"十七年目の「ただいま」" 第1話
。
沢には、そのもいがっていました。
く濁った空からり続くは、々の根を静かに覆い、細いの音まで吸い込んでしまうようでした。私は台所で夕飯の支度をしながら、何度も壁の計を見げていました。
娘の島静は歳でした。
そのは学の終業式で、いつもよりく帰ってくるはずでした。静は古びたカバンを背負い、をる、先たちにさくを振ったそうです。
「気をつけて帰りなさい」
先の声に、静はいつものように控えめにをげたと聞きました。
けれど、それが娘の最の挨拶になるとは、そのの誰もりませんでした。
夕方を過ぎても、静は帰ってきませんでした。
私は玄関の戸をけ、の積もったを見つめました。
「静……どこにいるの?」
声をしても、返ってくるのはたいの音だけでした。
夫の武弘は、居で煙を吸いながら言いました。
「友達ので遊んでいるんだろう。配しすぎだ」
けれど、私の胸のでは、黒いがどんどん膨らんでいきました。静は約束を破る子ではありません。遅くなるなら、必ず誰かに伝える子でした。
夜になる頃には、町のたちが分けして捜索にてくれました。
懐灯のがのを切り裂き、、空き、川沿い、学までのをつずつ照らしていきました。
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私は震えるで夫のろを歩きながら、何度も娘の名を呼びました。
「静! 返事をして!」
に吸い込まれるように、その声はくへ消えていきました。
そして午。
誰かが川の方で鳴をげました。
「ここだ! ここにカバンがある!」
私は息を呑み、を踏みしめて駆け寄りました。側の川の支流、そののに、静のカバンが半分埋もれていました。
でびしょ濡れになったカバンを警察官がそっと持ちげました。からてきたノートは、最のページがかれたままでした。
そのページには、たどたどしい文字でこうかれていました。
「お母さん、今、私、お母さんにつ言うことがあるの」
その文字を見た瞬、私は膝から崩れ落ちました。
たい面に座り込んだ私のからは、言葉にならないうめき声だけが漏れました。
「静……静……」
夫が私の肩をく掴みました。
「落ち着け。まだ子供が見つかったわけじゃない」
けれど、私の目からは、もう涙が止まりませんでした。
捜索はそのも続きました。町のたちが総で川沿いを探し、隣県の富から警察犬まで員されました。
それでも、静の痕跡は、あのカバン以どこにも見つかりませんでした。
はり続きました。
私ののだけが、あのの夜で止まったままでした。
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それから週が過ぎました。
。
側の支流で、魚を取っていた漁師が川岸の茂みのにさな遺体を見つけたと、警察から連絡が入りました。
私はそのらせを聞いた瞬、に持っていた湯呑みを落としました。畳のに茶が広がっていくのを見ながら、体がたくなっていくのをじました。
沢警察署の霊は、ひどくえていました。
「静さんのお母様が、お見えになりました」
警察官の声が廊に響きました。
私は震えるでへ入りました。夫の武弘が隣にいましたが、そのすらくじました。
い布で覆われたさな体が、台のに横たわっていました。
「ご確認ください」
警察官が慎に布をめくりました。
その瞬、私は息を止めました。遺体はくの川に浸かっていたせいで、顔を見分けることは難しい状態でした。さな体。細い。齢も背格好も、静といように見えました。
夫がい声で言いました。
「静だ……」
けれど、私は遺体を見つめたまま、ゆっくり首を横に振りました。
「違います」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていました。
「この子は、うちの静ではありません」
部の空気が止まりました。
警察官たちが顔を見わせました。夫の武弘は、私の腕をく掴みました。
「柿、しっかりしろ。
これが静だ」
私はもう度、遺体を見ました。
そして、はっきりと言いました。
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