"鬼母の末路" 第19話
親には逆らってはいけない。
育ててもらった恩は返さなければいけない。
そうやって、ずっと自分に言い聞かせてきたからだ。
だが今の俺のには、何の響きも持たなかった。
俺はすがりつく母親の両を、たく、しかし切の容赦のない力で乱暴に引き剥がした。
「育ててやった。そうだな。俺を産み、ここまで育ててくれたことには謝しているよ」
「ほ、本当? じゃあ……」
俺のその言葉に、母親はぱっと顔を輝かせ、希望を見したようにすがりつこうとした。
だが、俺の次の言葉が、そのっぺらな希望を永の絶望へと変えた。
「だからこそ、おが番許せないんだ」
「え……」
俺はゆっくりと息を吸い込み、極限までえ切った静かな声で言った。
これから放つ言が、この女の息の根を完全に止める決定打となる。
「お袋、もうつ聞きたいんだけど」
母親は怯えたように肩をすくめ、すがるような目で俺を見つめ返した。
俺は母親の濁った目をまっすぐに見据え、血を吐くようない声で、ゆっくりと言言を噛みしめるように言い放った。
「俺の娘に、お湯ご飯わせて、美しかったか」
ぴたりと、母親のきが完全に止まった。
まるでが凍りついたかのように、呼吸すらも忘れ、目を見き、を半きにしたまま固まっている。
部の空気が急激に絶対零度までえ込んだのが分かった。
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「おがホストの腕にすがりつき、数万円の級フレンチのフルコースに舌鼓を打っていた、おの実の孫は氷点の部で、気を吸っただけのたい米をすすっていたんだ。それをっていてう飯は、さぞかしうまかっただろうな」
「あ……う……」
母親の喉から、声にならない引きつったような音が漏れた。
「娘がお肉がべたいと泣くのを必にし、妻が自分の分まで娘に与えて空腹に耐えていた。その事実を『いい気だ』と笑いながらみ込む級ワインは、どんながしたんだ。答えてみろよ」
俺の号が、再びリビングに轟いた。
その瞬、母親ので何かが完全に崩壊する音が聞こえた。
今まで自分が築きげてきた絶対な姑、息子を支配する母親という。
そして、自分は悪くない、族なんだから許されるという狂った正当化。
その全てが、この言によって完膚なきまでに砕されたのだ。
「違う。違うの。私、そんなつもりじゃ……ただちょっと任されて……」
母親は虚ろな目で宙をうろつき、ずさりしながらぶつぶつと譫言のようにつぶやき始めた。
もうまともな考回すら残っていないのだろう。
自分がどれほどおぞましい罪を犯したのか。
今になってようやく、そのさに押し潰されそうになっているのだ。
「そんな話で済む話じゃない。
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おは図に俺の族を壊そうとしたんだ。自分が優位につためだけに、真由たちから全てを奪い取った」
俺はにいつくばるれな老婆を見ろしながら、自分ので起きた完全なる覚を、はっきりと自覚していた。
かつての俺は、母親に認められたい、親孝をしなければという古い価値観に縛られていた。
だが今は違う。
俺が本当に命をかけて守るべきは、自分を産んだだけの欲な女ではない。
俺の帰りを信じて、どんな獄のような苦しみにも耐え抜いてくれた妻と、お湯ご飯を魔法のご飯だと笑ってくれたする娘なのだ。
初めて俺は、母親より守るべきの真のみを理解した。
「黒崎、もう分だ。これ以この空にいると吐き気がする」
俺が振り返って声をかけると、黒崎はたい微笑を浮かべて頷き、テーブルのに広げていた証拠類をてきぱきとアタッシュケースにしまい始めた。
「ええ、そうですね。必な証拠は全て揃いましたし、本の自も分に録音できました。あとは法廷で事実関係を淡々と詰めていくだけです」
ぱちん、とアタッシュケースの具が閉まるたい音が、リビングに響き渡った。
それは母親に対する完全なる刑宣告の音でもあった。
「ま、待って。かないで、。お願いだから、警察だけは、裁判だけは嫌」
母親は発狂したように叫び、をって俺の首を掴もうとした。
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