"三輪山に消えた家族" 第12話
裕は蔵のにみ、そっと両をわせた。今、本のどこかで名を変えて暮らしているであろう叔父のへ。そして、彼らを命がけで守り続けた、この目のの無な老へ。 輪から吹きろすよいが、まるで祝福のように、彼の方を伝う涙を優しく乾かしていった。
すべてが解決し、裕のは議なほどの静けさと温かさで満たされていた。 だが、彼のの奥底で、たった1つだけ、どうしても消えないさな引っかかりが残っていた。 あの桐箱の族写真の端に写り込んでいた、「見らぬ男の」の謎だけが、最に答えのない問いとして、そこにあり続けていた。
輪から吹く緑のは、まるでの因縁と張りを洗い流すかのように、裕のを穏やかに沈めていった。失踪の真相、父親の苦悩、そして宿敵であったはずの葉のい覚悟。すべてをった彼のは、議なほどの堵と温かいに包まれていた。 (もう、このにい残すことはない……) そうい、裕が居で最の遺品片付けを済ませていただった。彼は、桐箱から取りしたあの族写真を、何気なくもう度に取った。
その瞬、彼の考はピタリと止した。 温かさに満たされたに、さなトゲのように、あの「黒い」が再び突き刺さる。
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葉の逃計画は完璧だった。借取りの目を欺き、を全に逃がす。その極秘のシナリオのに、失踪直に撮られたこの写真に写り込んだ「第の物」のは、あまりにも自然で、致命な違いだった。 葉にこののことを尋ねても、彼は「当たりがない」という顔で、議そうに首を捻るばかりだったのだ。正隆を脅していた融トラブルの相なら、こんな族写真の撮現にのんびり現れるはずがない。 (では、このかきのの幹のに隠れたは、体誰なんだ……?)
それは、解決したはずの物語に唯残された、協音だった。このの正体を完全に突き止めない限り、母親の千代子が当じていたであろう、本当の恐怖や切迫のすべてを理解したことにはならない。 裕はかすかな記憶の糸を繰り寄せた。千代子の実、つまり自分の祖母は、まだ隣町で健であったはずだ。千代子の過を、最もよくる物。裕は最の望みをかけて、祖母の古いを訪ねることにした。
昔ながらの古い並みが残る角にある、祖母の。仏壇に線をげ、をわせた、裕はカバンからあの族写真をゆっくりと取りし、祖母のに置いた。 祖母は老鏡をかけ、古いアルバムをめくるを止め、写真を見つめてい溜め息をついた。
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「この写真の千代子は、無理に笑ってますねえ……。この頃、あの子は随分と、い詰めた顔をしておりましたわ」 祖母は、写真の端にある気なではなく、娘である千代子の表そのものに、母親だけが分かる痛みを敏に読み取っていた。
「正隆さんの、変な借の話は、から葉さんから聞きました。けどな……あの子を本当に苦しめていたのは、それだけやなかったのかもしれんねえ……」 そして、祖母のから静かに語られたのは、裕が全くらなかった、母親・千代子の青代の切ない物語だった。
結婚する、千代子にはくいった、の幼馴染の男性がいたのだという。彼は絵を描くのが好きな、とてもしい青だったが、まれつき体がく、も決して裕福ではなかったため、千代子の両親――つまり祖母たちから、交際を猛反対されていたのだという。 結局、2は周囲の激しい圧力に抗えず、別れを選んだ。千代子はその、正隆とお見い結婚をし、子供にも恵まれて幸せな庭を築いたはずだった。
「そのがな……」 祖母の声が、しげに沈んだ。 「ちょうど、あのがおらんくなるし、い肝臓の病気で倒れてな……移植しか助かるはないと言われとったんですわ。けど、ごの通り、そんな、普通のにせるわけがない……」
その言葉を聞いた瞬、のにカミナリが落ちたかのような衝撃が裕を襲った。全の血が、急速にえていくのをじる。
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