みかん小説
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"柿の木の下、三十年の帰郷" 第27話

ちゃんと炊けるならいいけどね。炊けなかったら俺が全部べるさ。母はふっと笑い、背を向けて庭でネギを数本引き抜いた。その背を見つめる、青いダウンコートが夕を浴びてっている。腰を曲げてネギを抜く作はし遅いがしっかりしている。この、この煙、このお米、この庭にいる。全てが私のものだ。ストーブの炎が鍋の底を舐めながらゆっくりとこのを煮込んでいく。

そのが来る、町でまた自隊の募集があった。私がバイクで役を通ると壁に貼られた募集のポスターのに何かの若い男の子が集まっていた。突っちになって懸命見ている。私はスピードを落としてちらりと見た。ポスターはに私がち止まって見たものとほとんど同じだった。その柄ながいた。あせた青い着を着て袖はすり切れている。あの私が来ていたとそっくりだ。彼は混みから顔をあげ、目をキラキラさせてポスターを見ていた。私はブレーキをかけ、ヘルメットをした。が振り返り、私の顔と制を見た。し躊躇してから私のった。あの、自隊に入りたいんですけど、どうすればいいんですか。声はさくし震えていた。私は彼をじっと見てからいくつだと聞いた。

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になるです。保護者の同はもらったのか。彼は俯き何も言わなかった。に帰って親と相談してから来なさい。父ちゃんはいなくて母ちゃんしかいないんです。胸の奥がチクっとした。あのの私もになるで父親がおらず母親だけだった。

バイクにまたがったまま彼を見つめる。が彼の着を膨らませていた。痩せっぽちのさな体だ。名はひろしです。の向こうのから来ました。私はバイクのエンジンを切り、彼のった。俺は鈴という、あのでこの町から自隊に入ったんだ。自隊に入るのはいいことだ。でも親に内緒ですような真似はするな。お袋さんにしっかり話をして許しをもらってから来い。ひろしは顔をあげて私を見た。母ちゃんがダメだって言ったらどうすればいいですか。まずは話してみろ。自分で勝に決めるんじゃない。彼は頷き、もう度私を見てから混みを抜けての方向へっていった。るたびに青い着の裾がパタパタと揺れていた。彼の背ざかるのを見届け、私はヘルメットをかぶり、再びアクセルを回した。ってから振り返ると役にはまだたちが残り、携帯でポスターの写真を撮っているものもいた。へ向かうすがらはひろしの顔でいっぱいだった。

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もし彼が私の言う通りにへ帰り母親に相談したら彼の母親も私の母と同じように泣くだろうか。そして彼を送りしてくれるだろうか。もし許してくれなかったら彼はどうするだろうか。

に着くといており、母は台所の入りに座って何か作っていた。首の怪は治り、普段の活には全く問題ないが、にはまだし痛むらしい。私はエンジンを切り、に入った。今は帰りがいねと母が顔をあげた。町を通ったら自隊の募集のポスターが張ってあったんだ。包丁を持つ母の瞬止まった。もうそんな期か。あ、あんたがたのもこの期だったね。うん。の終わりだった。母は俯き、葱の葉をちぎり始めた。黄くなった葉をつちぎり落とす。葱のツンとした匂いが漂ってくる。私は隣のさな子に座り伝った。に母が言った。あのあんたがから鍵をかけた私は窓からあんたが自転に乗っていくのを見ていたんだよ。すごいスピードでってって度も振り返らなかったね。私は泣いたんだ。でおじさんがドアを叩きに来たける勇気がなかった。母が昔のことを自分から話したのは初めてだった。私はに持った葱を握りしめきを止めた。

ってるよ。泣いてる声が聞こえたから。聞こえてたのにったのかい。あのに血が登ってて、とにかくかなきゃだめだとってたんだ。

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