みかん小説
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"銀の指輪の応募者" 第6話

そしてその、夫の遺体を収容する際、ふみ子はもう1つの奇妙な衝撃に直面していた。

夫のの薬指が、空っぽだったのだ。

結婚する際、世界に2つだけ特別に注文して作った、縁に沿って独特のギザギザ模様が精巧に彫られたのペアリング。2だけの永の約束が刻まれたその指輪が、夫の指から跡形もなく消えていた。

ふみ子は事故現に何度もを運び、指輪を探し回った。沼をひっくり返し、急流が過ぎった底を素で探り、膝がすりむけるほどい回った。しかし、ついに見つかることはなかった。警察は転落の衝撃でれて紛失したのだろうと事件を処理し、ふみ子もその説を受け入れるしかなかった。

しかし、胸の片隅では、どうしても解けない結び目が固く締め付けられたままだった。息子も、指輪も、何の痕跡もなく消えてしまったことが、どうしても納得できなかった。

その以来、ふみ子は自分のの薬指にはめた指輪を、度もしたことはなかった。世界に残された唯の形見であり、夫との最の繋がり。ふみ子はその指輪を見て、25という獄のような孤独を耐え抜いてきた。

しみを忘れるために、がむしゃらに仕事だけに没した。涙を流す代わりに奥歯をい縛り、会社の成だけをの拠り所にした。

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夫がくなった、1で経営の荷を背負ったふみ子は、急成だった会社を、本トップの建設へと育てげた。「鉄の女」と呼ばれるようになったのは、そのためだった。

しかし、毎になると、ふみ子は誰もいない静かな会で、1で胸をかきむしって泣いていた。25、1たりとも夫と息子を忘れたことはなかった。

い回から覚めたふみ子は、ガラス窓に額を当て、い、い溜め息をついた。彼女の目元は濡れていた。ので涙を拭い、彼女はデスクへと戻った。

机のには、ユトが置いていった図面が静かに広げられていた。先ほど、伊藤がそっと部に入ってきて置いていったものだ。

ふみ子は子に座り、震えるでその図面を1枚1枚、おしそうに広げ始めた。

の若い応募者たちが持ってくる、洗練されたコンピューターグラフィックス(CG)の図面とは全く違っていた。無骨な鉛の線で、丁寧に描かれた、完全なアナログの設計図だった。所々、消しゴムで何度も消した跡があり、図面の端には徹夜したことを物語るように、コーヒーのさなシミが広がっていた。

しかし、その無骨な線が描く内容は、決して荒削りなものではなかった。図面を見つめていたふみ子の目が、次第に驚愕へときく見かれていった。

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建物の構造は、が自然に通り抜ける「」をに設計されていた。激しい突を防ぎながらも、にはよい涼しいが建物のを通り抜けるように、緻密に計算された度な構造だった。

そして、建物の1階正面には、誰でも自由に入ってきて、腰をかけて休める広い「縁側」が描かれていた。

が自然に通り、縁側があって、々の活に疲れた々が誰でも入ってきて楽に休める、頑丈な

ふみ子の両が、図面のでピタリと止まった。彼女の指が、ブルブルと激しく震え始める。

この設計哲学を、ふみ子はっていた。あまりにも、よくっていた。

昔、夫と共に貧しい建築学だった頃、狭いアパートのに並んでうつ伏せになり、未来を見てな鉛で何度も描いていた、あの理の世界だった。

『ふみ子、いつか僕たちがきな建物を建てるは、世界で1番々もして休める、温かくて頑丈なを建てよう』

が若い頃に交わした、2だけの、切な切な設計哲学だった。

そのの図面を、どこの学の教科でも学ぶことのできない2だけの独自の哲学を、今、目のにいる30歳の無名の青が、そのまま正確に描きしていたのだ。

ふみ子は両を覆った。指の隙から、押し殺した嗚咽が漏れる。臓が狂ったように鼓していた。

図面の無骨な鉛の線1本1本から、き夫のの温もりが、確かにじられるようだった。

これは、本当に単なる偶然なのだろうか。

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