"32億の貧乏母" 第2話
同世代のもいるし」
その調は、親の老を配するものではなかった。まるで置き所に困った荷物の処分先を決めるような、軽い声だった。
澄子は目を閉じた。湯気の匂いが、急にくじた。
「考えておくわ」
それだけ言って話を切ると、部は再び静かになった。鍋ので根がことこと煮えている。その音を聞きながら、澄子はしばらくけなかった。
数、澄子は買い物帰りに偶然、駅の級レストランので雄夫婦を見かけた。織の両親と緒だった。織の母親は品なコートを羽織り、楽しそうに笑っている。
「来、緒にハワイにきましょう」
「お母さん、ありがとうございます。旅費までしていただいて」
雄が々とをげていた。その顔には、澄子に向けたことのない柔らかな笑みがあった。
澄子はを止めた。に持っていた買い物袋ので、特売の豆腐がし傾く。織の実は裕福で、頻繁に援助をしているようだった。方の自分は、もない貧乏な母として施設きを勧められている。
その差は、本当におだけなのか。
澄子は声をかけなかった。通りの反対側へ静かに歩きし、そのをれた。
胸のは議なほど静かだった。りよりも、確かめたかった答えにづいている覚があった。
さらに数、澄子は雄のを訪ねた。
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渡したい類があったからだ。玄関のチャイムを押そうとした瞬、から織の声が聞こえた。
「あなたのお母さん、本当に貧乏なのね」
澄子のが宙で止まった。
「仕方ないよ。もないんだから」
雄の返事が聞こえた。
織はで笑った。
「うちの親とは違い。恥ずかしくない?」
「正直、友達には会わせたくないかな」
その声は、確かに息子のものだった。
「貧乏な親って、子供のを引っ張るだけよね。く施設に入ってもらったほうがいいわ。そうすれば、おの無もされないし」
「そうだね」
雄は軽く答えた。
澄子は声をさず、そっと玄関かられた。エレベーターに乗るまで涙はなかった。にて、夜が頬に当たった、ようやく息が震えた。
自宅に戻ると、澄子は庫のに座った。にはの残証、産の権利証、株式の証券が眠っている。
これを見せれば、きっと態度は変わる。
けれど、それは澄子の望むではなかった。
澄子は庫を閉じ、静かに鍵をかけた。
「まだできる」
そう自分に言い聞かせ、特売の野菜で分の夕を作り始めた。
第章 編みのマフラー
雄の歳の誕がづくと、澄子は押し入れから毛糸を取りした。級なものではない。商の芸でくなっていた特売品だった。それでも、は雄が昔好きだと言っていた濃い紺を選んだ。
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夜、ストーブのそばに座り、澄子は目目丁寧に編んだ。指先は昔よりきが遅くなっていたが、その分、ひと針ごとにいが浮かんだ。学の雄が「寒い」と言ってをこすっていた朝。受験の、澄子がマフラーを巻いてやると、照れくさそうに「いらないよ」と言いながらもさなかったこと。
「んでくれるかしら」
そうつぶやきながら、澄子は完成したマフラーをい包装で包んだ。
誕当、澄子は雄のを訪ねた。玄関をけた織は、澄子の姿を見るなり瞬だけ表を曇らせたが、すぐに作り笑いを浮かべた。
「ああ、お義母さん。どうぞ」
リビングには豪華な料理が並んでいた。シャンパンの瓶がき、織の両親もすでに席についている。澄子だけが、し違いななワンピース姿だった。
「雄、お誕おめでとう」
澄子が包みを差しすに、織の母親がきな袋を掲げた。
「雄君、私たちからのプレゼントよ」
からてきたのは、エルメスの箱だった。雄の顔がぱっと輝く。
「ありがとうございます!」
箱のには級ブランドの財布が入っていた。織の父親も満げにうなずく。澄子はその様子を見届けてから、そっと自分の包みを差しした。
「これ、私から」
雄は包みをけた。からてきた紺のマフラーを見て、瞬だけ表を曇らせる。
「あ、マフラーか。ありがとう」
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