"居候の更地返し" 第4話
リビングには、誰も座らない誕の卓があった。唐揚げはめ、ケーキのろうそくはをつけられないまま、静かに並んでいた。
翌朝、里は蔵庫をけるなり顔をしかめた。
「また作りすぎたの? 邪魔だから捨てますね」
裕子はわずちがった。
「それは、裕のために……」
里は振り向きもしなかった。
「べないものを入れておかれても困るんです」
ゴミ袋のに、唐揚げが落ちていく音がした。
裕子のも、その音と緒に沈んでいった。
そして今回のハワイ旅。
裕は最初、こう言った。
「母さんは疲れてるだろうから、ハワイは俺たちだけでくよ」
気遣いのように聞こえる言葉だった。
だが、本当は違うことを裕子はっていた。
発の1週、里が話で友と話しているのを、偶然聞いてしまったのだ。
「い? お母さん? 冗談でしょ。せっかくの旅が台無しよ。写真も撮れないし、恥ずかしいもん。センスないし、緒に歩きたくないのよね」
裕子は廊でち止まった。
族旅から自分だけが除される。
15万円を払い、すべての事をこなし、それでも自分は邪魔な。写真に写したくない。連れて歩くのが恥ずかしい。
そして発当の朝。
「居候は掃除してろ」
その言葉で、裕子のに残っていた何かが、完全に切れた。
空港から戻った、裕子はしばらくリビングで座っていた。
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しかし、本当に気になったのは、里の言葉以に裕の沈黙だった。
息子は何も言わなかった。
それはつまり、同しているのと同じではないか。
裕子はゆっくりちがり、裕の部へ向かった。
机のには、旅の予定表やレシートが無造作に置かれていた。その横に、裕の字でかれたメモがあった。
裕子は何気なく目を落とした。
次の瞬、呼吸が止まった。
そこにはこうかれていた。
「母親、居候、政婦代わり。里の言う通り、そろそろ施設も検討か」
施設。
裕子はを持つが震えるのをじた。
その瞬、昨夜聞こえてきた裕の話の内容が、はっきりと蘇った。
「母さんのことだけどさ。正直、里の言う通りなんだよ。居候みたいなもんだし。のこと? 母さんはらないとうよ。まあ、俺たちのみたいなもんだから」
裕子は廊の壁にをついた。
「施設の資料も取り寄せたんだ。15万も払ってもらってるし、それを施設代に回せばいいかなって」
裕は笑っていた。
「里がもう限界だって言うんだよ。お母さんがいると息が詰まるって。居候って言葉、きついかもしれないけど、でも実際そうだろう。俺たちの活に入り込んでるんだから」
裕子はそのから逃げるように自へ戻った。
夫の写真が、机ので静かに微笑んでいた。
自に戻った裕子は、しばらく夫の写真を見つめていた。
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夫はくなるし、病のベッドで裕子に言ったことがある。
「裕子、俺に何かあっても、おがして暮らせるように続きしておくよ」
そのの声は々しかったが、目だけはいつものように穏やかだった。
裕子は急にその言葉をいし、ちがった。
寝のクローゼットをける。奥に古い収納箱があった。夫がくなった、何度か理しようとして、結局をつけられなかった箱だった。
裕子はに膝をつき、箱を引きした。
には類がまとめて入っていた。保険証券、通帳、印鑑、産関係の類。がし震えたが、裕子は1枚ずつ確認した。
そして、1冊の登記簿謄本を見つけた。
産登記簿。
所者欄にかれていた名を見て、裕子は息を止めた。
「松裕子」
違いなかった。
このは、最初から裕子の名義だった。
裕も里も、それをらない。
「俺たちのみたいなもんだから」
裕の言葉がので蘇り、裕子はわず苦笑した。
違う。
これは夫が自分のために残してくれただ。
裕子を居候と呼んだたちが、実はこのにまわせてもらっていたのだ。
何という皮肉だろう。
さらに箱のを探すと、裕子名義の通帳が何冊もてきた。裕子は1冊ずついた。
31の護師活。主任護師としての料はなくなかった。
夫がきていた頃は、夫の収入で活し、裕子の料はほとんどをつけずに貯していた。
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