"病室の鍵を閉めた嫁" 第5話
「先、先ほどあちらの病のにいらっしゃったのは……?」 私はく、静かに答えた。 「……孫の顔を、し見に来ただけよ」
その言葉を聞いた瞬、藤沢先の表が引き締まった。彼女はプロの医師として、個のだけでくようなことは決してしなかったけれど、今の状況が何をしているのかを完全に理解したようだった。藤沢先は毅然とした取りで美咲さんの病へと向かい、ドアをくノックした。
から、紀子さんが怪訝そうな顔でしだけドアをけた。
「今は静かに休ませていますので、お引き取りを……」
しかし、ノックしたのが主治医の藤沢先の顔だと分かると、紀子さんはすぐに声の調子を180度変えて媚びるような笑みを浮かべた。
「あら、藤沢先! 何かありましたか?」
藤沢先は切表を変えず、静かに言い放った。
「産婦さんの状態確認をします。それから、であれば、ご族の面会は法に能です」
奥から美咲さんの拒絶するような声が聞こえた。
「でも先、私はさっき……」
そこへ、ろからついてきた坂師が凛とした声で言葉をねた。
「野寺先はここで声をすようなこともしていませんし、無理に部に入ろうともされていません。医療、この方の面会を制限する理由は切ありません」
異様な雰囲気を察したのか、拓哉がドアの隙からひょっこりと顔をした。
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「母さん……? 先って、どういう……」
その、藤沢先のろに控えていた若い医師が、部のに聞こえるようにはっきりと告げた。
「こちらにいらっしゃるのは、元名な産婦科部の野寺佳代先です。今、奥様の術を担当した医療チームの全員が、学代から野寺先に教えを受けた教え子たちなんですよ」
その言が放たれた瞬、病のは恐ろしいほどの静寂に包まれた。
美咲さんの顔から、瞬にして血の気が引き、気に変わっていった。紀子さんはを半分けたまま、縛りにあったように何も言えなくなった。さっきまで「古い世代のやり方は怖い」「何も関係ない」と散々見して鍵をかけた相が、でもない、自分とが子の命をたった今救った超流医療チームの絶対な恩師だったのだ。
私は誰も責めなかった。ただ、歩だけ静かに病のへとを踏み入れた。部のはが効いてかく、清潔な消毒液としいタオルの匂いが満ちていた。窓際のさなコットのに、まれたばかりの赤ちゃんが静かに眠っていた。
藤沢先がそっと赤ちゃんを両で抱きげ、私のアームへと優しく渡してくれた。さな、しかし確かなみが私の腕のに乗った。私は現役代、何千もの赤ちゃんをこので取りげてきた。
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けれど、が血を分けたこの子のみは、これまでに経験したどのさとも全く違っていた。
子供の目はまだ閉じたままで、指先は細く、頬はほんのり赤みを帯び、朝のので柔らかい産毛がキラキラとっていた。私は壊れ物を触るように優しく抱きすくめ、さな声で呟いた。
「この世界に、まれてきてくれてありがとう……」
そして、そっとおしい額に度だけづけを交わした。
病のでは、誰として声をす者はいなかった。拓哉はただ呆然とち尽くし、美咲さんは恥 cultural 羞からか布団の端を真っになるまで握り締め、紀子さんは私と目をわせられずに激しく目を伏せていた。
私は赤ちゃんを藤沢先の腕へとそっと返した。それから、持っていた袋から真っな産着を丁寧に取りし、ベッドの脇の子のに静かに置いた。
「これは、この子のために私が針ずつ縫った産着です。これを使うかどうかは、あなたたち親が自分たちで決めなさい」
私が部をようとすると、拓哉が慌てて私のの袖を掴もうとしてきた。
「母さん、待ってくれ! ちゃんと話をしよう!」
私はゆっくりと振り返り、実の息子を見つめた。かつてをすと、私のの袖をさなでギュッと握り締めて眠っていた子だ。学の入学式の、緊張のあまり玄関でく靴紐を結べなかった、あのらしかったが子だ。
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