"母が家を消した日" 第6話
「気をつけてってらっしゃい」
玄関のドアが閉まる。エレベーターへ向かう音がざかっていった。はそのまま玄関にっていた。音が完全に消えるまでじっと待つ。
そして静寂が訪れた。その瞬、の表が変わる。優しい笑顔が消え、真剣な差しになった。今がすべての始まりだ。
はすぐにリビングへ戻る。テーブルのにノートとペンが置いてあった。1週から極秘裏に準備してきた計画だ。ページをくと細かい文字で予定がかれている。産会社への連絡、の続き、移先である野の物件の最終確認。すべて、健たちがハワイにっているこの数のに実するリストだった。
は計を見る。午845分。まず産会社に話をするため、スマートフォンをに取り番号を押した。呼吸をえる。数回のコール音の、相がた。
「はい、田産でございます」
「と申します。先メールでご相談させていただいた件ですが……」
の声は落ち着いていた。こののために何度も練習してきたからだ。話でマンション売却の具体な話をめる。築30の分譲マンションだが、世田の等ということもあり評価額は約8000万円だった。
「現決済をご希望の飼い主様が見つかっております」と担当者が言った。
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「では、詳しいお話を伺いたいので、来週曜にそちらへ伺ってもよろしいですか?」
「はい、お待ちしております」
話を切ると、はく息をつく。ここからもう戻りはできない。
そのの午、はメインを訪れた。マンション売却代を受け取るための座の確認と、続きを済ませるためだ。翌の曜、は野県伊へ向かった。幹線とバスを乗り継いで3ほどの旅。静かなの町。空気が澄んでいて、京とは全く違う景が広がっていた。
現で案内されたのは、さな造の軒だった。古い建物だが、丁寧に入れされていた。
「ここにします」とは即座に答えた。
その週末と翌週にかけて、は毎ひとりで準備を続けた。曜に産会社で正式な売買契約の打ちわせをし、曜に野の物件の購入契約をめ、曜に引っ越し業者との打ちわせをい、曜にでの追加続きを完させた。すべてがスムーズに形になっていく。
9に入り、正式な売買契約が成した。買い主は現での購入を希望しており、続きは滞りなくんだ。
「1010に全ての続きが完する予定です。そのがお引き渡しとなります」と担当者が説した。
はカレンダーを見た。あと1ヶ。そのに野への引っ越しの荷造りも隠れてめなければならない。
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夜、1でテーブルに向かい、万を握った。息子へのをくが来たのだ。
『健へ』
そうきして、はしばらくを止めた。り、しみ、失望、様々ながのを巡る。でも、は静に言葉を選んだ。
『私はあなたたちの計画を全てっています。お盆の夜、あなたたちの会話を聞きました。私を施設に入れてマンションを売る計画を。美紀さんの部でメモも見つけました。施設リスト、マンション売却の予定、そしてあなたがいたメモ。すべて写真に残しています。
もうあなたたちに頼ることはありません。これからは私自のを切にきていきます。どうか元気でお過ごしください。母より』
いだった。でも、それ以の言葉は必なかった。はを封筒に入れ、リビングのテーブルのに置いた。引き渡しのにここに残していくつもりだった。
9が過ぎ、10に入った。荷物の理もほとんど終わっている。いの品をダンボールに詰めていく。夫との写真、息子がさい頃の写真。1枚1枚見つめながら涙がそっと流れた。でもはそれを拭う。泣いている暇はない。野のしいへ持っていく必最限の荷物だけを選んだ。
1010、引き渡しの朝が来た。は最にマンションのを見回した。30んできたいの所だ。
「さようなら……」
テーブルのに封筒を置く。玄関のドアをけ、は静かにへた。
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