"奥日光の白い菊" 第5話
勤務記録を調べると、1993から1995にかけて、群馬、栃、茨、埼玉の建設現を転々としていた。どこも雇いで、くても3か、ければ2週ほどしかいなかった。
同僚の1が、田のことを覚えていた。
「無でした。昼休みも1で隅に座っていました。酒をよくんで、夜に独り言を言っていたことがあります」
刑事はを乗りした。
「何と言っていましたか」
同僚はし考えてから答えた。
「度だけ聞こえました。自分のせいで妹がんだ、守ってやれなかった、と」
妹。
その言葉が、刑事のに残った。
戸籍を調べると、田には妹がいた。
田美子。
だが、彼女は1992814にしていた。享19歳。
茨県の岸で、休みに兄の武と遊びにき、溺れたという記録が残っていた。武は助けようとしたがにわず、美子は病院に運ばれた、した。
その、田武は仕事を辞め、を引き払い、雇いを転々とするようになった。
刑事は机のに資料を並べた。
田美子がくなった、19歳。
もしきていれば、1995には22歳。
方になった4と同じ齢だった。
4は禅寺のほとりで笑っていた。美子がくなったのも、岸の辺だった。
田武は、彼女たちに妹の姿をねたのか。
それとも、失った妹を取り戻せないりを、彼女たちに向けたのか。
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答えはなかった。
1120、登客から報が入った。
10旬頃、奥の奥で、汚れたを着て髭を伸ばした男を見たという。側の登からきくれた所だった。
捜索隊が送られたが、何も見つからなかった。
125には、栃県内ののスーパーで、配写真に似た男がラーメンとを買ったという報が入った。防犯カメラには子をくかぶった男が写っていた。顔は見えない。だが体格と歩き方は、田武に似ていた。
男はの方へ向かった。
捜索隊はの積もったで跡を追ったが、岩で痕跡は消えた。
19961、関方を寒波が襲った。奥では気温が氷点10度くまでがった。
もし田武がまだのにいるなら、この寒さに耐えられるのか。
刑事はそう考えた。
2、解けを待って捜索は再された。のけなかった所も探した。
それでも何も見つからなかった。
3、が来た。
事件は未解決のままだった。
4の女子、佐藤美紀、田弓、鈴彩子、渡辺絵里は戻らなかった。
田武も消えたままだった。
刑事は事件ファイルを机の引きしにしまった。
閉じることはできなかった。
いつか再びくが来る。
そう信じるしかなかった。
19991022、曜の午3。
事件から4が経っていた。
奥の渓は葉で赤く染まり、観客がので写真を撮っていた。
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は相変わらず清らかに流れていた。
の欄干のそばに、1の女性がっていた。
30代半に見えるその女性は、い菊のを1輪持っていた。彼女は欄干に菊をそっと結びつけた。にばされないよう、紐でしっかり固定する。
そしてしばらく、渓の面を見ろしていた。
唇がさくいた。
誰にも聞こえないほどの声で、何かを呟いていた。
涙が頬を伝った。
10分ほど経つと、女性はを翻し、ゆっくりを渡った。駐のに乗り込み、エンジンをかける。はをり、内を抜け、警察署へ向かった。
午、警察署の受付に、その女性が現れた。
「刑事にお会いしたいのですが」
受付の警察官が用件を尋ねると、女性はさく答えた。
「1995の失踪事件について、お話ししたいことがあります」
しばらくして、刑事がてきた。
4より髪が増え、顔の皺もくなっていた。彼は女性を見た瞬、を止めた。
どこかで見た顔だった。
取調へ案内し、2は向かいって座った。
刑事が尋ねた。
「お名は」
女性はしばらく膝ののを見つめ、それから顔をげた。
「鈴彩子です」
刑事の目がきく見かれた。
「19951022、奥で失踪した4のうちの1です」
刑事のが震えた。
4、探し続けた。
んだとわれていた。
その1が、きて目のにいる。
刑事は録音にを伸ばした。だが、彩子は首を横に振った。
「録音はしないでください。
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