"浴室の鍵" 第17話
「ふざけるな!おが勝に暴したんだろうが、俺はそんな指示はしていない」
「嘘をつけ。『もっとらせろ』って話で言った録音があるじゃないか」
先ほどまで模範な親族として威張っていたの男が、に座り込みながら見苦しく責任の押し付けいを始めている。
義母に至ってはショックのあまり目をむき、気を失いかけて壁に寄りかかっていた。
「見苦しいですね」
私はでもがくをたい目で見ろした。
「どちらが主犯であろうと関係ありません。すでに診療所で取得した母の怪の診断、この映像データ、類のコピーは全て私の代理である弁護士に提済みです。もちろん警察にも被害届と告発状を提する続きがっています」
「警察……?」
その単語を聞いた瞬、浩司と達也のきがぴたりと止まった。
「あなたたちが犯したのは単なる庭内の揉め事ではありません。齢者虐待、文偽造、財産目の詐欺、派な刑事犯罪です」
私の声には滴のけも残っていなかった。
25私を縛りつけ、母を傷つけた彼らにす完璧な報いだった。
「警察汰になれば、浩司さんの会社にも当然事態は伝わるでしょう。昇どころか、解雇は免れませんね。達也さんも訪問介護の資格は剥奪され、実名が報されるかもしれません」
広告
私の徹な宣告に、浩司は顔面をにして震えした。
世体と自分の位を何より事にしてきた彼にとって、それは社会なをしていた。
「ゆみ子、頼む。警察だけは勘弁してくれ。俺が違っていた、謝る。座でも何でもするから」
浩司はプライドを投げ捨てるように私の元にすがりつき、額を畳に擦りつけた。
「おも俺が捕まったら活できなくなるだろう。なら払う、だから事にするだけは……」
達也も浩司の横に並び、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら座をした。
「おばさん、許してください。軽い来だったんです。もう度とづきませんから」
25私を見し、命令し続けてきた夫と、私を馬鹿にして笑っていた甥が、今私の元で許しを請うている。
しかし私のにはほんのわずかな優越すら湧かなかった。
ただただこの男たちがひどく汚らわしくれに見えただけだった。
「活できなくなる配は無用です」
私は浩司をたく見ろした。
「私はすでに弁護士を通じて婚の続きをめています。あなたには母への損害賠償と私への莫な慰謝料を請求します。あなたが自分のために溜め込んでいた財産と退職代わりので、私は母としいを歩みます」
「婚?待ってくれ、俺を見捨てる気か」
「見捨てたのはあなたの方でしょう。
広告
あなたが私と母を絶望に突き落とそうとしたように、今度はあなたが全てを失う番です」
私は親族たちの方に向き直った。
彼らは皆、自分にのがりかかるのを恐れ、目をそらしていた。
誰も浩司や達也をかばおうとはしない。
と利害だけで繋がったっぺらい親族の絆など、たったつの真実のであっけなく崩れったのだ。
「皆様、本は変お騒がせいたしました。達也さんの本当の性を分にご理解いただけたかといます。これにて私は失礼いたします」
私はくお辞儀をし、タブレットをカバンにしまうと、振り返ることなく個の扉をけた。
「ゆみ子、待て!ゆみ子!」
背から浩司の絶叫が響いたが、私はち止まらなかった。
料亭のにると、空はどこまでもく澄み切った青空が広がっていた。
胸の奥にくのしかかっていた鉛のような圧が、嘘のように消えっている。
25、波をてないよう息を潜めてきてきた私が、初めて自分ので自分のの舵を切った瞬だった。
その、事態は弁護士の計画通りにんだ。
証拠が完璧に揃っていたため、警察はすぐに捜査にきした。
浩司と達也は齢者虐待、文偽造、詐欺未遂の容疑で事聴取を受け、その事実は瞬くに親族や浩司の会社にれ渡った。
浩司は当然のように会社を解雇され、社会信用を完全に失った。
退職も支されず、私からの慰謝料請求と母への損害賠償により、彼の元には借だけが残った。
広告
おすすめ作品
-
完結第23話
40.4℃の真実
40.4℃の高熱で救急搬送された、二十歳の女子大学生。 医師は最初、ただの重い感染症だと思っていた。 しかし、診察のために服を少しめくった、その瞬間――診察室の空気は凍りつく。 彼女の身体には、病気では説明できない痕跡が残されていた。 なぜ誰も気づけなかったのか。 彼女は誰にも助けを求められなかったのか。 そして、彼女が涙を流しながら口にした「脅迫されました」という一言が、事件を思いもよらない方向へ動かしていく。 真実を追う刑事。 娘を守ろうとする両親。 そして、権力と金を持つ一人の男。 ページをめくるたびに新たな疑惑が生まれ、最後まで真相が読めない医療サスペンスです。 あなたなら、この事件の真犯人が誰だと思いますか?人生逆転|真実|裡の顔|真相3.5萬字5 1 -
