伊豆半島の岸にある、気のない漁だった。ほとんどのは空きになっており、わずか数軒だけにかりが灯っていた。
漁師が沿いの建物を指差した。
「あそこです。倉庫みたいな建物が見えるでしょう」
見は廃墟のようだった。だが、窓はすべて鉄板で塞がれている。が入りしている形跡もあった。
佐藤が双鏡で確認していると、倉庫の横に黒いワゴンが現れた。
防犯カメラに映っていたと同じだった。
「あれだ。のに違いない」
捜査チームは周囲を包囲した。
本来なら、内部の様子をさらに確認し、慎に突入する必があった。質がいる能性がかったからだ。
しかし、そのだった。
倉庫のから鳴が聞こえた。
子どもの叫び声だった。
佐藤は即座に決断した。
「突入する。これ以待てない」
捜査員たちは倉庫へった。
「警察だ。ドアをけろ」
返事はなかった。
捜査員が扉を破り、へ踏み込んだ瞬、全員が息を呑んだ。
には、10数の女がいた。くは10代半から20代半に見えた。彼らはに横たわり、鎖でつながれていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
11年目のコロッケ
14歳の秋、黒田み咲の母・裕子は「夕飯のおかずを買ってくるね」と言って家を出たまま、二度と戻らなかった。 父は、母が家の金を盗み、近所の男と駆け落ちしたのだと親族に告げた。置き手紙も見つかり、周囲の大人たちは皆それを信じた。残されたみ咲は、“泥棒の娘”として11年間、父と継母、そして親族たちから辱められ続けることになる。 しかしある法要の日、裏山の古い井戸から、母が消えた日に買ったコロッケのレシートと、泥にまみれたカーディガンが見つかる。 母は本当に男と逃げたのか。 なぜ、継母の失くしたはずのイヤリングが井戸の底にあったのか。 そして、11年間沈黙していた“目撃者”が現れた時、黒田家が守り続けてきた嘘は音を立てて崩れ始める。 母に捨てられた娘だと思い込まされてきたみ咲が、封印された真実へたどり着くまでの、愛と復讐の物語。ミステリー|行方不明1.6萬字5 809 -
完結第15話
灯油札の密告
2005年11月、長野県の山あいにある静かな村で、工藤家の住宅が深夜に炎に包まれた。 家の中には、父と母、そして7歳の息子。近所の人々が助け出そうと駆けつけるが、玄関には外側から鎖と南京錠が掛けられ、勝手口も角材で封じられていた。 これは事故ではない。 誰かが一家を逃げられないように閉じ込め、火を放ったのだ。 村人たちは涙ながらに犯人探しを願い、特に隣人の男は誰よりも深く悲しんでいるように見えた。だが刑事・星野は、焼け跡に残された不自然な痕跡と、その男の身体にあった小さな傷に違和感を覚える。 そして事件から数日後、町の貴金属店に持ち込まれた大量の一万円札が、捜査を大きく動かす。 その紙幣には、かすかな灯油の匂いが残っていた。 炎で消されたはずの夜に、いったい何があったのか。 そして、最後まで燃え残った“匂い”は、誰の罪を指し示していたのか――。ミステリー|遺體発見2.3萬字5 239 -
完結第10話
雪下の赤いマフラー
1998年11月12日、雪の降る旭川で、赤いマフラーを巻いた3人の女子高校生が忽然と姿を消した。 双子の美咲と南、そして親友の彩。3人は放課後の演劇部の練習を終え、いつものように学校を出たはずだった。だが、その日を境に、家族のもとへ帰ることはなかった。 捜索は続いたが、足跡も持ち物も見つからない。吹雪がすべてを消してしまったかのように、事件は未解決のまま17年の歳月が流れていく。 そして2015年。元郵便配達員の古い鞄から、17年間届けられなかった1通の手紙が見つかる。 そこには、こう書かれていた。 「私は、美咲、南、そして彩に何が起きたのか知っています」 手紙をきっかけに再び動き出す捜査。座布団の中に隠された日記、古いカセットテープ、稚内へつながる謎の手紙、そして雪深い小屋の床下に眠っていた赤いマフラー。 3人はなぜ消えたのか。 教師・田中浩は何を隠していたのか。 17年間閉ざされていた雪の中の真実が、今、静かに姿を現す。ミステリー|行方不明1.5萬字5 1029 -
完結第12話
ETCに残らない白バイ
2003年春、千葉県の高速道路を巡回していた女性白バイ隊員・水島舞が、サービスエリアで忽然と姿を消した。 監視カメラには、彼女が白バイを降りて建物へ入る姿が残されていた。だが、その18分後、白バイに乗って走り去ったのは舞ではなく、ヘルメットで顔を隠した見知らぬ男だった。 舞本人も、白バイも見つからない。料金所の記録にも、ETCログにも、その後のはっきりした足取りは残っていなかった。 結婚を控えていた婚約者、娘の帰りを待ち続ける両親、そして答えを出せないまま止まった捜査。 10年後、古い監視映像を最新技術で解析した時、画面の隅に映っていた“あるもの”が、事件を再び動かし始める。 白いバイクは、どこへ消えたのか。 そして水島舞が最後に見た人物とは――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 5556 -
完結第11話
雪峠の五発
2006年11月15日、長野県北部。 その年最初の雪が降り始めた高木峠へ、1人の巡査が向かった。展望台に不審な車があるという匿名通報を受け、霧谷慎也は「確認だけ」のつもりでパトカーを走らせる。 だが午後6時15分、現場到着を知らせる無線を最後に、慎也からの連絡は途絶えた。 雪の展望台に残されていたのは、鍵のかかったパトカーと、車内に置かれた制帽と手袋。慎也本人だけが、吹雪の峠から忽然と姿を消していた。 事故なのか、事件なのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら山へ入ったのか。 妻と幼い娘は、答えのないまま13年を過ごすことになる。 そして2019年春。雪解けの斜面から、慎也が持っていた古い懐中電灯が見つかった。 13年間沈黙していた峠が、初めて返した小さな手がかり。 その光の先に隠されていたのは、匿名通報の本当の意味と、雪の下に封じられていた一夜の真実だった。ミステリー|行方不明1.7萬字5 1376 -
完結第13話
5枚で消された妻
1994年4月、長野県の山あいにある古いビジネスホテルで、31歳の女性・高橋美幸が冷たくなって発見された。 部屋には睡眠薬の空箱と酒の瓶。夫との離婚調停を控えていたこともあり、警察は早々に「事件性なし」と判断する。記録はわずか5枚だけ。母のよし子がどれだけ訴えても、娘の死が再び調べられることはなかった。 それから12年。 美幸の夫だった男は別の町で再婚し、真面目な父親として穏やかに暮らしていた。一方、よし子は痛む膝を抱えながら、毎年娘の墓へ通い続ける。 「娘は、自分から死を選ぶような子ではない」 誰にも届かなかったその言葉が、ある夜、古い薬物帳簿に残された一つの名前によって動き出す。 12年前のホテルで、本当は何が起きたのか。 そして、たった5枚の記録が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 502