"半纏に縫われた遺言" 第19話
予期せぬ老の暴れに、護師の女たちは「キャッ!」と鳴をげて激しくろへとがり、院のから滑り落ちた注射器が、のをコロコロと音をてて転がっていった。 隣のベッドのおばあさんが、私の狂態に怯え、毛布をからかぶって「ウワァァン」と声で泣きした。 院は激しく眉をひそめ、男性護師たちに向かって鳴り散らした。 「何をしてるんだ! くそのババアを押さえつけろ! かすな!」
男性護師の2が、のの私を目がけて、猛然と掴みかかってきた。 私はに寝転んだ姿勢のまま、40、仕事でいミシンの踏みペダルを毎何万回も踏み続けて鍛えげてきた、その両を、空に向かってめちゃくちゃに力く蹴りげた。 ドガッという鈍い衝撃音と共に、私のの裏が護師の顎へと見事に命し、「ウグッ!」という鳴が病の壁に激しく響き渡った。 76歳の老の体であったが、職としてきてきた腰には、まだ連に対抗するための靭な力が残されていたのだ。
(を稼がなきゃいけないんだ……。1秒でもく、連の針をざけるんだ……!) 私はので、必に数を数え続けた。 (健……! おが本当にいているなら、もうこのにはこの施設に到着しているはずだ……! 来てくれ、お願いだからにっておくれ……!)
院は、のから転がった注射器を忌々しそうに拾いげ、自ら私の元へと般若のような顔をしてづいてきた。
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男性護師のが私の両肩をのでく押さえつけ、もうが暴れる私の腕を引に掴み取った。 院が私のに膝をつき、鋭い針の先を私の皮膚へと突き刺そうとした、まさにその瞬だった。
廊のずっと向こう側から、ドゴォォォンという、凄まじい破壊音が建物全体に響き渡った。 施設の正面にある、頑丈な鉄製の扉が、何かの両によって力任せに引き裂かれて押しけられたような、凄まじい衝撃音だった。 続いて、のコンクリートを激しく踏み鳴らす、何もの々しい男たちの靴音が、廊の奥からこちらへ向かって、涛の勢いで寄せてくるのが聞こえた。 注射器を握っていた院の顔が、瞬にして、のように真っに変した。
病の製のドアが、壁に激しく叩きつけられるようなきな音をてて、勢いよく弾けいた。 部の入りに、黒い防刃ジャンパーに警察のベストを着用した、の柄な男が、威堂々とした姿でっていた。 齢は42歳ほど、がっしりとした体格の、角いメガネの奥でるその鋭い。 田健弁護士だった。
15、浅の仕ての作業台の片隅で、涙を流しながらい定をべていた、あの痩せこけた受験の面は、そこには微もなかった。 数々の修羅の法廷で国権力と戦い、鍛えげられてきた、断固とした靭な法律が、今そこにっていた。
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彼が率いる背からは、労働省の「特別麻薬取締官」や「特別査察班」の腕章を腕につけた、勢の屈な捜査官たちが、病の方を瞬くに完全に包囲していった。
「労働省・特別査察班である! 院、その注射器を今すぐにろし、老かられなさい!」 田健の、腹の底から響くような鳴りのような声が、病の方の壁に激しく響き渡った。 恐怖に震えた院のから、注射器が力なく滑り落ち、のコンクリートへと激しく叩きつけられた。
パリンという、ガラスが派に割れる鋭い音と共に、内部の透な液体がの面に気に広がっていった。 ので私の両腕を無理やり押さえつけていた、男性護師たちの指の力が、恐怖で同にサーッとれていった。 院はをきくけたまま、目のに現れた田健と、鋭い目つきの捜査官たちの姿を、信じられないという顔をして交互に見つめ続けた。 わずか3秒まで、絶対な権力者として私の腕に針を突き刺そうとしていた男の顔には、今や、己の破滅を悟った、惨めな恐怖だけが満ち満ちていた。
私は、のに寝転んだ姿勢のまま、井のい蛍灯のをじっと見つめていた。
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