完結第25話
妻のポーチから見つかった結婚指輪
結婚二十二年。 私は、自分たち夫婦ほど平凡で幸せな家庭はないと信じていた。 仕事を頑張る妻を支え、娘を育て、老後のために二十年以上かけて少しずつ貯金を続けてきた。 それが私の人生だった。 だが、妻の出張帰りの荷物を片付けた、たった一度の善意が、その人生を根底から覆すことになる。 下着のポーチの奥から見つかった黒い箱。 その中には、見知らぬ男との結婚指輪と、私たちの老後資金二千百五十万円が入った、別名義の預金通帳が隠されていた。 愛していた妻。 二十年以上親友だと信じてきた男。 そして、私だけが何も知らないまま利用され続けていたという残酷な真実――。 これは、一人の夫がすべてを失い、すべてを取り戻すまでの記録である。真実|裡の顔|真相|ATM扱い|金銭問題|修羅場3.8萬字5 5 -
完結第9話
霧の峠に消えた後継者
1995年秋、長野の霧深い峠道で、1台の黒塗りの高級車が見つかった。 車内には鞄と別荘の鍵だけが残され、運転していたはずの男の姿はどこにもなかった。行方不明になったのは、東京・銀座の名門財閥の3代目後継者、総一郎。28歳の若さで一族の未来を背負うはずだった青年だった。 誘拐か、事故か、それとも自らの失踪か。 身代金の要求もなく、遺体も見つからないまま、事件は長い年月の中に埋もれていく。やがて一族では、総一郎の従兄・涼介が新たな当主となった。 しかし15年後、時効が目前に迫ったある日、総一郎の妹・佐和子は古い資料の中に小さな違和感を見つける。 車に残されていたはずの「別荘の鍵」。だが、それは兄がいつも持ち歩いていた本物の鍵入れではなかった。 消えた鍵入れはどこへ行ったのか。 そして、霧の峠で総一郎は本当に何者かに消されたのか。 時効前日、佐和子と元刑事・沢田は、すべての答えが眠る軽井沢の別荘へ向かう。そこで見つかった一冊の手帳が、15年間閉ざされていた財閥一家の真実を静かに暴き始める――。ミステリー|真実1.3萬字5 87 -
完結第5話
志摩の海に沈んだ母
1994年、三重県志摩の小さな漁村で、70歳を過ぎても海に潜り続けていた海女・高島梅野が突然姿を消した。 その朝、海は穏やかだった。仲間の海女たちは確かに梅野の姿を見ていた。けれど日が高くなっても、彼女だけが水面に戻ってこなかった。捜索は続いたが、亡骸も道具も見つからない。 事故なのか、失踪なのか。 梅野には3人の息子がいた。東京に住む長男、大阪で商売をする次男、そして島に残って母の近くで暮らしていた末の息子・正斗。やがて警察は、梅野が持っていた土地と、息子たちの金銭問題に目を向ける。 だが決定的な証拠はなく、事件は海に沈むように忘れられていった。 それから16年後。 東京・港区で、行方不明のはずの梅野名義の「3億円ビル」が見つかる。しかも名義移転は、彼女が姿を消した後に行われていた。 誰が、母の名義を使ったのか。 古い家に残された血痕、かまどの灰から出てきた金の指輪、そしてタンスの奥に隠されていた一通の遺言書。 志摩の海に消えたはずの真実が、16年後、静かに浮かび上がる――。ミステリー|真実7.7千字5 24 -
完結第4話
トランクの中の9年
2015年、熊本市の公園で、5歳の少年・岡田匠が突然姿を消した。 父・悟と一緒に散歩へ出かけ、砂場で遊んでいたはずの匠。父がほんの一瞬目を離した時、息子の姿はどこにもなかった。公園にいた人々も、周辺の防犯カメラも、匠がどこへ行ったのかを捉えていない。 警察は大規模な捜索を行ったが、手がかりは見つからず、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていく。母・美咲は息子の帰りを待ち続け、父・悟は疑いと沈黙の中で少しずつ壊れていった。 そして9年後。 森の違法投棄現場で見つかった一台の古いトヨタ。その車は、かつて悟が所有していたものだった。 錆びついたトランクを開けた時、警察官たちは息をのむ。 中に隠されていたのは、9年前に消えた少年の記憶と、父親が最後まで語らなかった恐ろしい秘密だった――。ミステリー|真実6.4千字5 77