"トランクの中の9年" 第2話
けれど、匠が消えた瞬を捉えた映像はなかった。
警察にとって、岡田悟の証言だけが唯のがかりだった。
そして標準な順として、父親である悟も疑いの対象になった。
悟は何も事を聞かれた。
刑事たちは、同じ来事を何度も系列で説させた。どのベンチに座っていたのか。何を見ていたのか。何に気を取られたのか。匠が最にどんな様子だったのか。
悟の話は、貫していた。
しい矛盾はなかった。突然増える自然な詳細もなかった。目のの男は、ただ息子を失った父親に見えた。
警察は悟の自宅と古いトヨタも調べた。
争った形跡はなかった。
血痕も、審な荷物も、子どもを隠した痕跡も見つからなかった。
匠の母である美咲も、夫の話を信じていた。彼女は涙で声を詰まらせながら、悟が息子を切にしていたことを繰り返し話した。
そのの々は、全体を巻き込む捜索になった。
匠の写真は、駅、の窓、掲示板、学のくに貼られた。写真のの匠は、ミッキーマウスのぬいぐるみを抱き、無邪気に笑っていた。
ボランティアは公園周辺を何度も歩いた。空きや廃墟、川沿い、細いまで確認された。けれど、どこにも匠はいなかった。
やがて、捜索はしずつ縮されていった。
ニュースで取りげられる回数も減った。
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警察にとって、岡田匠の事件は未解決の方事件となった。分いファイルだけが残り、ので静かに古びていった。
悟は常に戻った。
けれど、完全に戻ることはできなかった。
所には、彼に挨拶しなくなったもいた。職では同と好奇が混じった線を向けられた。誰もはっきりとは言わなかったが、疑いのは消えなかった。
5歳の子どもが、昼の公園から何の痕跡も残さず消えることがあるのか。
誰もがのどこかで、その疑問を抱いていた。
美咲も同じだった。
彼女は夫を責めなかった。けれど眠れない夜、何度も考えた。
なぜ見ていなかったのか。
なぜ止められなかったのか。
なぜ誰も、匠を見なかったのか。
その問いはにされなかった。けれど悟は、妻の沈黙と線のにそれをじていた。
が過ぎた。
最初の鋭いしみは、鈍い痛みに変わっていった。けれど、痛みが消えたわけではなかった。
岡田のには、いつも沈黙があった。
匠の部は、そのまま残されていた。さなベッドはえられ、棚にはおもちゃが並び、机の横には青い子が置かれていた。
そこはいの部ではなく、失われたが閉じ込められた所になっていた。
美咲は、子どもを失った親の支援グループに通うようになった。同じような痛みを抱えたたちと話し、理士の言葉を聞き、どうにか自分のを保とうとした。
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方で、悟は殻に閉じこもった。
助けを拒んだ。
匠の話をされると、泣くのではなく、く沈黙した。その沈黙は、涙よりも周囲を怖がらせた。
2のには、見えない壁ができていった。
警察は悟の罪を証するものを何も見つけられなかった。けれど、美咲のには疑いの虫がみついていた。
匠の失踪から3、2は婚した。
静かな婚だった。
激しい罵りいも、裁判汰もなかった。ただ、もう同じで息をすることができなくなったのだ。
美咲は別の町へ引っ越した。劇の現からくれ、できるだけしい活を始めようとした。
悟は過の霊に満ちたに1残された。
しかし、それもくは続かなかった。
婚が成すると、悟はを売った。町れのさなアパートへ移り、倉庫の夜勤の仕事に変えた。との関わりをできるだけ避ける活だった。
まるで、自分自を世界からしずつ消そうとしているようだった。
それでも、彼が放さなかったものが1つだけあった。
古いトヨタだった。
匠が消えた直、警察に調べられたあのである。何度も故障し、体には錆が浮いていた。それでも悟は処分しなかった。
はアパート裏の駐に置かれ、古いシートで覆われていた。
所の々にとって、悟はしい過を持つ、無で寄りがたい男だった。
誰も、あのについて尋ねなかった。
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