"浴室の鍵" 第14話
「お母さん、数だけここでゆっくり休んでね。もう誰もお母さんを痛い目にわせたりしないから」
ベッドで横になる母のを握ると母はしだけしたように目を閉じ、「ゆみ子、ありがとうね」とさくつぶやいた。
その言葉を聞いて私はこらえきれずポロポロと涙をこぼした。
泣くのはこれが最よ。
私は涙を乱暴に拭い、病院の廊を歩きした。
その夜に帰ると浩司が嫌に腕を組んで座っていた。
「おい、ばあさんを急に入院させるなんて聞いてないぞ。は誰が払うんだ」
「配しないでください。母のからお支払いしますから。先がどうしても度詳しい検査が必だと言って」
私がわざとおどして見せると浩司はで笑った。
「ふん、まあいい。どうせ先はくないんだ。あのままボケて病院でんでくれればこっちのも省けるってものだ」
浩司のその恐ろしい言葉を聞いても私のはもうかなかった。
ただたく彼を見ろしていた。れな男だ。
自分がどんな獄に突き落とされるのかもらずに、まだ自分が王様だとでもっている。
「あなた、の昇祝いのお席、楽しみですね」
私が静かにそう言うと浩司は満に頷いた。
「ああ、親族全員に俺の偉さを見せつけてやる。おも来の悪い嫁なりによくち回れよ」
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私はくをげた。
「ええ、ご期待通りに、忘れられない最のお祝いを用して差しげます。、全てが終わる」
私はクローゼットから着る、落ち着いた黒のワンピースを取りし、静かにシワを伸ばした。
ついにそのがやってきた。
曜の昼、隣町にある元でも名な級料亭の広い個に浩司の親族たちが次々と集まってきた。
座には主役である浩司が特注の級スーツにを包み、ふんぞり返って座っている。
その隣には義母が「うちの自の男」とに笑いながら座り、向かいの席には義姉とその息子の達也が並んでいた。
親族は全部で10ほど、浩司の叔父や叔母など、頃から本の権勢を気にする面々ばかりだ。
私は目たない座に静かに座し、たいお茶を啜りながらその景をややかな目で見つめていた。
カバンのには弁護士から託された類の束と、全ての映像、音声データが入ったタブレットがたいみを放って沈んでいる。
「いやあ、浩司君が営業部とはね、本からついに役員がるもいんじゃないか」
叔父のがお世辞を言うと浩司は謙遜するそぶりも見せずに笑いした。
「ありがとうございます。ああ、俺くらい仕事に命をかけていれば当然の結果ですよ。
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これからは親族の皆さんにもしは恩返しができるといますよ」
「本当に浩司は昔から優秀だったからね」
義母がわざとらしく私の方をちらりと見て目を細めた。
「それに引き換え嫁のゆみ子さんは本当に運がいいわね。こんな派な夫に養ってもらって、自分の親の介護まで浩司の稼ぎに頼っているんだから」
その言葉に同調するように義姉もをいた。
「そうそう、うちの達也なんてゆみ子さんがかわいそうだからって、い当てでわざわざ介護を伝いにってあげてるのよねえ」
達也に線が向けられると彼は爽やかな笑顔を作ってをげた。
「いや、そんなしたことじゃないですよ。おばあちゃんも認症がんで変そうですし、族なんだから助けうのは当然です。プロとして僕ができることをやっているだけですから」
達也のその優しい青を演じる完璧な台に、親族たちから「なんて偉い子だ」「ゆみ子さんは達也にを向けて寝られないね」と称賛の声ががる。
私は膝ので両をく握りしめた。
よくもまあ、息をするように嘘がつけるものだ。
この男たちは私の母を傷つけ、財産を奪おうと、親族のでは慈に満ちた族の仮面をかぶって演じている。
「ゆみ子、おも黙ってないで、達也にちゃんとお礼を言え」
浩司が酒の入った赤い顔で私に命令した。
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