"三輪山に消えた家族" 第9話
「失踪事件があったあの夜、父が夜に1で、仏壇ので声を殺して泣いているのを、私は見てしまったんです。父も、本当は激しく苦しんでいたんだといます……」
酷な脅迫者に見えた葉正が、れず流していた涙。それは、対するを酷に追い詰めた男の歓の涙ではない。の秩序と、1つの族の過酷な運命とので、たった1で苦悩し続けた父親の涙だったのかもしれない。 裕ので、これまで築きげてきた「葉=犯」という単純な構図が、ガラガラと音をてて崩れ落ちていく。残されたのは、たな、そしてよりいドラマの謎だった。 (倉で響いた、あの途切れ途切れの子守唄……あれは体、誰に向けられたメッセージだったんだ?)
暗から聞こえたという、あの必な子守唄。その異様な景は、裕のでバラバラだった謎のピースを、1つの真実の方向へと急激に導いていた。 あれは、追い詰められた母親が、にいる誰かに助けを求める、最の祈りにも似たシグナルだったのではないか。そして、そのシグナルをで受け取るはずだった相は、体誰だったのか。 裕のは、何かに吸い寄せられるようにして、再び葉の敷へと向かっていた。今度こそ、あの老に本当の真実を語らせる。そのいで、彼はを固く握りしめていた。
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敷の座敷で、再び対峙した葉の表は、回にも増して険しく、鬼気迫るものがあった。しかし、裕はもう、彼の放つ威圧に歩も引かなかった。 「失踪の夜、波野の倉から、子守唄が聞こえたそうです。必に、何かの図を送りようとするような声で……」 裕は葉の目を真っ直ぐに見つめ、静かに、しかしはっきりと告げた。 「あれは、誰に向けた図だったんですか? あなたは、あの夜、どこにいたんですか?」
その言葉を聞いた瞬、葉の鉄面皮のような表が、ついに完全に崩れ落ちた。鋭い目が驚愕に見かれ、そして次の瞬には、すべてを諦めたかのような、い、い溜め息を漏らした。 葉は裕に背を向け、庭に面した縁側へと歩き、そこにどさりと腰をろした。
苦しい沈黙が2のに流れる。やがて、庭の片隅にあるつくばいから、静かに響くの音だけが、夜けのようにきく聞こえてくる。その静寂の、葉はぽつり、ぽつりと語り始めた。その声には、もう裕を威嚇するような鋭さは微もなかった。 「わしは……あの、波野のの裏で、息を殺して待っとったんや。あの声だけを、頼りにな……」
その言を聞いた瞬、裕は全の血が逆流するような、凄まじい衝撃を受けた。 「どういうことですか……? あなたが、裏で待っていたなんて……」
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葉は裕の方を見ようとはせず、い庭の景を見つめたまま続けた。 「わしは、波野のを……あいつらを、このから無事に逃がしたんや」
彼のから語られた真実は、裕がこれまで必に組みててきた推測を、っ端微に破壊するものだった。 父親の正隆がをしてしまった、あの巨額の融トラブル。その取引の相は、識のない農を騙す単なる悪徳業者などではなかった。当、関円で勢力を急速に拡していた、極めて凶悪な反社会な組織だったのだ。
正隆は彼らの巧妙な罠にはまり、先祖代々守ってきたの権利まで騙し取られ、だるま式に膨れがった借の返済を、夜、暴力に脅迫されていた。彼らは「返せないなら、子供の命がどうなってもらんぞ」と、幼い兄弟の命までチラつかせ、正隆はまさに万策尽き、体極まっていたのだという。
「その恐ろしい事実を、わしは偶然ってしまったんや」 葉は静かに語った。、波野との利権を争っていた葉は、あるの夕方、彼らの畑のくを見回っている際、正隆が数の凄みの利いた男たちに面に座させられ、激しく脅されている現を、むらのから目撃してしまったのだという。
「憎みってきた相や。正直、『ざまあ見ろ』とわんこともなかった。
しかし……男たちの、常軌を逸した激しい脅しと、恐怖で全をガタガタと震わせる正隆の姿。
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